将棋とコンピュータ(15万字突破記念)
将棋ソフトの歴史、それは1970年代からはじまりました。黎明期のそれは、本当に弱かった。さらに思考時間もすさまじく長く(1説によれば1局に数カ月以上かかったらしい)、実用的なものではありませんでした。そのうえ、下手したら二歩など反則も……
しかし、約40年後の現在、将棋ソフトは人間では届きえない高みへと突入しています。
今回のエッセイでは、アマチュアで単なる将棋好きの自分が好き勝手に将棋とAIについて語っていきたいと思います。もしかするとへんてこな内容が含まれているかもしれませんが、そこは笑ってもらえればと思っています。
1.将棋ソフトの歴史と現在
1970年代以降、ソフトはなかなかアマチュアの有段者までの実力には届かなかった。
しかし、90年代、ついに初段の壁を突き破りました。さらに、詰将棋界ではさらなる技術進歩を見せて詰将棋史上最長の1525手を誇る問題を正答するまでに至ったのでした。また、親戚のチェス界では同時期に世界チャンピオンが人工知能に敗れています。しかし、持ち駒などのルールの関係で将棋のプロに勝つまでにはまだ長い期間が必要だと考えられていたのでした。しかし、それは技術の進歩の速さを読み誤っていた。
00年代にソフトは完全に開花します。05年にはついに、招待されていたアマチュア全国大会の予選を勝ち上がり、決勝トーナメント進出を果たす偉業を成し遂げました。アマチュアトップ層に匹敵したソフトの進化は加速します。
同年に公開された最強の将棋ソフトは、無料で公開されて、腕自慢たちがこぞって挑んだものの次々と粉砕されていき、あげくには、プロの予備門である奨励会員まで敗れる事態が発生しています。
そして、そこで、世紀の大勝負が企画されたのでした。当時のプロ最高位のタイトルホルダーとの一騎打ち。ソフトはその大勝負で敗れはしたものの、あと一歩まで追い詰める大健闘を演じたのでした。
最強の将棋ソフトに影響されて、コンピュータ将棋は発展していきます。
10年代にはいると、引退していた元タイトルホルダーの将棋連盟会長がソフトに敗れ、ついにプロとの本格的な勝負が開始されるのでした。
そして、2013年が運命の年となりました。
そこで、ついに現役のプロ棋士がコンピュータに敗北します……
さらにそこから数年で、コンピュータは次々とプロを撃破していくのでした。そして、2017年。プロ最高位のタイトルホルダー「名人」が、盤上でついにコンピュータと激突します。しかし、結果は2-0での敗北。ついにコンピュータは、最強の人間を打倒したのでした。
その後もさらに、将棋ソフトは発展を続けています。
2.ソフトによる将棋の変化
ソフトの発展は、将棋の戦法に大きな変化をもたらしました。
ソフト登場前の将棋はずばり、「固く守った後に一気に攻撃する」というスタイルが一般的だったが、コンピュータはそれをまるっきり変えてしまった。
そのスタイルはずばり「守備は堅いほうが望ましいが、それよりも盤全体のバランス重視」という考え方です。そして、そのスタイルの変化によっておもしろいことが起きています。一部の戦法において、江戸時代~昭和までに指されていた古典的な将棋の復活しているのです。
バランスよりも守備力を選んで、切り捨てられていた各種の戦法(雁木・elmo囲い等)がソフトによって見直されて、再び主流の戦法として復権しました。
最新AIが、古き良き将棋を見なおす。将棋の古典復興が、最新のコンピュータによってもたらされる。本当におもしろい現象です。
もしかすると古典将棋が、将棋の真理に近かったということかもしれない。
3. 将棋ソフトを使った学習法
さて、長々と将棋ソフトの話をしてしまったが、これをどう使うのか。最後に一番実利的な話をしようと思います。
ずばり、言うと、「自分の将棋の分析」と「プロの将棋の解析」に使うべきだとわたしは考えています。
圧倒的な実力を持つソフトに対してまっこうから勝負を挑んでも勝てない。そして、実力が違いすぎるので楽しくもない。
だから、ソフトに自分の将棋を読み込ませて、どこに問題があったのかを確認する作業が重要です。そして、コンピュータは推奨手順も示してくれる。それを確認するだけでも実力はかなり上がる。
そして、今までむずかしすぎてよくわからなかったプロの将棋の解説係としてもかなり有効。なにせ、コンピュータはプロクラスの実力を持つ。それが一家に一台いる。最高のコーチですよね。
時間がなければ、終盤だけでも読み込んでほしいです。それだけで難しい詰将棋を解くくらいの価値が生まれてくる。終盤の重要性は、『初段になる方法』でも書いたが絶大なものです。それも、プロが魅せる終盤は良質な教材となるとわたしは感じている。
このソフトとのコーチ関係はかなりの実力向上となります。恥ずかしながら自分も将棋ラブコメを書くために、自分の棋譜をコンピュータで添削したものを話に使っているのですが、その小説を書くためのコンピュータによる棋譜の添削のおかげで、なぜか昇段まですることができました。
要するに、コンピュータのコーチングは、それほどまで優秀なんです!
以上、将棋ソフトの魅力を徒然なるままに書いてしまいました。
読者の充実した将棋ライフにいくらかでも貢献できれば幸いです!
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用語解説
雁木……
江戸時代から原案があり、それを戦前のプロ棋士たちが発展させた戦法。
縦からの攻撃に強く、火力も高い。
戦後、弱点が発見されて、廃れてしまったが、コンピュータが再発見した。
現在は、昔の形から変形して使われている。
elmo囲い……
戦後、中飛車対策のために使われていた守備の方法。
一部戦法の対策として、使われていなかったが、名前のもととなったコンピュータソフトが、汎用性を再発見し、大流行している。
最後となりましたが、わたしの将棋ラブコメ『おれの義妹がこんなに強いわけがない ~妹とはじめる将棋生活~』も読んでもらえると嬉しいです。わたしのマイページか下のURLをご使用ください。
https://ncode.syosetu.com/n0999fg/
読んでいただきありがとうございました。