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第3-3話 凄腕交渉人、愛娘を助ける(メシで)

 

「空腹ですね」



「……はい?」



 ここはクーレの街の診療所。


 ”ビバゴーン”を極大魔法で吹き飛ばした後、昏倒してしまったミアを連れた俺は、大急ぎで街に戻ると金貨の束を手に、腕利きの診療所で彼女を診てもらったのだが。



「すまん、良く聞こえなかった。 もう一度説明してくれねえか?」


 あっさりとした医者の説明に、先ほどまでミアの安否を心配していた俺の頭では理解が追い付かないようだ。


「ですから、体力……もしくは魔力を使い過ぎたことによる、電池切れですね。 普通の人はある程度リミッターが掛かりますが、彼女は自分のエネルギーを限界一杯まで使えるようです」


「使い切った後は、冬眠のような状態に移行するみたいですね……これは興味深い患者さんです」


 なんか頭痛がしてきたぞ……


「で、治療法は?」



「何か消化に良いものを食べさせればすぐに目を覚ますかと」


「…………」


 俺は、魔法の収納袋から板チョコを何枚か取り出すと、ミアの口に近づける。


「くんくん……うへへ、食べ物の匂いぃ~」



 ぱくぱくぱくっ!



 ミアはひくひくと鼻をヒクつかせたかと思うと、光の速さで平らげてしまった。



「ん……あれ、どうしたのアレン? そんな慌てた顔をして」



 糖分が全身に回ったと思われた瞬間、ぱちりと目を開けたミアの姿に、俺は心から安堵のため息を漏らすのだった。


 ***  ***



「飯のエネルギーを魔力に……? なんだそりゃ」


「ぱくぱく……孤児院にいたとき()()()()()はしてたんだけど……ぱくぱく……魔力が足りなくて全然使えなかったんだよね……ぱくぱく」


「それが、この腕輪を付けることで……食事のエネルギーを魔力に変換できるようになったみたい……ぱくぱく」


「さっき魔法を使った時見えた、この腕輪の”マニュアル”に書いてあったよ」


 ”ごはんエネルギーが足りない!”と主張するミアのために、その辺の飯屋に入りミアに好きなだけ食わせているんだが……すごいな。

 もう5人前は食っているぞ……。



 ”マニュアル”とは、一部の特殊なマジックアイテムの機能で、複雑な使い方をするアイテムの場合、その使用方法を初回の使用時に教えてくれる機能である。


 そのマニュアルに書いてあったのなら、確かなのだろうが……食った飯のエネルギーを魔力に直接変換するとか……変わったマジックアイテムだと言ったシーマ神殿の神官の言葉は真実だったわけだ。


 それにしても……Sランク攻撃魔法まで契約しているとは……使えるかどうかは置いといても、契約できるだけで凄い才能である……ミアがいた孤児院、()()()()()()()()()()()()()



 少し心配になってきたぞ。



「ふう、食べたぁ~。 ゴメンねアレン……最初だったから、加減が分らなくて……心配かけちゃった」


 食事を平らげたあと、一転しょげかえるミアを、俺は優しくなでてやる。


「ふふ、無事ならいい……今度から使うときは一言掛けてな」


「うん!」


 満面の笑顔で頷くミア。


 何にしろ、俺の最愛の愛娘が心強いパートナーとして進化してくれたんだ。


 いまはそのことを喜ぶとしよう。


 俺のスキルの変化についても、おいおい調べていかねばなるまい……



 だが今は!


「よしミア! 依頼も片付いたんだ! ハイロッシ地方グルメ制覇のターンだ!」


「わーい、ミア……いくらでも食べられるよ!」



 ***  ***


 ここはクーレの街郊外。


 例のごとく魔法のコテージを出した俺たちは、カマドを組み野外飯を作っていた。

 今日の食事当番はミアの番だ。



「ふふん! 受付のお姉さんに聞いたんだ~」


「これ! クーレ名物の煮込み料理……肉じゃが!」



 コトコトと弱火で煮こまれる鍋の中には、黄金色に輝くジャガイモととろとろに煮込まれた牛肉……それに鮮やかな朱色の人参がアクセントとなる珠玉の煮込み料理、”肉じゃが”が神々しい輝きを放っていた。



「できあがり~。 はい、アレン!」


 お椀に肉じゃがをたっぷりと盛り、ミアが手渡してくれる。


 おっと、その前に……


「ミア、肉じゃがにはこれを乗せるんだ……」


 俺はパラパラと肉じゃがに緑色の粒をかける。


「これは……グリンピース? なんで5粒なの?」


「ふふ、奇数にするのも理由があってな……奇数は2で割れない……つまり、”ふたりはずっと一緒”という意味が込められているんだ」


「!! ぐすっ……アレン、嬉しいよぉ~」


「こらこら、抱きつくのは食べてからにしろ」


 俺の縁起かつぎに感極まったのか、抱きついてくるミアを優しく抱き留める。



 ……まいったな、こんな様子じゃ、ミアが嫁に行く時、俺はどうなってしまうのだろうか……まあ生半可な奴にやるつもりはないが!!


 俺は娘を持った父親だれもが通るであろう想いを抱いていた。



「んっ……じゃあ、あらためて……いただきまぁ~す!」


「おう、いただきます」


 陽気な「いただきます」とともに、ほくほくに炊けたジャガイモを口に運ぶ。



 ほろほろと口の中で優しくほどけるジャガイモに、思わず頬がほころぶ。


 目の前でミアも全く同じ顔をしている。


「ふああ、ジャガイモもだけど、お肉も口の中でとろけるよぉ~、幸せ~」


 はふはふと牛肉をほおばるミア。


 幸せな食事は続き、気が付くと大きな鍋の中身はいつの間にか空になっていた。



 片付けが済んだ後、お風呂に入った俺たちは、ベッドを引っ付け1つにすると一緒に横になっていた。


 ホテルに泊まるのもいいが、やはりこの魔法コテージのベッドが最高だな。


「ふふ……あったか~い」


 獣人族であるミアはほんのり体温が高いので、こうやってミアを抱いているだけで熟睡できるのだ。



「ミア、魔法が使えたときは少し怖かったけど、ミアの力でアレンを守れるなら、うれしいな」


「ふふ、頼りにしてるぞ……俺のスキルと合わせれば、俺たちが王国最強だ」


「うん♪」



 最愛の娘を胸に抱きながら、幸せな夜は過ぎていった。


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