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彼は消えたがっていた。
俺も彼を消したかった。
『先生。どうやったら治療出来るんですか?』
「そうだね。君の話を聞く限りで判断すると、君の頭の中や心が安静になって落ち着けばなくなると思います。君の場合は幸福感や満足感などがそれに当たるのかな。」
『幸福感…ですか。確かに…俺にはない物ですね…。』
「催眠療法なんかも考えられるけど、別人が存在するわけではなさそうだからね。薬も精神安定剤は処方出来るけど、それはあまり効果は期待出来ないと思います。一番はやはり君自身の心の安定かな。」
(心の安定か…。難しいなぁ。)
医者が言うように多重人格ではないのはわかっていた。俺自身の記憶がなくなるわけではないし、彼が行動している時でも、見て触れて考えて、それらをしているのは紛れもなく俺自身なのだ。
ただ制御出来ない別の性格。一度切り替わると自分では止められない。
いや…止める事は出来るのかも知れない。
本気で止めたいと俺が思えば制御出来るのかも知れない。
彼は全て俺のコントロール可にいるのだから。
ただ一度火がついてしまうと制御するのは難しい。
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彼女が出ていき、親兄弟が乗り込んできて、彼女が子供との面会まで無視をし、連絡すら返事がない。
もう彼が出てくるのは必然的だった。
しかも怒りは頂点まで達していた。
彼は容赦はしない。彼を作り出した人間の闇の部分を徹底的につく。
俺自身だとは到底思えないくらいに他人を攻撃する。
あくまで暴力も何もせず、法的に精神を叩くのだ。
それが彼を作り出した理由。
家族、友達、恋人。
それらの裏切りや妬みが彼を作り出した。
彼はそれと同じ事を他人にやってのける。
他人など全て信じない。
全ての他人は敵。
俺がそう思っても、友達を大切にし、必要があれば飛んでいき助けてきた。
しかしそれらの人達は裏切った。
見返りを求めてはいない。
ただ自分が良ければ全て良しの人間達に疲れたのだった。
彼はその報復を全てやってくれる。
今まではそうしてきた。
けれど、彼女には…彼女にそれをやってもいいのだろうか?
そう本気で悩んだ。
でもやらなきゃ彼女はわからないだろう。
それで嫌われようとどうなろうと、彼女には大切な事を教えてあげたい。
世の中想いに勝る物はない。
彼女の親兄弟はお金お金だろうが、彼女にはそうなってほしくない。
産まれてから何年も一緒に過ごした家族なのだから似てくるのは必然的なのだろうが、絶対そうなるとは限らない。
俺は自分の実親とは違う。まったく正反対の性格。
それが良い証拠である。
彼女に大切な物をわかって欲しい。
それを彼女に伝えないと、今度は娘まで同じようになってしまう。
世の中金。金が全て。
そんな娘に育ってほしくはない。
世の中金じゃない。
そんな物は最後には役に立たない。
俺は家計が裕福ではあったが、一度も幸せだと思った事はない。
幸せだと思えたのは、彼女の愛情と優しさ。
それが偽りであったとわかった今もたちきれない想い。
だったら今度は俺が彼女に教える番。
彼女を元の彼女、元の沙織に戻すには俺にしか出来ないはず。
やるしかない。そう思った。
彼女がわかるまで何十年かかったとしても…。
その為にはまずは悪魔との戦い。
あの悪魔を止めない事には始まらない。
悪魔はついに攻撃を開始した。
彼は俺の思いを知って、俺が楽になるようにしてくれる。
その彼を止めたら自分が崩壊してしまうかも知れない。
それは覚悟していた。
毎日見る悪夢。苦しむ俺。
まずはその悪夢をたちきる為に彼は行動を開始したのだった。
同時に俺の身体にも異変が起きていた。
ついに身体が壊れ始めてきていたのだ…。




