獄炎と氷結の魔女様。
予定通り更新です。
やっぱり”獄炎と氷結の魔女“様はとっても有名らしい。
それを久しぶりに強く感じた。
なぜなら。
「マジ感激っす!」
「握手してください!!」
「ぜひ、夕食を一緒に食べませんか?!」
「一緒に洞窟に潜りましょう!」
沢山の人に囲まれているからだ。
もちろん玲ちゃんが、だ。
「うるさいわね!」
玲ちゃんがピリッとした表情で一喝する。
普通はこれで収まる・・・のだが。
「うわぁ!本物だ!!」
「怒られっちゃった?!一生の宝物だ!」
「美しい!!」
「マジ感激!」
今日は変態さんの集まりだったみたいだ。
どうも、いつもピリッとしている玲ちゃんが良いという人が一定数いるらしい。
今回は、そういう変態さんが多く居るようだ。
むさ苦しい男ばかりではなく、眼をハートにした女性もいる。
世も末なのかもしれない。
で、こういう輩の時の玲ちゃんの対応は決まっている。
「仕方ないわね。私が食べ終わるまで、外で並んで待っていなさい!」
「「「「「やった!」」」」」
「ありがたい。」
「遂に憧れの・・・。」
「ここに来て良かった。」
大声を上げて喜びを表す変態さん達はゾロゾロと外へと向かった。
よく見ると、こそっとテーブルから離れて外に向かう人まで居る。
これは、本格的に変態さんが多い日なのかもしれない。
「これで落ち着ついて食べれるわ。」
「う、うん。そうだね。」
その後、ゆっくりと食事を堪能して食事を終えた。
その間も色々と雑音がした。
「おい。噂のあれがみれるんじゃねぇか?」
「噂って、もしかして?あれか?」
「これがエンジェルデンタイムか。滾るぜ!!」
「遂に私も“炎と氷の神”からの祝福を受けれるのね!」
「幸せな時間がやってくる。やってくる。やってくる・・・。」
一体、どういう事になっているのだろうか?
どんどん噂が広がり、宗教チックになっているのではないだろうか?
しかし、まさかこんな魔物が居る洞窟の前で事が起こるとは思ってもみなかった。
ルノーの街が落ち着いたので、忘れていた。
街に着いた初めの頃は結構、あった気がする。
「さて、行きますか。」
「う、うん。」
代金を支払って店の外に出ると、サラちゃんの前に行列が出来ていた。
さっき玲ちゃんを囲っていたのは10人ぐらいだったと思うのだけど、列には30人ぐらいが並んでいる。
私がギョッとしていると、玲ちゃんはスッとサラちゃんの上に飛び乗ると玲ちゃんがニヤリとした。
「準備は出来ているのか?コノヤロー!」
「「「「「おぅ!!」」」」」
男も女も年寄りも若者も関係なく手を上げて答えている。
やっぱり、あれをやるのか。
私はその場に座り込んだ。
それを合図にしたのか、玲ちゃんがサラちゃんの上から飛び降りると、列の一番前の貴族風の男の前に立った。
「皆、気合を入れろ!歯を食いしばれ!!」
「「「「「「おぅ!!!!」」」」」」
「と~う~こ~ん~。」
バチバチと手のひらが光りながらスパークを始める手を後ろにもってくる玲ちゃん。
身体は右後ろに捻じれ、左足を前に出す。
貴族風の男が幸せそうな顔で歯を食いしばる。
「注入だ~!このやろ~!!」
ドパン!!
と音が響き渡り、貴族風の男が横に吹き飛ぶ。
すると玲ちゃんは次の人の前に立つ。
今度は女性だ。
長いスカートをはいており、町娘って感じって、あれ?店の店員さんじゃない?
「注入だ~!」
ドパン!
と音が響き渡り、店員さんも横に吹き飛ぶ。
その後も、『注入だ~!』という玲ちゃんの声とドパンという音が繰り返された。
次々、同じ方向へと吹き飛ばされる人達は、幸せそうな顔で横たわったままだ。
なにこれ?怖い!
と、初めて見た時には思ったものだったけど、今みると何かの新興宗教の一幕なのではないか?と思ってしまうだけだ。
さしずめ“獄炎と氷結の魔女”教とでも名付けようかと思う。
この儀式は『闘魂注入祭』とでも言うのかもしれない。
日本でも同じ様なのがあった気がするけど、あれは何だったかな?
「よし!終わりだ!お前達よく耐えた!!」
最後の人をドパン!させた玲ちゃんが大きな声をあげて振り返った。
あれ?人数増えてない?・・・40・41・42・43・・・48?!
数えている間に、『闘魂注入祭』を受けた信者の方々が一斉に起き上がり、玲ちゃんの方へと顔を向ける。
あっ!
あれがくる。
私は耳を塞いだ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
48人の信者の方のリンクした感謝の言葉はこのディックディックの洞窟前の集落に木霊してビリビリと振動を起こす。
普通はこんな事態が起これば、警備している兵隊に掴まるだろう。
しかし、その兵隊さんもその信者に含まれるのだから、取り締まりはあり得ない。
この前、ルノーの街で騎士団長さんが『是非、我が隊にてそれをお願いしたい!!』と頼み込んできていた。
まぁ玲ちゃんは取り合ってもいなかったが、その塩対応に騎士団長は震えていた。
『獄炎と氷結の魔女様・・・尊い!』
そんな事を言っていたから、問題は無いだろうと思う。
なぜ、今まで言わなかったのかだって?
それは察して欲しい。
この信者の前では私は道端にある石レベルになってしまうのだ。
これ以上は説明しなくて良いよね?
ちょっと、こんな辺境の地でもあったからビックリしてしまっただけだから。
でも、ほんの少し、ちょっとだけ信者の気持ちが分かるんだ。
私から見ても、玲ちゃんは超絶美人だからね。
黒髪黒目の純日本人の容姿ながら、大き過ぎない胸に引き締まったプロポーション。
大きな瞳に白い肌。
異世界のエルフでも勝てないよ。
張り合えるのは美を司る女神ぐらいじゃないかなぁ~。
・・・これで、洞窟に入れる?
まぁ、私は"かき氷"が食べれれば問題ないけど。
次回更新は
明日、2021年10月22日(金曜日)12時
よろしくお願いします。




