3話 無気力探偵
「アーニィー! さっきからずっとジュース飲んでお菓子食べているけど大丈夫なの?! まさかずっと食って寝て遊んじゃってないわよね!?」
「大丈夫だよぉ~。ヌフフ~。一通りは見てきたよ~。うんうん」
休憩スペースにて、アーニィーは自動販売機で大量に購入した炭酸飲料水とスナック菓子を広げ、スマホゲームを楽しんでいた。室内の冷房が中々調子が悪い成果、自然と喉も水を求める。
「全くもうぅ。釘を指すけど、失敗したらもうアーニィーには頼らないからね」
「首を切るって釘を指すだって、アハハハハハ、みっちゃん冴えてるぅー」
「もう、知らないわ」
美都子は堕落したアーニィーを置いて、マーニィーが狙う『石段係数』という日本絵画の前に来た。
ここは辺境の地ではあるが、しかしこの美術館は廃れているわけではない。むしろこの『石段係数』だけでなく、他に展示されている美術品は中々貴重らしく、長期休暇などではここも家族連れで賑わいを見せる。
「しかしねぇ、」
毎回、マーニィーが犯行を予告する度に、今回こそは完遂は不可能だと思う。
警備員の配置はネズミ一匹たりとも侵入を許さず、そして狙いを定めるその絵画も、身長が150の体躯では運ぶのに難しいだろう。そもそも絵画は銃弾をも弾くガラスケースに覆われている。は欠陥らしい欠陥のない包囲網。例え、天才と呼ばれた探偵のアーニィーの双子の姉だとしても、成功のヴィジョンを想像できない。
「でも、マーニィーは私たちの想像を越えるのよねぇ」
そして、アーニィーはそれをちゃっかり予想して、予防線を張る。アーニィーの戦績は七勝二敗、一引き分け(アーニィーがターゲットを爆破、または不参加だった)。アーニィーが少し優勢だ。
しかしアーニィーによるとこの結果は警備があってこそだと言う。マーニィーは単独で行動し、逆にアーニィーには万全な体勢がある。それは大きなアドバンテージだと。散々、マーニィーにしてられている私たちがそういう評価にあると思うと、報われるようで、若干、情けないと思う。
アーニィーvsマーニィー
この化かし化かされ合いの行方は、多分、私たちの想像を越えるのだろう。