冷たくない方程式
「あのね、あなた。妊娠しちゃった」
てへっと笑う妻に、宇宙船のパイロットの夫は絶句した。
「この宇宙船は人員ギリギリの食料と燃料しかないんだぞ。アルファケンタウリまで到着する頃にはどうなってると思うんだ!」
「あら。ちゃんと責任とってよ」
悪びれずに言う妻。そうだ。確かに夫に責任があるだろう。
「お前、SFの『冷たい方程式』を知ってるか?」
「ええ。それと一緒に吾妻ひでおのどーでもインナースペースのパロディも読んだわ!」
「なんじゃそりゃ」
「救援の宇宙船呼んだら密航者が沢山乗っててこっちの方が空いてるぞ!ってなだれ込んでくる話」
「ネタバレするなよ」
どーしよーどーしよーと夫は悩んだ。
「失礼ですが、なぜ人員数が増えるのですか?」
AIロボットが尋ねた。
「1足す1は2と限らないってこったよ!」
「???」
AIロボットはお目目が?マークになってしまった。
はっ!
「一人、増えるんだよな?五つ子とかじゃあるまいな?」
夫はぞっとしながら言った。
「まだわっかんなーい♪」
妻は嬉しそうに答えた。
「仕方がない。救援を呼ぼう」
「なんだ。吾妻ひでおの方か」
「違うから」
SOS、SOS至急救援に来られたし。
通信機はうたった。
「こちら宇宙船隊オメガ3」
「助けて」
「こちらでも緊急事態発生中。至急救援に来られたし」
「えー!」
とりあえず合流することになった。
「そちらはどういう理由で困ってるの?」
「アルファケンタウリの惑星に着いたら基地を建設して、環境をテラフォームする予定だったんですが・・・」
「ですが、何?」
「AIロボットの誤作動で現在地に基地を建造し始めちゃって、止められません」
「ということは・・・」
「この宙域に一大宇宙ステーションが完成予定です」
「しょうがないな、ここに住むか」
「わーい♪」
夫婦は手を取り合って喜んだ。
fin.