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それから彼女とは頻繁に会うようになっていた。彼女が俺のマンションに来たり、俺が彼女の地元に行ったり、お互いが行き来していた。
彼女の事は人として大好きだし、一緒にいても苦痛はなく楽で楽しかったのだけれど、それでも恋愛として好きなのか未だにわからずにいた。そして彼女の気持ちも…。
(やっぱり直接聞いてみよう…)
そんなある日の夜、ついに彼女に聞いてみた。
『あのさ…』
「うん?」
『こんな事聞くのも変かも知れないけど…なぜ俺と付き合ったの?いいとこなんてないし、沙織みたいな女性ならもっといくらでもいい出会いがあるはずだし…。』
「あなたは他の人には出来なかった事をしてくれたから…。私の心の中を見てくれたし、私の気持ちや辛さをちゃんと見てくれたからだよ…。」
『そっか。』
「うん。それに、あなたを助けてあげたかった…。あなたの過去を聞いたり知ったりして、辛かっただろうし、私に出来る事ならあなたを救ってあげたいの…。あなたは私にそれと同じ事をしてくれた…。」
(…俺は特に何もしたわけじゃないのに…ただ君が寂しそうな悲しげな瞳をしてるから…。)
そう思ったのだが、よくよく考えてみると他の女性が、彼女以外の女性が同じような瞳をしていたら、俺は同じ気持ちで同じ考えで同じ事をしたのだろうか…。答えは…きっとしていないだろう。
お互いがお互いの何かに惹かれて付き合って、それは言葉では表現出来ない何かなのだと思う。
『あのさ…これから喧嘩もするだろうし、沙織の心や気持ちが俺から離れかける事もあるかも知れない。けどその時これだけ、これ1つだけは必ず覚えてて思い出して…。俺はどんなに大きな喧嘩しようが、沙織の心が俺から離れようが、俺は…俺はいつでも、ずっと一生沙織の事が大好きだし、大切なままだから…。必ず覚えてて思い出して。約束して。』
「うん…わかったよ。」
そう一言彼女は答えた。
顔は普通にしていたが瞳は輝いていた。
「ヤス君?」
『ん?』
「私の事…好き?」
『好きだよ』
「じゃ何があっても大丈夫。私の気持ちは離れたり絶対しないから、大切にしてね…。」
『うん。わかった。』
俺の事を助けたい、救いたい、その彼女の言葉は本気なのがよくわかった。
言葉だけではなく、彼女の瞳や心が本気でそう思ってくれているのが伝わってきた。
産まれて初めての出来事だった。
人の気持ちがここまで伝わってきた事なんてなかった。
(沙織…俺の今の気持ち…助けたい、救いたい、それは俺も一緒だよ。君は大切な存在…これが愛ってやつなのかな…。経験した事がないけど、俺は初めて人を愛してると思う。一生死ぬまで君を想って生きていくよ…例え、君の心が俺から離れても…俺は君しか愛せない。君が大切。)
産まれてから愛情を知らないで生きてきた1人の人間が愛を知った瞬間だった。
「ヤス君…好きだよ。」
『……うん。俺も好き。』
初めて言った。
愛してるという言葉…。
「ヤス君、私は絶対にヤス君から離れたりしないよ。」
『絶対に?本当に絶対に?』
「うん。信用して。」
『うん。わかったよ。』
人を本当に信用した事もない。
人はいつか裏切る。
結局はみんな偽善者。
最後は自分可愛さに他人を捨てる。
そう思って生きてきた。
けれど…
けれど君は…
沙織の事は信じるよ…。
愛してるから…。
沙織を愛してるから。




