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感覚  作者: 朱雪藍
6/9

其の六

ああ、あの「感覚」が忘れられない。

あの「自分の手の中で一つの命が消える」感覚が。虫を潰すのも同じだけれど、あの「感覚」は格別だった。ああ、せめてもう一度……もう一度だけでも……


僕の欲求はもう抑えられないところまで来ていた。左腕にも、右腕にも、足にまで、カッターで付けた、生きている「シルシ」が生々しく残っている。


自分自身ではダメなんだ、自分では。昔なら、他人と会話するだけでよかった。でも、一度贅沢をしたら忘れられない。僕が受け取る「感覚」は、あくまでも他人を介さなくては。会話?いえいえ、そんなんじゃない。


そう、「命」だ。


君の温もりを思い出す。息はしていない。今思うと、本当に侮蔑の言葉を言っていたのか、記憶にない。でも、本当に君のことが好きだったんだ。日に日に受け取る感覚という名の快感はエスカレートしていって、最後は殺しちゃった。


ああ、ああ、あの「感覚」をもう一度……




二日前まではたまりにたまっていた鬱憤なんて、今の僕には微塵もない。やっぱり、発散は大切なんだな。


夜の街に繰り出すとしよう。そろそろ素手も飽きてきたところだ。台所に向かい、手ごろな「獲物」を取り出す。


「ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪ か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り♪」


外。深い闇を見ていると、僕のすべてを委ねたくなるよ。


「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・♪」


よし、今日はあいつにしよう。

近づき、すれ違ってから襲う。


静かに。静かに。細心の注意を払って。

後ろから口元を押さえてナイフを突き立てる。

ああ、この感覚。夢の中と同じだ。

もう数回突き刺す。だんだんと動かなくなってきた。そろそろお楽しみは終わりかな?



今日はもう少し、いけそうだ。

ターゲットを変える。さっきよりも強い快感を体が求めている。


次は、あいつだ。

夜の街に繰り出すようになって三日目、初めて女性を手にかける。もちろん、君は除いてね。君だけは、特別だから。

同じようにして、突き立てる。この暗闇だ、よっぽどへまをしなけりゃ血は見えない。

少し違う感覚が手に伝わる。やっぱり、少し柔らかい。

もう抑えられない。本能のままにナイフを動かす。

皮膚が裂け、血が出る。

僕に付こうが関係ない。

さっきよりも刺激的な殺し方を体が求めている。

はらわたを引きずり出そうか、首と胴体をきりはなそうか。

方法なら、いくらでもある。


夜はまだまだ、これからだ。さあ、僕に感覚を味合わせてくれ!



とある町で、猟奇的な連続殺人事件が起こった。

まだ、犯人は見つかっていない。


違う街でも、同様に。

証拠は何も残っていない。




今日も僕は、「感覚」を求め街に出る。

暗闇の中、「君」を後ろに引き連れて。


この世にはもういない、君を。


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