ミノタウロスと私。
予定通り更新。
私は身体強化の魔法を自分にかける。
魔力を全身に巡らせ、巡回させる。
「行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
玲ちゃんに見送られた私は右手にロングソードも持ち、左手に魔力の一部を集める。
このタイミングで私が参加する理由は流れの変える事。
変化を必要とする場面だからだ。
だから私はあえて、私がここに居る事を示すかのように魔力を一気に高める。
「おっ?凛ちゃんが『威圧』に目覚めたかな?」
『主よ。落ち着かれよ。』
玲ちゃんとサラちゃんのコソコソ話も聞こえる。
存在感を増すという行為は逆に周りに気を張る行為でもあるから、色々見えたり聞えたりする。
これが『威圧』かどうかは、分からないけどまたやろうと思えばできるね。
私の目論見通り、ミノタウロスは私の存在に注視した。
そのおかげで、前衛に対する攻撃も疎かになったので、前衛も少し余裕が生まれるだろう。
「耐性を立て直すぞ。ビッセルは魔法でアーチは矢で牽制しろ牽制が終わったら待機、その間にポーラは前衛の回復を頼む!」
私の行動の意味を察したケブライさんは指示をだした。
一旦、【黄龍の牙】さん達には休息してもらうつもりだったから、良い指示だと思う。
ジャックさんが火の魔法『ファイアアロー』を同時展開してくれてミノタウロスに放つ。
そこにアーチさんがスキル『乱れ撃ち』でミノタウロスを攻撃してくれた。
二人の攻撃がミノタウロスに着弾するタイミングで私は勢いよく飛び出した。
ボコッと地面が抉れる様な感触は私が上手く飛び出せた証拠だ。
一気にミノタウロスとの距離を縮めると、私はミノタウロス真正面から絶対零度をイメージした『アイスアロー』をぶっ放す。
見事にミノタウロスの左肩に命中した。
その命中した肩は凍り始める。
そこへ、炎を纏わせたロングソードに武技スラッシュを発動させ斬り込む。
「ファイアスラッシュ!!」
「凛ちゃんが必殺技名を名乗った?!プププ。おもろい!!」
遠くで、私の言動を見て笑う玲ちゃんの声が聞えた。
絶対、後で弄られるじゃん。
でもスキルも声に出した方が威力あ上がるから仕方ないじゃん!
と思いながら、ミノタウロスを斬り、ミノタウロスの横を抜ける。
『ブモォォォォ!』
先ほど迄とは違う声を上げたミノタウロスの左肩は斬り裂かれ、肩から先が斬り落とされた。
上手く決まったようだ。
ミノタウロスは気合の遠吠えなのか奇声を上げて、斧を振り回し始めた。
先ほどまでの風圧は感じる事は無かったが、それでも力強い一振りは健在で威力は抜群だ。
ただ、片腕から先がなくなっているので、バランスが取れていないのは間違いがなく、命中直が著しく下がった。
ミノタウロスの攻撃を躱しつつ、斬撃をお見舞する。
少しずつミノタウロスの攻撃は単調なだけの覇気のない攻撃になってきた。
とにかく攻撃しているだけの様子となった。
「ケブライさん!」
「おう!よし、皆、たたみかけるぞ!凛さんは一度下がってくれ!ビッセル頼むぞ!!」
「任せろ!」
そろそろ頃間と思ってケブライさんに声を掛けた私はケブライさんの指示に従って一度ミノタウロスから距離をとる。
ケブライさんに返事をしたジャックさんは今までとは規模が違う事が感じる魔力を集めだした。
ビッセルさんから感じる魔力の高まりは大きく、詠唱を続ける程に更に大きくなっていく。
その間に、アーチさんによる矢での牽制が続くが、ミノタウロスは避ける事が出来ずにドンドンと刺さっていく。
弱っているからなのか、動きも悪い。
そんな中でビッセルさんは杖を前に出した。
ビッセルさんの周辺に浮かんだ四つの魔法の塊はそれぞれに色を持ちだした。
赤・青・緑・茶の四色は徐々に形になっていく。
「フォース・アロー!」
詠唱最後の言葉が聞えた。
四色の矢が飛び出して行った。
ファイアアロー・アイスアロー・エアアロー・サンドアローの四属性の魔法の矢がミノタウロスに突き刺さる。
ファイアアローによってミノタウロスは炎に巻かれる。
アイスアローによってミノタウロスは凍り付く。
エアアローによってミノタウロスに斬り裂かれる。
サンドアローによってミノタウロスは穴が空く。
ミノタウロスは堪らず膝をついた。
「よし!今だ。たたみかけるぞ!」
【黄龍の牙】の前衛がミノタウロスへの攻撃を再開させた。
私もロングソードを両手に持ち直し風の魔力を剣に這わせる。
「エアスラッシュ!」
「凛ちゃん。笑わせすぎ!!ひーひー。」
玲ちゃんが笑い過ぎて息が出来てない感じになっている。
どうもツボった様だ。
どんだけ余裕なのだろうか?
って余裕か。
私でもちゃんと攻撃が届く相手な訳だし。
【黄龍の牙】と私のたたみかける攻撃の末にようやく活動を止めたミノタウロスは例の如く消えた。
後に残されたのは、通称『ミノタウロスの斧』と大きな二本の角だった。
「ふぅ。終わった。」
「お疲れ様。色々と良かったよ。」
玲ちゃんがピースサインをして私の横へ来た。
「もう。笑う事ないでしょ?私は一生懸命したのに。」
「ごめんごめん。ついよつい。」
私は玲ちゃんに抗議した。
たしかに中二病的な名前でスキル発動させたけど、それは効果を上げる為だし、その理由は玲ちゃんは分かっている。
その上で笑うのだから、どうしても耐えられなかったって事だろう。
それでも、ムカつくものはムカつく。
「ちょっと。良いか?」
【黄龍の牙】のリーダーケブライさんが話しかけてきた。
お疲れ様でもなく、真剣な眼差し、どうしたのだろうか?
次回更新は
明日、2021年10月28日(木曜日)12時
よろしくお願いします。




