8
数ヶ月後…
俺の隣に毎日いる彼女の姿がそこにあった。同棲を始めたのである。
彼女の親兄弟にもすでに顔合わせをしていた。
基本的に俺は親兄弟というものの存在が大嫌いだった。
信頼出来る家族という存在がなかった俺にはいくら努力しても、家族愛なんて理解出来るわけもないし、家族というものはいつか必ず裏切り、最終的には結局親は自分自身を守る。
子供が一番大切などと言う大人は、自分が危機に陥った事がないか、または口だけの綺麗事。
そう思って生きてきたし、その考えがこの時に変わっていたわけでもない。
さすがに全否定はしていなかったが、自分の命と子供の命を天秤にかけた場合、子供を迷わず選ぶ親はどれくらいの割合でいるのか疑問に思う。
ただ、これはこの時点での俺だけの考えであり、実際は俺が思うのとは違っているのかも知れない。
自分自身の経験や体験が、そう考えるしかなくなっているのかもと少しは思うし、その感性を他人に押し付けもしない。
ただ親兄弟などを信用していないという事だけ。
俺はひねくれているのかも。
例えひねくれていたとしても、その性格は産まれた時からではないし、親兄弟、または友達などの周りがそう思わせたのは紛れもない事実である。
親嫌い、それは彼女の親とて例外ではない。
ただ初対面のときは俺なりに少しでも気に入ってもらおうと、礼儀正しくしてはいたつもりだし、失礼のないように応対した。
でも、結果的に俺を気に入らなかったようだし、同棲も彼女が強引に踏み切ったと表現した方があっているのだろう…。
家族という存在を否定はしているものの、俺は家族が欲しかったのかも知れない。
本当に信頼出来る家族が…。
それを彼女となら出来ると思っていたし、このまま同棲を続けるならば先を考える事も必要だった。
(出来るだけ…俺が出来るだけ、彼女が楽に過ごせるやり方をしよう…。)
そう思った。
俺がいくら嫌いで、逆にいくら嫌われても彼女からすれば大事な親だろうし、彼女にとっては大切な存在なのだろう。
「私の親戚一同でうちの家系だけまだ孫もいないから、結婚が~とかよく言われてたよ。」
彼女がそう言ったのをよく覚えていた。
実際に彼女との間に子供が出来たら俺はどうするのか…それを時々考えていた。
(やっぱり、親が傍にいた方が子育ては楽になるんだろうな…。姑という姑もいないし、それが彼女にもいい選択なのかも。)
彼女のため。
それしか考えていなかった。
しかし…
この考えと選択が…
全ての悲劇と悪夢の始まりだという事に、俺はまだ気付いていなかった…。
想像を絶する地獄。
転落と奈落の日々がやってこようとは…。
この時から、深い深い暗闇へと俺は落ちはじめていった。




