第3話 おっさん戦力外通告される
さて、装備も準備できたし。さっそく探索に行こうかな。
と、考えていたらなんだか他の召喚者のみんなが集まって話し合っている。
どうやら、パーティーを組む話しをしているようだ。
「んじゃ、俺達はこのメンバーでパーティー組むことにしたから」
「えっ! 私も参加させてよ」
「そうなると、5人と3人になるからな〜」
「別にいいだろ、何も全員が魔王を倒しに行かなくてもよいんだから、戦力になるなら問題ない」
正論だな、おっさんはなんだか余り物扱いされてる気がするけど、しかたないのだろう。
実際おっさんに魔王を倒せとか無理あるし、若者達よ頑張って魔王をたおしてくれ。
俺以外の、余り物扱いの二人ミルキーちゃんとサンキチくんはどうしたら良いのかわからないようだ。
「魔王倒すのは危険だろうし、残った人には悪いが戦力になりそうにない奴とは一緒に行く気はない。とりあえず俺たちが魔王を倒すから適当に食いつないどいてくれ」
ん〜、タカさん若いのに外資系の管理職のようにドライだね。
そんなこんなで、余り物3人が必然的に戦力外通告パーティーを結成することになったのだった。
「それじゃ、あらためてフミタロウです、おっさんなんであんまり無理したら次の日ヤル気0なタイプですけどよろしくね。ミルキーちゃん、サンキチくんよろしく」
「私、戦闘とか向いてないと思いますから。迷惑かけると思いますけどよろしくお願いします」
「ぼくも、スポーツとか全然だめだし……、どうしたらいいか」
ミルキーちゃんと釣りきちサンペイくんは戦力外通告がショックだったのかテンションだだ下がりである。
でもね、自分は特別だなんて思ってないだけ全然OKだと思うよ。
「まぁ、とりあえず3人で助け合ってなんとか生きていこう!
頑張ったら何かの間違いで魔王も、倒せるかもしれないし」
「そうですね、どうなるかなんて誰にもわからないですよね」
「ぼくも頑張ります」
ちょっとは二人も前向きになってくれたみたいなので、俺たちは町の外れの広場で戦闘の練習をしてみることにした。
「とりあえず、俺が一応戦闘系なんで前衛になるから、ミルキーちゃんは俺が囲まれないように棒で牽制ね。サンキチくんは隙を見て魔法発射みたいな」
「よし、じゃあやってみようか。目標は……、よしあそこの樽に水入れて立てとこう」
俺は試しに樽にグーパンチしてみた、なんだか凄くスムーズにパンチがでた。
なんというか、体が動きを覚えてる感じである。スポーツしてた人ならわかると思うけど、毎日ひたすら練習していると頭で考えなくても無意識に体が練習通りに動くようになるあれである。
なるほどね一応職業選んだ段階で、基礎訓練は修了しているって事か。
隣ではミルキーちゃんの木の棒が見事な突きで樽に穴を開けている。
おお、なんかカッコいいぞ。
おっさんが見とれていると、後ろから「ファイア!」って声がして火の玉が、樽を目掛けて飛んできた。
火の玉が当たった樽が燃え上がる。
「あちっ!? あっつ! 熱いよバカ!! いきなりもやすんじゃねー」
「あっ、すいません! 大丈夫ですか?」
「こんがり焼けそうだったけど、とりあえず大丈夫だよ!
しかしスゲーな魔法って」
「はい、自分でもびっくりしました」
「他にも出来るの?」
「えーっと、この初めての魔法使いって本によるとですね。火、水、雷、風、白、黒の6属性があるみたいです。そのうち魔法使いは火、雷、黒の魔法が使用可能ですけど本人の適性によっては使えない属性がある事もあるみたいです」
「へぇ〜。っていうかそんな本どうしたの?」
「装備と一緒に勧められたので買ったんですよ。僕、ゲームとかでも説明書じっくり読んでから始めるタイプなんで」
ふむ、サンキチくんはマニュアルくんだったんだな。調べたりする時は頼りになりそうだな。
色々試していたら、サンキチくんは黒の魔法が使えない事がわかった。火と雷の魔法が使えるが、雷の魔法は見るからにショボかったので彼は火がメインの適性なんだろう。
ミルキーちゃんは白属性の回復魔法と風属性の魔法に適性があるみたいだ。
いいな〜、俺も魔法使える職業にしたら良かったかも。
羨ましかったので俺もなんかないかしら? と、手から気を放ったり出来ないかやってみたら、ちいさな光のたまが掌から飛び出した。
おお! これは!
と、期待してみたのだが樽に当たると『ポフッ』て音がして消えてしまった。
「使えね〜〜!! なんだこれ」
しかも全然攻撃力ないのにスゲー疲れたので、二度と使う事はなさそうだ。
あと、わかった事で面白いと思ったのはこの世界ではイメージが大事なんだということ。
例えばサンキチくんが火の玉を相手に放ったファイアの魔法だが、頭の中のイメージがおなじなら「火の玉」とか「メラメラ」とか名前はなんでもよいみたいである。
なんだかやっぱり魔法の方が羨ましい。俺もなんかカッコいいのを考えよう。
回し蹴りとかイメージしたらスンナリできるけど、別に回し蹴りって技の名前言う必要ないしね、
そして思いついた、これは技の名前を出すに値する筈だ! 魔法にも匹敵する技になるだろう。
真剣に悩んでいる俺をみて、二人もなんか期待して見ている。
俺は大袈裟に構えをすると、呼吸を整えてイメージを爆発させる。
「うぉぉー、ロケットパ〜ンチ!!」
…………
…………
…………
「……あれ? でないな」
「ギャハハハ、それは無理でしょ〜。いくらなんでも腕は飛んでいかないですよ〜、フミタロウさん面白すぎ」
サンキチくん大爆笑。ミルキーちゃんは悪いと思ったのかうつむいて肩を震わせている。
「無理かな?」
「ぷっ……む、むりだとおもいますよ。でもその想像力はすごいとおもいますけど」
頭をかきながら恥ずかしそうな俺をなんとかフォローしてくれるミルキーちゃん。
しかし、こうやって練習してみると、思っていたより何とかなりそうなきがしてきた、他の二人も楽しそうに色々ためしているし雰囲気が良いのはなによりである。
でもね〜、なんか俺が一番ダメそうなのは気のせいだろうかと、少し心配なのは内緒だ。
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