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第7-1話 凄腕交渉人、ディープ・ダイサーガへ行く

 

 目の前に広がるのは混沌とした大都会。


 街の入り口から地下にかけて巨大ダンジョンが広がり、迷い込んで出られなくなった人間は数知れず……。


 キタに広がる住宅街・商人街と、ミナミに広がるディープな繁華街……2つの顔を持った王国最大の都市、世間ではディープ・ダイサーガと呼ばれる街の入り口に、俺たちは立っていた。



 ***  ***


 シーガル地方での依頼を終えた俺たちは、検討の結果、王都の南西に広がる商業の都、ダイサーガを訪れることにした。


 情報屋から聞いたのだが、最近王都で”勇者パーティ”の失踪や解散が相次いでるらしい。


 あのクラレンスのパーティも、調べたところ()()()()()()全員が行方不明になっていた。


 交渉人のカンとして言い知れないキナ臭さを感じた俺は、ギルド本部に休暇を申請し、より詳しい情報収集をするべく、この街を訪れたのだ。


 ダイサーガは伝統的に中央……王都と仲が悪く、ディープな商業エリアもあるので、そのような裏情報を集めるのにぴったりだ。



「うわあぁ! おっきい街! それにいいニオイがぁ~」


「わ、わうんわうん(娘ミアよ、急にリードを引っ張るでないわん)」


 ハスキー犬になったポチ侯爵をリードで引いているミアは、大都会の街並みに感動したかと思うと、ふらふらと屋台に引き寄せられていく。



 そう、ここダイサーガは食の都でもある!

 ミアを解き放ったら一生出てきそうにないな……。



「ミア~、とりあえずキタにあるギルド支部に挨拶をしてからにしろよ……って、もう食ってるしっ!?」


「はふはふ……たこ焼き、おいし~……」


「表面はカリッ、中はとろっ……鼻の奥をくすぐる香ばしいソースの香り……う~ん、さいこうぅ」


 まったく……すでに5皿も買ってるな……うっ、ミアの”メシ顔”を見てると、俺も食いたくなってきた……。


 結局俺たちは、屋台の戦略にハマり、街に入る前にたっぷりとたこ焼きを堪能するのだった。



 ***  ***


「ふぅ……食った食った……だがミアよ! ここダイサーガは王国一のグルメの都!」


「油断するとすぐブーデーになるぞ! 心せよ!」


「ラジャーだよ! アレンっ!!」


「がうがう(漫才してないで早く行くぞご主人ども)」



 俺たちはようやく体制を整えると、街の入り口である”ウメキータダンジョン”の前に立つ。



「……ねえ、アレン。 なんで街の入り口がダンジョンになっているの?」


「もともとは、中世に敵の侵入を防ぐために作られた、世界最古の”ダンジョン”だ」


「だが、ダイサーガ商人のメンタリティである、「おっ! ここなんか空いてるやん! ウチが作りたいもん作ったろ!」イズムにより、無計画に増改築をした結果……」


「全25階層、ダンジョンの総延長350キロもの巨大ダンジョンになってしまったんだ」


「さ、350キロ……?」


 その桁違いの規模を聞いてミアが呆然としている。


「ギルドで把握していない部分も多く、”いちど迷ったら出てこれない”、”第3階層23番ゲートは異世界に繋がっている”、”馬車ターミナルを目指してい歩いていたらいつの間にか海に出ていた”」


「などの、数多くの伝説がある……ミアも、心して挑むように! 絶対俺のそばを離れるんじゃねぇぞ!」


「う、うん! 分かったよアレン! ミアの事……守ってね?」


 上目づかいで俺の袖をぎゅっと握るミア。


 くうう……相変わらず俺の愛娘はかわいいぜ……絶対守ってやる!


「がうがうがう(運河を使えるんだから、渡船で行けばいいのにわん)」


 俺たちは、ポチ侯爵の正論ツッコミを無視し、ウメキータダンジョンに突入した。



 ***  ***


 ……半日後……


「……バカなっ! 7番通路を案内通りにドジマ方面に歩いていたはずなのに、HKデパートの地下に出ただとっ!?」


 案の定、俺たちは迷いまくっていた。


「しかもミア達……屋台があるたびにご飯を食べているから……もう動けなくなりそうだよ……アレン、ゴメン……」


「ミア……ミアっ!? 寝るんじゃない! 寝たら死ぬぞっ!!」


「がうがうがうがうっ(なんてこの人間どもは面倒クサいのだ! ほら、我がマッピングしといたから、こちらが目的地だこの阿呆どもめわん)」


 食べ過ぎて動けなくなる一歩手前で、俺たちはポチ侯爵の助力により、ウメキータダンジョンを脱出したのだった。



 ***  ***


「ギルド本部と連絡が取れない!? マジかよ……」


 夕闇迫る中、ようやくダンジョンギルド・ダイサーガ支部に到着した俺たちを、驚愕の知らせが待っていた。


「ああ、ほんまやで。 先日、急に治安局の連中が押し入ってきて、ギルドの建物も接収されたらしいで」


「ギルド長も、事務員たちもまとめて行方不明や」


「せやから、ダイサーガ支部が中心になって、内偵と反抗の準備を整えとるとこや」



「なるほど、それなら……」


 俺は、ラーナ地方で見た事件の顛末と、情報屋から聞いた最近の”勇者パーティ”のこと、ガリオン治安局大臣の件、治安局のエージェントなのに、なぜか勇者パーティでヒーラーをしているエイダの事など、俺が持っている情報をギルド受付に伝えた。


「ホンマか……エライ情報やけど、うちらもそのエイダっちゅうヒーラーと、勇者クラレンスのパーティの件は、疑っとったんや」


「その辺はさすがにギルド支部だけじゃ手に負えへんから、”ミナミ”の”デンデンブラックマーケット”の情報屋連中と協力しとる」


「奴らと情報交換に行ってくれへんか?」


 なるほど、ブラックマーケットなら治安局の目を盗んで動くのに好都合か。


 ダイサーガ支部がバックアップしてくれるんならありがたい!



 王国にひしひしと迫る危機の予兆を感じながら、


 さっそく明日、俺たちはミナミにある”デンデンブラックマーケット”を訪ねることにしたのだった。



「……ねえアレン……このクシカーツという魅惑の食べ物は……お肉にお野菜がこんなにこんがりと……ごくり」


「……調査が終わってからにしなさい」


 ミアのお腹周りにも危機が訪れそうだった。


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