其の七
何かもう、この感覚にも飽きてきたのかもしれない。
血を見ても、断末魔の声を聴いても、死ぬ直前の顔を見ても、もう何も「感じ」ない。
この前までのあの日々が夢のようだよ。いや、実際は、本当に夢だったのかもしれない。
夢の中で、君を殺して、リスカして、いろんな人を殺した。
もしかしたら、もしかしたら、
夢なのかもしれない。
でも、そうだとしたら、
なぜ、僕の心はこんなにも高ぶっているんだ?
もう夢と現の区別もつかない。いや、つかなくていい。今までの日々が幻だったとしても、今この瞬間が幻影にすぎなかったとしても、僕は構わない。
夢かどうかは、頬をつねってみればわかる。昔読んだ漫画の主人公がそうやっていたのを思い出す。でも、そんなんじゃ、足りない。
僕の穴の開いた心をそんな簡単な行為で埋めるわけにはいかないんだ。
どうしようか。
自分で自分の腹を切り開く?いや、途中で死んじゃうか。
飛び降りる。これは良い。でも、きっと最後はみじめだよな。
どうせなら、もっと綺麗に死にたい。
本当は、自分の内臓を見たかった。そうすればきっと、「生きている」って初めて実感できただろうから。リスカなんかじゃなくて、本当に実感できただろうから。
でも、それじゃ途中で息絶える。
じゃあ、方法は一つしかないよね。
君と同じ死に方をしよう。
今度は自分でだけど。
最愛の人と、また会えるだろうから。
たとえそれが地獄でも、僕は構わない。
深夜。聞こえてくるのは、ニュースだけ。
テレビの電源を切る。
台に上がる。一歩ずつ。踏みしめながら。
怖がる必要なんてない。
表彰台に上がるよりも、ずっと簡単だから。
首に縄をかける。
いや待て、窒息よりももっと楽に死のう。
首の骨が折れれば、即死だろうから。
すぐに、らくになれるさ。だから、こわがらないで。
きみとおなじばしょにいけるんだから。
だから、もう、かくごをきめて。
つな、いや、なわに、くびをかけよう。
たのしみだね。
よくねむれるといいな。
おやすみなさい。
「感覚」自体はこれで終わるんですけど、あと二つ番外編載せときます。