第十三話:眠りたいのに隣の部屋が静かで眠れない俺
短期講習が終わって、元の村に戻った。
宿屋でひきこもり。
会計の仕事はしているが。
最近は、隣の部屋から夜の運動会の音は聞こえてこない。
静かだ。
しかし、やめたわけではないらしい。
夜になると、時折、ベッドがかすかにギシギシする音や、うめくような、我慢しているような声がかすかに聞こえてくる。
夜の交霊会みたいで、不気味だ。
いや、交霊会って夜にやるもんかな。
よく知らんけど。
とにかく、かえって眠れない。
しばらくすると、今夜の交霊会は終わったらしい。
しかし、俺は眠れない。
仕方なく、ただ宿屋のベッドで横になっていると異臭がする。
何か煙いぞ。
廊下に出ると、兄貴たちが寝ている隣の部屋が燃えている。
俺は、慌てて剣を持ってきて、扉をぶった斬った。
ボリスとスヴェトラーナが倒れている。
煙でも吸ったのか。
俺は、宿屋の外の安全なところまで二人を担いでいく。
危ないところだった。
ふと、近くの木の影に女がいるのを発見した。
マリアだ。
あの女、放火しやがったな。
俺に気付くと、逃げ出しやがった。
宿屋近くの斜面を下りて行く。
斜面を下りると泥の川がある。
俺は追いかけて、川の橋の上でマリアを捕まえた。
「お、お前」と俺がどもっていると、
「うるさい! あたしが放火したって証拠あんの!」
放火したって自分で言い出してるじゃねーか!
「ほっといて、この不能男!」と罵倒されて泥の川に突き落とされてしまった。
泥だらけになった。
チキショー!
マリアは逃亡。
宿屋の火事の方は何とか他の部屋の人たちが消火して、一部屋だけですんだようだ。
兄貴とスヴェトラーナは村の診療所に入院。
喉を火傷したらしい。
かなりの重傷だ。
マリアの奴、とんでもねー女だ。
しかし、よく考えたら、俺はボリスとスヴェトラーナの二人を担ぎ上げて助けたんだよな。
分厚い扉もあっさりぶった斬って。
どっからそんな力が出たんだろう。
不思議だ。




