サムズアップで終わる異世界転生
誰か教えてくれ・・・、俺は何を間違えたんだ・・・、”これ”にはどういう意味があるんだ・・・。
おっす! オレ、高梨和也! 17歳だ。暴漢に襲われた女の子を庇って死んだんだけど、なんと女神さまにチートをもらって異世界に転生させてもらえることになったんだ。
そんで「バンメイチ」っていう名前の町の冒険者ギルドで登録しようとしたんだ。そしたら受付嬢のマリナちゃんがすっげぇかわいいの。オレの物語のヒロインキタ――(゜∀゜)――!!って確信したね。さっそくマリナちゃんと親交を深めようとしたらオークみたいな大男に、ここは子供の来るところじゃねぇって絡まれたんだ。
オレは震えたね、これがテンプレってやつかと、ギルドに居た他の冒険者がこれまたお決まりのセリフを言ってるし。
「おいおい、あのガキ死んだな」
「ああ、Aランク冒険者”鮮血”のオーガロックに目を付けられるとは」
オーガロック(笑)、オークじゃなくてオーガだったのかよwww、まあどっちでもいっかオレの踏み台になるんだし。お前のおかげでマリナちゃんにカッコいい所を見せて惚れられるんだから、むしろ感謝しないとな。
「フンッ、雑魚ほどよく吼える」
「キサマァァァァ! 調子に乗りやがって! 表に出ろ!」
フッ、キマッたっしょ、一度言ってみたかったんだよね。
「あの、逃げてください! オーガロックさんはとても強いんです」
ああ、心配してくれるなんてやっぱマリナちゃんはオレのヒロインだ。大丈夫あんな奴すぐにぶちのめしてやるから、そんですぐにドラゴンとか倒してSランクになってやるさ。
「死んでも文句は言うなよ」
「それはこっちのセリフだな」
そう言うなり斧で斬りかかってくるオーガロック。だが、チートを持ってる俺からすると遅すぎるぜ。
ドゴォッ!!!
思いっきりカウンターパンチを腹に叩き込んでやったぜ、お前なんて拳で十分だってな。
その場に倒れるオーガロック、ざわめく見物人。
「そんな、オーガロックさんが」
「なんなんだあのガキ」
いいね、いいねぇ、これぞ異世界転生の醍醐味ってやつだよな。ほんじゃビシッと決めますか。
「フッ、見ててくれましたかマリナさん」
そう言いながら渾身のサムズアップ、おまけにウインクまでつけてやったぜ。この状況でこうされて落ちない美少女なんていないっしょ。
オレのサムズアップを見たマリナちゃんは唖然とした顔になる。そんな表情もかわいいなあと思っていたら、なぜかシーンとなっていることに気付いた。周りを見るとみんなマリナちゃんと同じような表情でオレのサムズアップを見ている。
え?なにこの状況と思った次の瞬間・・・。
「キャアアァァァァ!!!」「イヤアアアァァァァ!!!」「ヒィイイィィィ」「け、汚らわしい!」「ママー、あれなぁに?」「み、見ちゃダメよ! こ、子どもになんてものを見せるんだい!!!」
え、なにこの状況? どういうことなの?
混乱したオレはどういうことか聞こうとサムズアップをしたままマリナちゃんに近づくが、それを見たマリナちゃんが腰を抜かして号泣し始めてしまう。
「イヤアアアァァァァ!!! こ、来ないでくださいっ! そんなのイヤァァァァ! お、お嫁に行けなくなるぅぅぅ!!!!」
「おい、マリナさんを汚すつもりだぞ!」「聖騎士団を呼べっ、はやくしろ!」「王様にも助けを求めるんだ!」
そんなこんなで転移魔法を使ってまで駆けつけた聖騎士団員100人と近衛騎士団員50人によって捕らえられ。スキル封じの枷まで付けられて抵抗できなくなったオレは今、王都の地下深くにある大罪人のみが収監されるという牢に入れられている。
そういえば、ジェスチャーってのは国によって意味が変わるんだと授業で習ったなぁと、いまさらながらに思い出したがもう遅い感じだ。看守も来ないこの牢では、この世界でのサムズアップの意味を聞くこともできず最期までオレは”その意味”を知ることはできなかった・・・。
「あれ、カズヤ君もう死んだの? おっかしーな、結構強いチートあげたんだけど」
ふと気が付くとオレを転生させてくれた女神が目の前にいた。ちょうどいい、オレは”これ”の意味が知りたいんだ。
「女神様、教えてくれ! ”これ”のいm・・・」
「キャアアアァァァ!!! な、なんて冒涜的なものを見せるの、神への不敬よおおおぉぉぉ!!! 地獄へ落ちなさい!!!!!!」
そんなぁ・・・、いったい”これ”にはどういう意味があるんだよぉ・・・、誰か教えてくれよおおおぉぉぉ!!!!!!