最終話:気分爽快な俺
ボリスとスヴェトラーナが退院したが、まだ本調子じゃない。
宿屋の俺が使っていた部屋のベッドで二人とも寝ている。
俺は長椅子で寝ることにした。
食料を買いに外に出る。
そこに、盗賊の集団が現れた。
この前の連中がまた復讐に来たのか。
百人はいる。
絶体絶命だ。
マリアも馬に乗ってやってきた。
「この宿屋にいるボリスとスヴェトラーナを殺して」とボスに依頼している。
そのあと、俺の方を指さして、ニヤつきながら、
「あと、この貧相な不能野郎もついでに」と言いやがった。
盗賊が全員、大笑いしやがった。
兄貴とスヴェトラーナを殺させるわけにはいかん。
大切な人たちだ。
たとえ鈍感な人たちでも。
それに正直、頭にきたぞ。
大勢の前で不能野郎と言いやがって。
俺は激怒した。
やけっぱちになった。
いきなり、先頭のボスに襲いかかり、首を斬り飛ばす。
ボスの首から噴水のように血が噴出した。
茫然とする部下たち。
残りの奴も片っ端から、切り殺す。
百人全員の首を斬ってやった。
ふう、疲れた。
あれ、おれ強いじゃん。
起きているのに。
なぜだ。
そう、これをヤケクソ火事場の馬鹿力理論と呼ぶとするか。
しかし、百人殺したんで、全身、返り血でぐしょ濡れだ。
すると、マリアが血まみれの俺に近づいて来た。
「ワイルドで素敵。やっぱりあなたが最高」
「よりを戻したいのか」
「ええ」淫靡な目つきのマリア。
「俺に殺されてもいいのか」
「愛する人に殺されるなんて、ロマンチック」
「あっそう」
俺はマリアのあごにげんこつを一発食らわした。
女を殴ったのは初めてだな。
斜面をゴロゴロ転がり落ちて、マリアは泥の川に落ちた。
せいせいした。
ザマーミロ!
「ふざけんな、このED野郎!」とマリアが川から上がって、泥だらけで叫んでいる。
不能かどうかなんて、そんなこと、もうどうでもいい。
「うるせー! クソ女! いかれ女! 変態女! お前なんて殺す価値もねーよ!」
わかったぞ! 強くなるとは、他人に堂々と怒ることができることだ。
正当な怒りこそ、人生に必要だ!
「女なんかいらねーよ! 鬱陶しいだけだぜ! どっか行け!」
気が付くと、大声も出せるし、どもってもいないぞ。
俺は一人で生きていけるぜ!
オレスゲー!
オレツエー!
山に向かって大声で叫ぶ。
「ヤッホー!」
気分爽快!
(終)