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『俺…子供欲しい…。』
「なに急に(汗」
そんな会話をしたのがつい最近に感じられるほど鮮明に覚えている。
『いや…沙織となら俺は家族ってものになれそうな気がする。』
「そう…。でも順序が…。」
『それはそうだけど…嫌?』
「嫌ではないよ。」
(確かに順序も大事だよな…結婚してるわけじゃないし…)
それは自分でもよくわかっていた。けれど順序を気にしていたら、たぶん一生結婚は出来なかっただろう。
彼女の親には嫌われているのはわかっているし、反対されるのもわかっていた。
結婚ともなれば親との関係は切れないものになるのもわかるし、親戚との付き合いも必然的に出てくる。
しかし…結婚とは本当にそれが大事なのだろうか。
親達の意見や考えも大事だとは思うが、結局は本人達が決めてするものだと思う。
親の賛成や反対は関係ないのではないだろうか。
いつまでも親が子供の面倒を見れるわけじゃない。
順序が普通ならば親はいつかいなくなる。
決して安易な考えで子供が欲しいと思ったわけではない。
確かに結婚や子供となれば生活するのに将来を、先を考えなければならないが、今の時代の人間は収入やお金の事ばかりを気にしすぎていると思う。
お金…収入…それを言われたらこの時点での俺は自信はなかった。
けれど彼女を一生愛するという自信だけはあったし、二人でならどんな困難でも乗り越えていけると思っていた。
世の中、押しも大事なのではと思う。
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それからしばらく経った頃…。
なんと本当に彼女が妊娠した。
子供は天からの授かり物とは言うが、確かにそうだと思う。
作ろうとしても、どんなに子供が欲しくても出来ない人もいるし、望まないのに出来る人もいるだろう。
それは時の運だし、偶然とも言えるかも知れないが、必然や運命とも考えられると俺は思う。
妊娠検査薬で陽性が出た時の彼女の驚きようは今も忘れない。
「ヤス君これー(汗」
そう言って検査薬を見せてきた彼女は複雑と…そして少し嬉しいそうに見えた。
ただ単純に俺はすごく嬉しかったから、そう見えただけかも知れないが。
その後少ししてから彼女本人が母親に直接それを報告した。
その後、父親も知ることになった。
母親の方は戸惑いもあっただろうけど、多少は嬉しそうにしてくれていたが、父親の方は案の定怒りまくりで反対していた。
ただ彼女本人が無理矢理押しきるようにして、入籍結婚する事になった。
(彼女と一緒に幸せになろう…)
そう心の中で呟いた…。
そして、結婚を気に彼女の地元付近に引っ越す事になった。
何度も言うが彼女はその方が楽だろうし、彼女の為を思って決断した。
俺が崩れ去る崩壊の序章の幕開けである。
自分の精神の弱さが俺を崩壊に導いた。




