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ホテル街に着くと煌めくネオンが街を明るく照らしていた。個人的にはあまりラブホテルというものの雰囲気が好きではなかったため、今までは訪れるのを避けていた。普通のビジネスホテルの方が俺には合っていると思う。街並みに詳しい場所ならきっとそうしていたのだろう。
ホテルの部屋に入室して軽く周りを見渡した。ほとんど入る機会すらなかったので、何があるのかと思いきや、ライトなどがキラキラ光っているくらいで特別変わった部屋でもなかった。
多少疲れも溜まっていたためとりあえずお風呂に入る事にしたのだが、まずは彼女を優先させてあげたかったので彼女が出た後に俺が入った。
このホテルで気に入ったのがこのお風呂とベッドだった。幻想的な空間は結構好きなので、お風呂のライトアップが楽しかったのは覚えている。
ベッドもそこらのビジネスホテルよりも良い物を使っているのだろう。フカフカで気持ちいい感触だった。
何気ない会話の後、ほんの数分考え込む俺。
(いくら交際するとはいえ、さすがに初日から同じベッドはまずいだろうなぁ…仕方ない。ソファーで寝るか。)
その時、彼女が口を開いた。
「え?そこで寝るの?」
『そうだよ。さすがに一緒にはね。』
「私は大丈夫だからこっちで一緒に横になろう?」
また一瞬考えたのたが、彼女自身がそう言ってるのだから構わないだろうと思って、結局一緒にベッドに寝ることになった。
またここでも色々会話をした。
お互いの人生や昔の事。過去の恋愛話や趣味などの話…。
ただ一つ困った事があった。
それは会話しながらも彼女が少しずつ近付いてきていた事。
ついにはピタリと俺の横に張り付いてしまっていた。
(おいおい…マジやばいんですけど…近付きすぎだし、手を絶対に出さないと約束したのに、それはエンジン点火しちゃうよ…。)
だから思わず、、、
『ちょっと近付きすぎ(笑)どうしたの?』
と聞いてしまったくらいだ。
彼女の返事はと言うと、、、
「なんかくっついていたかったの…」
『例の男性の事、悲しい?辛かったりする?』
「ううん」
そう言って彼女は首を横に振った。
「ただヤス君にくっつきたかったの…。」
そう彼女は答えた。顔を隠しぎみにしていたから恐らくは少し照れていたのだろう。
(そっか…なら受け止めてやらなきゃな。彼女の気持ち。今まで男性でも苦労してきたのだろうなぁ。)
そう思って俺は口を開いた。
『だったらもっと近付きなよ。』
そう言って彼女を抱き寄せて抱き締めた。
一瞬の間をおいて彼女はこう言った。
「なんか…すごく…安心する。こうされてると。」
それはいい事だと思ったし、俺も同感で同じ気持ちだった。
(たださ…この状況と状態で、手を絶対に出さない約束を破ってしまいそうなんですけど…いったいどうするよ…。これは男として行くべき?いくら約束したとは言え、彼女自らがくっついてきて今抱き締めあっているのだから…。)
そう思った俺はさっきまで以上に彼女を抱き寄せてその顔を見つめてみた。綺麗な瞳…だが悲しげな瞳…。
(もういいや…俺は彼女と一つに成りたい。)
そう決断し、彼女の瞳を見つめながら彼女の唇に軽くキスをした。
その瞬間にも彼女の胸から心音が響いて伝わってくるのがわかる。同時に彼女も俺の心音がバクバクなのが伝わっていたはずだ。
こんな気持ちで気分が高まるのは初めてだったし、相当彼女に興味があったのだけは間違いない。
そのまま彼女の唇から、徐々に口の中に舌を絡ませて行った。
『ごめん。約束したのに…もう無理かも知れない』
「ううん。いいの。ヤス君の身体…温かい。」
俺は恋をしているのだろうか。またはこれが恋愛というものの感覚なのだろうか。
今までに味わった事のない、なんという気持ちなのだろうか…。
(沙織…君の身体もすごく温かいよ…。)
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結局…彼女を最後まで抱き締めて、最後まで包み込んで、約束を破ってしまった…。
ただこれに関しては後悔もしていないし、今現在でもハッキリ言える。
『君の身体こそ温かかったよ…出来る事なら、出来る事なら君の傍にずっといて包んであげたい。身体だけではなく心から全てを……。』
本気でそう思った…。




