第六話 辛いこと
「工…。」
そこに、工が立っていた。
「俺は、その程度の存在なのか?不正されたくらいで俺はヘバらねぇよ。…それに、俺の足が遅くなったのは、…、ほかに、理由がある。だから、蓮のせいじゃない。」
…理由?
……理由って…、何だよ…?
「…。理由とは、なんですか」
宮本が工を見据えながら言った。
「『帰宅部』のてめぇなんかに教えてたまるかよ」
工は、見下したような瞳で宮本を見、そして歩き始める。
「行くぞ、蓮」
「っ…、ああ…。」
工は俺の肩を乱暴につかむ。
少し痛みが走ったが、すぐに俺も歩き始める。
「テストの点ごときで、人を傷つけるようなことをするな、宮本。」
「っ!!」
テスト…?
…、そうだ。俺、今回はなぜか調子が良くて、五位に入ったんだっけ…。
「そのせいで、私は順位が落ちたんですよ…。飛鳥君。」
ぎりっ。
宮本が歯軋りする音が聞こえた。
宮本の拳は強く握られていて、俺への憎しみがとても強いのが分かってしまう。
「…負けないですから」
宮本が口を開くと、そんな言葉が出てきた。
「たとえ、どんな手を使おうと…、私は絶対に、負けないですよ。飛鳥君」
そして、睨まれる。
本当に、憎しみに満ち溢れた瞳で。
俺は…、誰にも、そんな瞳で見てほしくなかった。
それが、どんなにつらいことかよく分かっていたから。
だから、とても…
辛かった。
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