地下二階。
予定通り更新。
人類の情けなさを感じつつも降りた地下二階。
相変わらずのゴツゴツした岩肌の洞窟は少し変化が出てきた。
今迄は真っ暗な空間に人工的な明かりを用意して視界を確保していたのだが、この階層は少し明るい。
発光苔と呼ばれるコケがびっしりと生えており、その苔が光っているからだ。
そして、微妙に水気がある。
道のあちこちに何処からか水が湧き出ているのか、水たまりが出来ている。
洞窟内という事もあって湿気が気になるレベルで独特の匂いが充満している階層だ。
情報によると、ここはスライムや水棲系の魔物が主流になる。
目に付くのはレッサーリザードマンやワニ擬きだ。
下位種とはいえレッサーリザードマンは少し厄介な敵だ。
またビッグクラブなどの蟹系の魔物も出現する。
蟹系魔物は甲殻類なので、とにかく硬い。
ほかにもビッグタートルという亀系魔物も硬い。
水棲系魔物の下位種が沢山出てくる領域だ。
そうそう、洞窟に出てくる魔物は倒すとモノをドロップして体は消えるという特徴がある。
実体がない訳では無いのに、実体が消えるのだ。
これは洞窟が回収しているという説がある。
洞窟を踏破し国の管轄に置き運営している所が有ると聞くが、そこの国はその件については黙秘を貫いている。
もしかすると技術が高くて利用はしているが解明できていないのかもしれない。
洞窟には自身で修復する能力がある。
壊れても、修復されるし宝箱は何回も用意される。
ただ、世界の洞窟が全て同じである保証は無い。
技術によって創られたモノもあるが、自然に洞窟と化している所もある。
自然に洞窟と化した場所は魔物が死ぬと死体が残る。
森や自然環境の一つとしての自然に出来た洞窟もあるのだ。
「おっ?丁度一匹だけはぐれているのが居るね。」
「そうだね。」
「凛ちゃん。じゃあ、サクッと倒しちゃおうか?」
「えっと、私一人?」
「もちろん。」
玲ちゃんは大きく頷くと私の背中をトンと軽く押す。
私は押された勢いで前に出る。
やっぱやらなきゃダメか。
私は決心してロングソードを抜く。
相手はレッサーリザードマン。
鋭い爪と長い尻尾が武器だ。
リザードマン特有の鱗に覆われた体は光沢がある。
その鱗による強度が上位種になる程高いとされている。
ロングソードを持ち直して手を広げる。
大きく見せる行為だ。
レッサーリザードマンはビクッとしたが、眼をグリングリンして様子を伺っている。
私の後ろにいる玲ちゃんとサラちゃんを警戒しているのだろう。
私は魔力を体中に駆け巡らせて、自身を強化する。
その上でロングソードにも魔力を這わしていく。
左手の手のひらに魔力を少しずつ集める。
同時進行でこの三つを行なう。
全ては戦闘準備だ。
今回は準備する時間を貰えているが、一人ではこうはいかないだろうな。
この準備の間も視線はレッサーリザードマンから外さない。
レッサーリザードマンは、せわしなく周囲に気を配りながら、私達から視線を外さない。
私は左手に集めた魔力を使って『ファイアアロー』を放つ。
そして私は視界をレッサーリザードマンに固定したまま、足に力を入れて重心を低くする。
レッサーリザードマンは警戒をしていた様で、驚きはしなかったが予想以上だったのか左に避けようとしながらも『ファイアアロー』を避けきれずに被弾していた。
左に避けようとしたのを見た私はロングソードを前に出しつつ飛び出した。
一直線にレッサーリザードマンに向かい剣を振るう。
レッサーリザードマンは避けきれないと判断したのか両腕を前にクロスさせた。
私は、そのクロスされた両腕の上からロングソード叩きつけた。
肉を斬り裂く音と感触が私の手に伝わってくる。
両腕を斬り落として体を肩口から斜めに入る所で痛がるレッサーリザードマンは身を捩った。
『ぐぎゃあぐぎゃ!』
「凛ちゃん!」
私は、すかさず尻尾の攻撃がくると教えてくれた玲ちゃんはやっぱり優しいと思いながら、剣の軌道をずらして飛びのく。
今回が二回目の食事の為の狩りでは無い行為。
うん。
大丈夫。
落ち着いている。
少し距離をとったのがいけなかったのか、斬り落ちた腕を放置してレッサーリザードマンは逃げようと後ろ姿を晒した。
私は一瞬戸惑いを覚えたが、体は反応していた。
玲ちゃんの指導の賜物だろう。
レッサーリザードマンの後ろ姿を見ながら首にロングソードを叩き込んだ。
ゴロリとレッサーリザードマンの頭は落ちて血が噴き出した瞬間にレッサーリザードマンの身体は消えた。
そしてそこには魔石と皮が残されていた。
「本当に消えるんだね。」
初めての経験に驚きを隠せない私の横に玲ちゃんとサラちゃんがゆっくりとやってくる。
「そう。これが洞窟の中の魔物の終わりの一つ。そしてこのディックディックの洞窟にマスターコアと呼ばれる洞窟を構成しているモノがある証拠。さぁ、凛ちゃん戦利品を拾って。」
「うん。」
私は玲ちゃんに言われた通り魔石とレッサーリザードマンの皮を拾い玲ちゃんに手渡す。
「はい。」
「お疲れ様。成長したね。」
「うん。鬼・・・玲ちゃんのおかげです。」
「ふふふ。鬼教官のおかげって言いたいのね?」
「うっ。」
「まぁ、ちゃんと教えた事が出来ていたから今日は大目にみてあげる。次はないよ?」
「ありがとうございます!」
怖ろしい笑顔を見せる玲ちゃんに私は敬礼の体勢で感謝を述べた。
それを見た玲ちゃんは『なにそれ?』と笑う。
「えへへへ。つい。」
「ついで敬礼なの?もう私を何だと思っているのよ。」
「教官?」
その後もくだらない事を言って笑い合いながら次へと進んだ。
こういう時間が続いてくれれば良いなと思った。
次回更新は
明日、2021年10月24日(日曜日)12時
よろしくお願いいたします。




