第十二話 優
落ちていくことは簡単だ。
ただその深く暗い穴に飛び込んでいけばいい。
しかし、上がっていくのは?
どんなに這い上がっても。落ちていく。
どんなに上がっても、上がっても…。
最後には、力尽きて落ちていく。
上がるのは…、難しすぎる。
***
…林間学校一週間前。
…放課後の部活の途中。ふと、声をかけられる。
「蓮―っ。」
急に視界が真っ暗になる。
「うわっ!」
誰かに目を手でふさがれたらしい。
俺はあわててじたばたする。…間抜けだ。
だが、一向にその手は離れない。
「…だーれだっ。」
「……。優だろ。手を離せよ。」
視界が明るくなる。
「あ、怒った?ごめんごめん。急にこんな事して。」
「…まぁ、いつものことだろ。」
「そっか。じゃあこれからも続けるから〜。」
「オイ!!」
こいつは秋津優。同じ陸上部部員だ。
いつもぼーっとしているが、走るときは別だ。とても速い走りを見せてくれる。
こいつはいつも、俺を見つけるとこのような動作をしてくるのだ。
いつものことなのに、引っかかってしまう俺もどうかと思うのだが…。
…まぁ、一言で言えば面白いヤツだ。
「で、何の用だよ。」
「あ、うん。僕、蓮に言いたいことがあって。」
にこにこと笑って優が言う。
優は背中の方で組んでいた腕をはなして、俺のほうへ向かわせる。
そして、あっという間に優の手は俺の肩を捕らえる。
かなり微妙なところで終わらせてしまってすみません(汗)
こんな僕ですが、応援していただけると本当にうれしいです!
よろしくお願いします。