臨時パーティー。
予定通り更新。
「えっ?それはつまり、参加して頂けるという事ですか?」
「ええ。」
「やったぁ!みんな良いよね?」
「「「おお。」」」
「ただし、こちらはこの子だけが参加になるわ。」
「私だけ?」
「ええ。そうよ。私とサラは手を出すつもりは無いわ。後、ドロップ品は要らない。貴方達にあげるわ。」
「良いんですか?」
「もちろんよ。私達はここを通りたいだけだから。」
ローブを着た女性は『少し相談させてください。』と言って仲間の所へ向かった。
そりゃそうだ。
相談は必要だろう。
「ねぇ。玲ちゃん。どうして協力する形をとるの?」
「決まっているでしょ。時間の節約よ。」
「えっ?」
「それに、パーティー戦を経験させたいからよ。」
「なるほど。」
玲ちゃんは私の為に提案してくれたようだ。
ありがたい事だ。
少しして、ローブを着た女性が仲間を引き連れて私達の前にやってきた。
彼等は『黄龍の牙』という名前のCランクパーティーだそうだ。
名前の由来は「カッコイイから。」だそうだ。
ちょっと痛い人達かも?
冒険者を初めて4・5年でパーティーを組んで三年らしい。
そろそろ、何かしらの功績を手に入れてB級を目指そうという所なのだとか。
「凛さんは、軽剣士という事で良いのかな?」
「そうですね。後、魔法を使います。あれなら魔法を使う援護役でも大丈夫ですよ。」
「えっ?魔法も使えるの?冒険者ランクはEだよね?」
「ええ。おかしいですか?」
「肉体強化の魔法だよね?」
「それも使えますけど、攻撃魔法も使えますよ。後、回復魔法も勉強中で、初級なら少しは出来ます。」
「「「「「「えっ?」」」」」」
臨時パーティー戦という事で、お互いの戦闘スタイルを教え合っていて、私の戦闘スタイルの話になったので、素直に伝えると驚きを持って返された。
それを少し離れた所から見ている“獄炎と氷結の魔女”様は笑って眺めている。
あれは絶対、反応を分かっていたのだろうな。
ちょっとムカつく。
「えっと、まぁ、あれですよ。器用なだけですから。あはははは。」
うわぁ、ジト目で見られている。
クスクス笑う玲ちゃんにムカつく。
「まぁ“獄炎と氷結の魔女”様の従者だろうからな。普通なのか。」
「そうだよ。普通のレベルも高いんだよ。」
うんうん。
と、納得できる理由を勝手に用意してくれている。
やっぱ常識的なモノではなく非常識なのだろうな。
少し申し訳ない気分になる。
「まぁ、とにかく私達はいつも通り動くわよ。凛さんは遊撃扱いね。」
「それが無難だろうな。初めの間は少し俺達の様子を見てくれ。声をかけるからそこから対応を始めて欲しい。」
「わかりました。」
文句を言える訳はない。
妥当な提案だろうと思う。
その後も、いくつかの決め事を確認して準備は終わった。
後は、扉が開くのを待つだけとなった。
「凛さんは“獄炎と氷結の魔女”様と何処で知り合ったんですか?」
「え~と。私が魔物に襲われている所を助けて貰った?みたいな?それから一緒に居るの。」
「へぇ。それってヒモみたいな感じですか?」
ドキッとした。
たしかに、全く何も貢献出来ていない私は玲ちゃんのヒモみたいなもんだ。
私が居なくても玲ちゃんの生活は滞る事も無く進むだろう。
そういう意味では正にヒモだ。
「そうかもですね。あははは。」
「へぇ。認めるんですか?役立たずだと。」
やけに棘のある言葉が私へと向けられた。
これは何?
嫉妬か何か?
「ちょっと。アンタ。」
「はい!“獄炎と氷結の魔女”様。何でしょう?」
「それはアンタに関係ない話ね。」
「えっ、でも凛さんがヒモなのは事実では?」
「フン。凛は私の親友よ。ヒモではないわ。私が好きだから一緒に居る。アンタに何か関係ある?」
「・・・いえ。ありません。出しゃばりました。すいません。」
「すいません。メンバーが失礼な事を。」
「次から言葉には気をつけて。」
「はい。」
気まずい雰囲気が辺りを包む。
私は玲ちゃんの言葉が嬉しくて泣きそうになったが、グッと堪えて無理矢理に笑顔を作った。
悪意ある言葉。
簡単に相手に傷をつける言葉。
それを投げつけてきた彼女は嫉妬があるのかもしれない。
幸運に恵まれた私は玲ちゃんという心強い味方が居る。
でも普通はそんな事はあり得ない。
彼女は厳しい生活をおくってきたのかもしれない。
「凛ちゃん。気にしないのよ?」
「うん。」
心配そうな顔で私を見る玲ちゃんは優しい眼差しも見せている。
その目の奥には不安があるような気がするのは私の気のせいだろうか?
「大丈夫。皆、嫉妬しているんだよ。なんせ私の親友は“獄炎と氷結の魔女”様だからね。」
「もう。それは言わないでよ。私が名乗っている訳じゃないんだから。」
「えっ?でもあのファンサービスが苛烈なのに喜んでいる人が多いし、玲ちゃんがノリノリだから満更でも無いのかと思っていたよ。」
「まぁね。あれは特別かな?って何を言わせるのよ?」
「あははは。」
「うふふふ。」
私達はいつもの調子で笑い合った。
でも、やはり他人の気持ちもある程度は理解して動く必要があるかもしれない。
彼女の様に悪意を持たれる可能性がない訳では無いだろう。
言葉の暴力はどんなに鎧を纏ってもどんなに魔力を高めても守れない。
それに、言葉だけとは限らない。
悪意によって殺意が芽生える事もあるのだから・・・。
「扉が開いたぞ!」
「よし、行こう!!」
「“獄炎と氷結の魔女”様、行きますよ。」
私達は階層ボスの待つ部屋に入る為、扉を押し開いた。
次回更新は
明日、2021年10月26日(火曜日)12時
よろしくお願いします。




