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第2話  おっさん異世界にて買い物をする

 「この扉の向こうは城下町です、どうぞお気をつけて」


 衛兵に見送られて俺達は城から出ていこうとしていた、頑丈そうな扉が開かれる。


 扉の外は城下町になっていた、石で舗装された結構な広さの大通りが真っ直ぐに延び、両脇には三階建て位の家がならんでいる。


 その建物から少し内側には露店商が沢山店を出しているのだが、その店の前に出されている立て看板や、のぼりを見て俺は声をうしなった。


 『ようこそアーリアンへ』

 『召喚者向け武器防具の店』

 『初めての探索セットあります』『効果抜群、回復薬。高品質』

 『各種マニュアル、地図あります』


 その他、饅頭や焼鳥のような物まである。しかも、どの店も俺達が出てきた途端に大声で客引きを始めてやかましい。


 「なんか、あきらかに観光客扱いになってない?」


 俺は、隣のミルキーちゃんに話しかける。


 「そ、そうですね……、ちょっとビックリしました」


 だよね、まさかこんな展開は想像しないよな。


 「まぁ、どのみち色々準備しなけりゃならないからむしろ丁度よいと考えよう。とりあえず、何から買うべきだろうね?」


 「そうですね、まずは装備と薬ですかね」


 という訳で武器防具の店って看板の露店をのぞいてみる。


 「お、いらっしゃい♪うちの店は安くて丈夫しかも良心的だ、召喚者さんラッキーだね」


 なんか調子の良いおっさんだが大丈夫だろうか?


 「武闘家(男)と僧侶(女)の装備品ってあるかい?」


 「もちろんあるよ」


 おっさんが、ごそごそと机の上にならべだす。


 「ほいよ、あんたらならこのあたりかな」


 さすが、旅立ち用だな。しょぼい。


 「装備品セットで30ゴールド、武器は1つ20ゴールドだ」


 支度金としてもらったのは60ゴールド、とりあえず最低限の準備はできる金額なんだろな〜と、購入しようとしたらミルキーちゃんが、


 「フミタロウさん、向こうにも装備品のお店ありますから。あちらも見てみませんか?」


 「お、本当だ。焦って決める必要ないし見てみようか」


 で、二人で歩き出したのだが、なんか買い物デートみたいでよくね?って、にやけるおっさん。


 しかし悲しいかな回りから見たら完全に親子連れなんだろうけどさ。


 少し離れた所に出ている武器防具の店につくと、中には左腕の手首から先を無くしたなかなかいかついじいさんが座っていた。


 この店ではセットで販売はしていないようなので、とりあえずオススメを聞いてみる。


 「武闘家なら、これだな」


 なんか、変わった装備だな。肩から手首までだけの革の服っていうか、胴体部分がないので服なのか?まぁとにかく腕だけの服だ。


 手首と腕の外側に当たる部分だけ厚めの革や金属で補強されている。もうひとつは拳を保護するグローブだ、指先はなく打撃面が金属で補強されている。


 試着してみると、これが凄く動きやすい。なんか見た目は汚いが実用性は良い気がする。


 て、別に俺格闘経験ないから感覚だけなんだけどさ。


 「これ、腹とか防御無いけど狙われたらどうすんの?」


 「よけろ」


 なんて、ストレートな。


 「武闘家なら動きやすさが何より重要だぞ、体術を鍛える為にも最初は余計な物をつけんで良いわ」


 なるほど、ごもっともです。


 「俺はこれにするけど、ミルキーちゃんはどうする?」


 「お嬢ちゃんは、僧侶ならこれなんかどうだい」


 じいさんがだしてきたのは2メートルぐらいの木の棒だった。


 よくみると、ただの棒ではなく中央あたりに筒がついている。どういう使い方するものか二人ともよく解らない。


 「使い方がわかんねーか? 左手で真ん中の筒を持って、右手で棒の後ろの方を握ってつき出す、直接手で掴んで滑らすよりも速度があがるし、狙いも安定する。槍の応用だな」


 なるほど、とミルキーちゃんが試しにやってみると良い感じで棒がつき出される。


 「なかなか良い感じじゃない?」


 「ええ、なんかちょっと気持ちいいです」


 なんか意味深な表情なんですけど、……大丈夫だよね?。


 「防具はレザーの軽いので良いだろ」


 「はい、なんか凄く気に入りました。ありがとうございます」


 じいさんに頭を下げてお礼を言うミルキーちゃん。


 自分に娘がいてこんな子だったら、さぞ幸せなんだろうなと、父親目線になってしまうおっさん。


 ふと気がつくと、いかついじじいもなんか照れ臭そうな顔をしていやがる。


 「おいおい、やめてくれよ。それは買ってもらうこっちのセリフだよ」


 と、頭を掻くいかついじじい。


 「よし、決まりだな。じいさんいくらになる?」


 「武闘家用は60ゴールド、お嬢ちゃんのは30ゴールドだ」


 「おい!なんで、俺のは倍なんだよ! おかしくね?」


 「うるせー、いやなら買うな!男ならこの装備で無一文から稼ぎやがれ」


 ぐっ、このエロじじい。なんて横暴な、しかしこの装備は欲しい。


 「んにゃろ〜わかったよ売ってくれ。でもそのうちガンガン稼いで、どうかまた買って下さいって跪かせてやるかんな」


 「おう、やってみな。せいぜい野垂れ死にしないように頑張れや」


 「それから、お嬢ちゃんには良いものあったら置いといてあげるから無理しないでまたおいで。後は、こんなみみっちい奴に回復魔法なんか勿体ないからしなくていいからな」


 「このエロじじいめ!」


 などと軽口を言いあいながら、とりあえず初めての異世界での買い物は、あっというまに所持金0になって終了したのだった。


 とりあえずアーリアン饅頭は食べてみたかったのだが所持金不足で諦めざるを得なかったので、絶対、稼いだら食ってやる事を誓ったのてあった。


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