ディックディックの洞窟の前の集落。
予定通り更新です。
「さぁ、見えて来たわ。凛ちゃんも見える?」
揺れる体をサラちゃんに固定して視線を飛ばす。
玲ちゃんが指した方向に見えたのは、ゴツゴツした石の壁?だった。
「あれが洞窟?」
「うん?あぁ、あれはディックディックの洞窟を見張る砦だね。」
「砦?」
「そう。魔物が増えすぎて出てきたりする事があって、それを抑える為に国が見張っているの。」
洞窟。
この世界の洞窟のほとんどが、魔物が湧く洞窟だという。
中には踏破された洞窟もあり、そこのマスタールームまで探し当て国によって管理されている洞窟もあるというが、ほとんどが踏破されていない洞窟で自然発生的に魔物が湧き出てくる。
間引きが出来ないと魔物が洞窟に溢れ出てくる事もある。
この世界で冒険者が必要な理由が洞窟にもあるというわけ。
その予防として洞窟の近くに砦を建てたり、入口を壁と門で取り締まったりする。
ディックディックの洞窟はルノーの街から近いとは言え、距離があり普通は2日掛る。
その為、洞窟を見張る為に壁と門が設置されており、その前に砦を築いて見張っている。
もちろん、その為だけでは無い。
ディックディックの洞窟から得られる資源は大切なモノでありそれらを国が管轄する事で国の財産になる。
財産が他に奪われない様にするという意味合いも含まれる。
こと、ディックディックの洞窟に限れば、洞窟で手に入れた資源は冒険者の所有物として認められるが、報告の義務が課せられている。
報告などは冒険者ギルドから国にされるので冒険者が直接、国に報告する必要は無い。
ただ、魔法鞄などの技術が高い事から見過ごされる物がないとは言えないので絶対とは言えないと玲ちゃんが言っていた。
冒険者は金を稼ぐ為に潜るので、基本的には資源を直ぐに売るし、冒険者ギルドも呪いの装備品や貴金属がたまに出るので、鑑定する必要が無いモノ以外は売る様に推奨している。
鑑定能力が誰も持っている訳では無いのでそれが普通だね。
ポーション関係も出てくるが、売る方が良いと玲ちゃんは言っていた。
出土するポーション関係も軒並み上質なモノが多く、購入出来るモノより高く取引されるらしい。
稀に、毒液もポーションの様に出土するらしいから注意も必要だって言っていた。
鑑定が出来ればそういった懸念事項はクリアされるのだろうけど。
残念ながら、私には鑑定スキルは無い。
ラノベ世界では常識という位に主人公の皆が持っている気がするけどな。
私は主人公ではないから、持って無いのが普通かな?
う~ん。
チートも無いしさ。
ディックディックの洞窟の手前にある砦に近づくと、やっぱ思う所があるね。
なんていうの?
西洋風の砦?って言うのかな?
ゴツゴツした大きい石が積み重なれていて、その上にブロック状のモノで壁が構築されている。
入口と思われる所には門があり、吊り橋的に上に跳ね上がる構造の様で、橋と門戸の両方の役目をもった橋が堀の上に掛かっている。
堀には水がひかれていて、侵入者を阻むモノになっている。
その砦の前の道を少し進むと山肌が見える。
そして壁と門があり門は開かれていた。
そこには先ほどの砦と同じ様に門番が立っていた。
ザワザワしている気がするが、サラちゃんが珍しいのかもしれない。
サラちゃんは誰に指示される事も無く、門の前で止まった。
そして私と玲ちゃんはサラちゃんから降りて門番の方へと歩く。
壁はおよそ10メートルかな?
3階建ての建物の高さはゆうにあるね。
かなり高い。
「身分証の提示をせよ。」
「はい。」
「はい。」
冒険者証を門番さんに見せる。
すると、門番さんの顔が先ほどより厳しい感じになった。
「これは、失礼しました。“獄炎と氷結の魔女”様。」
「うん。問題ない。後ろのはフェンリルで私の従魔よ。」
「かしこまりました。」
検分らしい検分も無く私達は通された。
門番さんはサラちゃんが横を通り過ぎる時にビクッとなっていたぐらいだ。
門を潜り抜けると、目の前には山の麓にポッカリと空いた穴が見えた。
あれが洞窟の入口だろう。
見た感じ人が横に10人並んでも通れる気がする。
かなり大きな入口だ。
高さも結構ある。
「凛ちゃん。先に何か食べよう。」
「えっ?」
玲ちゃんが洞窟の入口ではなく別の方へ顔を向けている事でその視線の先にようやく気付いた。
「えっ?お店?えっ?」
壁の両サイドは山に入口の両サイドに向かって円状に造られている。
入口の少し離れた所に幾つかの建物が建てられていた。
そのままグルリと視線を一周回すと、壁の内側には所狭しと建物があった。
小さな集落となっているみたいだ。
「そうよ。結構こんな感じになっている所は多いのよ。街から距離があるからでしょうね。それに街から洞窟までの間には村などの集落を構築する事は禁止されている所が多いから不便じゃない。だから少しでも儲けようと商人が開いたり、冒険者ギルドが国に掛け合って造ったりしているみたいよ。」
「なるほど。」
門の入口には門番の駐屯所が両サイドにあるが、それ以外は木製の建物が並んでいた。
看板から推測するに、冒険者ギルドから武器屋、防具屋、道具屋に宿屋と食堂がある。
後は何の建物かわからないモノもあるが、屋台も少しだけど出ている。
それなりに人がウロウロしているみたいだから、儲かるのかもしれないな。
私達は一件しかない食堂へと足を運んだ。
サラちゃんは店の前で留守番だ。
食事の時間だからなのか、結構な数の人がいる。
冒険者っぽい人がやっぱり多いけど、冒険者ではなさそうな人も結構いる。
「いらっしゃい。」
「二人なんだけど。」
「二名様ですね。どうぞこちらへ。」
二階の空いている席に案内された。
二階と言っても壁際に二階部分があり中央は吹き抜けになっている建物で、開口部が多く明るい。
ルノーの街とは違い開口部には開閉式の板があるだけでガラス扉では無い。
ここからならサラちゃんが見える。
店員さんが気を遣ってくれたのかもしれない。
なかなか優秀な店員さんだ。
この時間ではA定食かB定食しかないらしく、A定食を頼んで果汁水を頼んだ。
玲ちゃんも一緒だ。
「今日はデザート無しね。」
「えっ?マジ?さっき屋台でかき氷みたいなの見つけたんだけど。」
「無しです。」
「・・・はい。」
今日は既に鬼教官へと変貌しているみたいだ。
ちょっとぐらい良いじゃんね?
そう思わない?
次回更新は
明日、2021年10月21日(木曜日)12時
よろしくお願いします。




