日々訓練。
予定通り更新。
「しみるぅ~。」
玲ちゃんの訓練はサラちゃんも加わり大変厳しいモノでした。
擦り傷や切り傷にアザを体中に作ってしまいました。
「ガマン。」
「だって、痛いんだもん。」
今は体を洗い終わり大きなお浴槽の中に浸かっているから、お湯が当たるだけでもしみます。
これ柑橘系のお湯だったらと思うと恐ろしい。
年の瀬のゆず湯を思い出し、ぶるっとしてしまうのは私だけではないハズ。
本当なら玲ちゃんの回復魔法一発で直るけど、自身の治癒力の上昇を狙い放置です。
自然治癒のスキルをゲットしようという目論見だけど正直泣きそう。
「本当にこんなのでスキルが身に付くのかな?」
「ステータスと睨めっこしても意味無いよ。憶えるのは運もあるからね。」
この世界にはステータスが存在する。
ステータスには数値化された能力とスキル欄や称号欄などある。
「そうは言っても、慣れないから見たくなるよ。数値は低すぎて泣きそうだけど。」
玲ちゃんのステータスを少しだけ見せて貰ったけど、壊れているの?ってほど、私との数値差がある。
ちなみにレベルもあるし、経験値的なモノもある。
ファンタジー世界の王道をいく世界なのは間違いない。
「でもさ。能力値が上がるとムキムキになったりしそうなものだけどね。」
玲ちゃんを見てもそうは見えない。
数値的にはメスゴリラ以上の体格になっている筈なのだけど。
「私の場合レベルは上げたけど、実際に肉体を鍛える訓練はさほどしてないの。見た目を維持するレベルにしかやってないし、基本的に魔法を使うから。」
レベルアップは+補正という感覚なのだ。
だから見た目の変化は基礎数値が関係する。
もちろん玲ちゃんの腹筋は割れている。
女性の私の眼から見ても女性らしい曲線が出た綺麗な体だ。
「ちょっと、そんなに見ないでよ。恥ずかしい。」
「へっへっへ。お嬢さん良い体してるじゃねぇかぁ。ブフォ!」
思いっ切りお湯を掛けられた私は口の中にも入ってしまってむせた。
「ほぉ。そんな事言える程の元気があるなら、明日からはもっとハードに。」
「お待ちくだせぇ。女神様、お許しを!!」
「無理!」
玲ちゃんがプイッとソッポを向いてしまった。
農民が縋る様に私は玲ちゃんの身体に縋ったのだが、お許しは出なかった。
“口は災いの元”って昔の人が言っていたと思うけど、我が身に降るとは思ってなかったよ。
トホホ。
◇◇◇◆◇◇◇
冒険者ギルドの常駐依頼をこなしつつ、玲ちゃんの訓練を受ける日々は二週間を超えた。
魔物を倒す事で得る経験値は高くてレベルは上がった。
玲ちゃんの身体的訓練で基礎能力も上昇し、体も幾分か引き締まった。
だって容赦ないから。
怠惰なダイエットをしていた日本の生活が懐かしい。
先週ぐらいから、魔法も基礎の練習が始まった。
魔力操作と呼ばれる訓練で、魔力を感じる事と動かして操作できる様になる事をしている。
お風呂上りの日課だ。
で、例の自己治癒のスキルは何とか先日ゲットした。
飛んで喜んだ。
レベルは一だけど。
「おめでとう。」
「ありがとう。」
この時の玲ちゃんの優しい言葉は本当に嬉しかった。
シンプルな言葉だったからこそ、気持ちがグッと伝わった。
「これで、更に怪我が出来るね。」
この一言で地獄に落ちた気分だったけど。
生き抜くためには仕方が無いと割り切った。
何故か?
この世界の事を少し教えてもらったからだ。
この世界の名前はまだ分かってないけど、今いる場所が何と呼ばれているのかが分かった。
アーダム大陸にあるエクサム王国にあるルノーという街だ。
アーダム大陸には幾つかの国があるが、その中でもクリーマン皇国が大きくかの国は度々他国へと侵略戦争を仕掛けているのだ。
いつ戦場になるか分からないのだから、自身の生存率を上げる必要がある。
この世界は戦争が絶えない世界でもあるらしく、あちこちで戦争が起こっているのだ。
ちなみにこのアーダム大陸は魔術師や魔法使いには特別扱いが普通だ。
魔力が無い見捨てられた土地と言われ、魔術に長けるモノや魔法に長けるモノが圧倒的に少ない大陸だからだ。
だから、この大陸に居る限りは玲ちゃんの影響は計り知れない程高い。
魔術や魔法に長ける事が出来なかったこの大陸に住む人々は他の手段を模索した。
それは地球で言う所の化学だ。
化学は魔法が無くても利用出来るモノだ。
だが、魔法があるからこそ、化学の発展も不思議な展開を見せている。
機械と魔法の融合。
炎の魔法と同じ効果を石油や石炭を利用する事で大きな効果を発揮させる。
氷の魔法と同じ効果を天然ガスの利用する事で同じような効果を発揮させる。
ちなみに、電気もある。
まだまだ普及には時間が掛かりそうだけど電気を利用したモノも存在している。
「ねぇ。夜のデザートはアイスにしようよ。」
「太るよ?って大丈夫か。」
身体を鍛える事が当たり前の世界において、カロリーなんて気にする必要は今のところ無い。
貴族にでもなれば違うかもしれないけどね。
私達は伝声管を利用してバニラアイスを注文した。
それもフルーツが沢山は言っているビックパフェ。
「美味しい。」
「科学の勝利だね。」
冷凍も出来る設備がこの超高級宿にはある。
「転生者?転移者様サマだね。」
「うん。」
過去に転移、または転生してきた人のおかげで食文化も高い。
私達はお腹を壊すのではないかと思うほど冷たいバニラアイスを心行くまで堪能した。
次回更新は
明日2021年10月12日(火曜日)
よろしくお願いします。




