第二話 かみしめた幸せ
「はいはーい、ストップ。」
啓?何する気だ?
「そーゆーのな、大会に出られないへなちょこが言う負け惜しみっていうんだぞ。そんな恥ずかしい事言ってる暇あるなら、自己練習してたほうがいいと俺は思うけど。」
啓のそのはっきりとした口調に陸上部の二人はぎくり、とした。
「おっ、お前だって大会に出られないくせに、なに言ってんだよ!!」
「俺、別に大会なんて出られなくていいし。ただかったるいだけだし。それに、君ら俺よりタイム遅いくせに…そんなこと言えると思ってんの?(黒笑)」
けっ!?啓っ!?何言ってんだよ、喧嘩売るな!てゆーか迫力ありすぎて怖すぎだよ。
…とはさすがに口には出せない。
「「お…覚えてろよー!!!」」
…世間ではこれのことを負け犬の遠吠えって言うんだな…。
「大丈夫だった?蓮。」
「あ…、ありがとう。啓。」
こいつはもう一人の俺の親友、空知啓。
いつも大会には出ないけど、本当はとても足が速いのを俺は知っている。
いつも優しく中立を保っているけど、少し怒るだけで絶対零度の笑みをしてくるので、怖い。
「ほら。工。気付いてたんなら止めなきゃだめだろ。」
「知るか。」
なんかこの二人は仲が悪いみたいだ。顔を合わせるたびに喧嘩している。
特に恐ろしいのが、啓。
いつもの中立の立場はどこへ行ったんだと思わずつっこみたくなるような…。でも、恐ろしいから絶対にそれは口にしないけど、とにかく啓は工の前ではいつでも絶対零度の笑顔を見せるんだ。
「ま、まぁまぁ。二人とも、そこまでにしとこう?な?」
「でもなぁ、蓮。こいつの顔を見ると思わずぶっ飛ばしたくなる…「うるせぇよ。」
二人がまた言い争いを始める。
もう止めることもできなくなってしまったので、おとなしく見学することにする。
本当は見学なんてしていたらまずいんだと思うけど、あいにく俺はこの恐ろしい喧嘩を止めるほどの勇気はない。
目の前では、言い争いを続ける二人がいる。
でも、俺は思う。
こんな当たり前の日々が続くのは、どんなにいいことだろうと。
幸せは、いきなりなくなってしまうことを、俺はよく知っていたから。
だから、俺は今の幸せをかみしめる。
もう、二度と幸せを失いたくないから…。
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