第7-1話 凄腕交渉人、ディープ・ダイサーガへ行く
目の前に広がるのは混沌とした大都会。
街の入り口から地下にかけて巨大ダンジョンが広がり、迷い込んで出られなくなった人間は数知れず……。
キタに広がる住宅街・商人街と、ミナミに広がるディープな繁華街……2つの顔を持った王国最大の都市、世間ではディープ・ダイサーガと呼ばれる街の入り口に、俺たちは立っていた。
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シーガル地方での依頼を終えた俺たちは、検討の結果、王都の南西に広がる商業の都、ダイサーガを訪れることにした。
情報屋から聞いたのだが、最近王都で”勇者パーティ”の失踪や解散が相次いでるらしい。
あのクラレンスのパーティも、調べたところエイダを除く全員が行方不明になっていた。
交渉人のカンとして言い知れないキナ臭さを感じた俺は、ギルド本部に休暇を申請し、より詳しい情報収集をするべく、この街を訪れたのだ。
ダイサーガは伝統的に中央……王都と仲が悪く、ディープな商業エリアもあるので、そのような裏情報を集めるのにぴったりだ。
「うわあぁ! おっきい街! それにいいニオイがぁ~」
「わ、わうんわうん(娘ミアよ、急にリードを引っ張るでないわん)」
ハスキー犬になったポチ侯爵をリードで引いているミアは、大都会の街並みに感動したかと思うと、ふらふらと屋台に引き寄せられていく。
そう、ここダイサーガは食の都でもある!
ミアを解き放ったら一生出てきそうにないな……。
「ミア~、とりあえずキタにあるギルド支部に挨拶をしてからにしろよ……って、もう食ってるしっ!?」
「はふはふ……たこ焼き、おいし~……」
「表面はカリッ、中はとろっ……鼻の奥をくすぐる香ばしいソースの香り……う~ん、さいこうぅ」
まったく……すでに5皿も買ってるな……うっ、ミアの”メシ顔”を見てると、俺も食いたくなってきた……。
結局俺たちは、屋台の戦略にハマり、街に入る前にたっぷりとたこ焼きを堪能するのだった。
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「ふぅ……食った食った……だがミアよ! ここダイサーガは王国一のグルメの都!」
「油断するとすぐブーデーになるぞ! 心せよ!」
「ラジャーだよ! アレンっ!!」
「がうがう(漫才してないで早く行くぞご主人ども)」
俺たちはようやく体制を整えると、街の入り口である”ウメキータダンジョン”の前に立つ。
「……ねえ、アレン。 なんで街の入り口がダンジョンになっているの?」
「もともとは、中世に敵の侵入を防ぐために作られた、世界最古の”ダンジョン”だ」
「だが、ダイサーガ商人のメンタリティである、「おっ! ここなんか空いてるやん! ウチが作りたいもん作ったろ!」イズムにより、無計画に増改築をした結果……」
「全25階層、ダンジョンの総延長350キロもの巨大ダンジョンになってしまったんだ」
「さ、350キロ……?」
その桁違いの規模を聞いてミアが呆然としている。
「ギルドで把握していない部分も多く、”いちど迷ったら出てこれない”、”第3階層23番ゲートは異世界に繋がっている”、”馬車ターミナルを目指してい歩いていたらいつの間にか海に出ていた”」
「などの、数多くの伝説がある……ミアも、心して挑むように! 絶対俺のそばを離れるんじゃねぇぞ!」
「う、うん! 分かったよアレン! ミアの事……守ってね?」
上目づかいで俺の袖をぎゅっと握るミア。
くうう……相変わらず俺の愛娘はかわいいぜ……絶対守ってやる!
「がうがうがう(運河を使えるんだから、渡船で行けばいいのにわん)」
俺たちは、ポチ侯爵の正論ツッコミを無視し、ウメキータダンジョンに突入した。
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……半日後……
「……バカなっ! 7番通路を案内通りにドジマ方面に歩いていたはずなのに、HKデパートの地下に出ただとっ!?」
案の定、俺たちは迷いまくっていた。
「しかもミア達……屋台があるたびにご飯を食べているから……もう動けなくなりそうだよ……アレン、ゴメン……」
「ミア……ミアっ!? 寝るんじゃない! 寝たら死ぬぞっ!!」
「がうがうがうがうっ(なんてこの人間どもは面倒クサいのだ! ほら、我がマッピングしといたから、こちらが目的地だこの阿呆どもめわん)」
食べ過ぎて動けなくなる一歩手前で、俺たちはポチ侯爵の助力により、ウメキータダンジョンを脱出したのだった。
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「ギルド本部と連絡が取れない!? マジかよ……」
夕闇迫る中、ようやくダンジョンギルド・ダイサーガ支部に到着した俺たちを、驚愕の知らせが待っていた。
「ああ、ほんまやで。 先日、急に治安局の連中が押し入ってきて、ギルドの建物も接収されたらしいで」
「ギルド長も、事務員たちもまとめて行方不明や」
「せやから、ダイサーガ支部が中心になって、内偵と反抗の準備を整えとるとこや」
「なるほど、それなら……」
俺は、ラーナ地方で見た事件の顛末と、情報屋から聞いた最近の”勇者パーティ”のこと、ガリオン治安局大臣の件、治安局のエージェントなのに、なぜか勇者パーティでヒーラーをしているエイダの事など、俺が持っている情報をギルド受付に伝えた。
「ホンマか……エライ情報やけど、うちらもそのエイダっちゅうヒーラーと、勇者クラレンスのパーティの件は、疑っとったんや」
「その辺はさすがにギルド支部だけじゃ手に負えへんから、”ミナミ”の”デンデンブラックマーケット”の情報屋連中と協力しとる」
「奴らと情報交換に行ってくれへんか?」
なるほど、ブラックマーケットなら治安局の目を盗んで動くのに好都合か。
ダイサーガ支部がバックアップしてくれるんならありがたい!
王国にひしひしと迫る危機の予兆を感じながら、
さっそく明日、俺たちはミナミにある”デンデンブラックマーケット”を訪ねることにしたのだった。
「……ねえアレン……このクシカーツという魅惑の食べ物は……お肉にお野菜がこんなにこんがりと……ごくり」
「……調査が終わってからにしなさい」
ミアのお腹周りにも危機が訪れそうだった。




