第四話 仕方のないこと
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「…へぇ。」
「で、でも俺は何もやっていないんだ!!」
「…ふぅん。」
「…なぁ、ちゃんと聞いてる?」
「…うん。」
さっきから短い返事しか返ってきてない…。
「だって俺、工が大会に出てくれればそれでよかったんだ。なのに、なんで…こんなことに…。」
「蓮。」
うつむいた俺に向かって、美空は俺に呼びかける。
「分かった。蓮は、何もやってないよね。蓮の言葉、信じるよ。…もし、その言葉に『嘘』があったら、私は…「おーい、お二人さん。」
「「啓!?」」
啓が、にこにこと笑いながらやってくる。
「よぉ、美空、蓮。仲良くやってるか?」
「は?」
「何で?」
「だって、二人とも真剣な顔して話してるんだもん。喧嘩したのかな〜、って思って。」
話していることがこんな内容だけど、啓は微笑んだままだ。
「うん、ちょっと…、いろいろあって。」
「『噂』のこと?」
…!?なんで分かるんだよ!?
「だって、今の深刻な話題って言ったら、やっぱり『噂』のことくらいかな〜って思って、な。」
俺は、よっぽど驚いた顔をしていたらしい。
啓がそのことを察して説明してくれた。
「だから、気にするなって言ったのに。」
「……だって…。」
俺はつい口ごもってしまった。
「…だって俺、そんなこと一切やっていないのに。なのにありもしない『噂』を流されて。気にしないわけないだろ。」
ようやく言葉が見つかって、理由を話した。
「…仕方ないことだよ、蓮。誰だって、恨んだり、妬んだりすることはあるんだから。」
美空の手が俺の肩に触れる。
仕方ないことなのかな…?
これは、仕方のないことなのかな……?
人の心を傷つけるこの行為は、仕方のないことなのかな………?
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