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夢の瞳はダイヤモンド~永遠の愛編~  作者: 夢の旅人
彼女との思い出…~幸せへの道~
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この頃からあの悪魔がチラチラと姿を現していたのだろう。彼は何でも出来る。俺とはまったく真逆の存在。

勿論どちらとも俺自身なのではあるし、前述でも述べたのだが記憶がなくなるとか交代するとかの多重人格ではない。


彼は完璧。俺とは違う。

ギャンブルをやれば連戦連勝。過去にはキックボクシングをやり、歌も上手いしドラムまで叩ける。


対して俺は競馬観戦こそ好きなものの、格闘技は上手くないし、歌も下手。ドラム等の楽器も演奏は出来ない。ただピアノの奏でる音色はすごく大好きだ。心が落ち着く。


そんな事から彼に対抗し、ずっとピアノを覚えてやってみたいという願望はあったのだが、未だに機会がなくやっていないという現状である。



彼女が妊娠してから、俺は自分を自分で責めたてるようになっていった。同時に彼がその俺を庇うようにして出てきたのだろう。

それを抑えて制御してくれていたのが沙織だった。いや…むしろずっと彼が表に出ていたのを、彼女が消していてくれたのだ。

彼女と出逢って、彼女が俺の心を落ち着かせてくれた。だから本来の俺がようやく出てこれたのだろう。

俺にはこれと言った取り柄もない。そんな俺でもいいと、彼女はそんな俺を愛してくれた。

その彼女の愛が俺に通じた。偽りの愛だったのかも知れないが俺には確かにそう感じたのだ。

もう悪魔は必要ない。俺の生きる為の防衛本能。それはもう必要なかった。

いつも彼女が俺の背中を押して一緒に歩いてくれるから。

だから俺は本来の俺自身の心で彼女の手を取り、引っ張っていく。 そう思えた。



徐々に消えていく悪魔の存在。

だが彼女の妊娠を切っ掛けに俺の精神は歪みはじめ、揺さぶられる事となる。


妊娠してから彼女の親もそれを知り、色々聞かれるだろうなとは覚悟していたし、俺もなるべく俺自身の事や過去の事を偽りなく話そうと思っていた。


予想していた通りに色々聞かれたのだが、ここから彼女の親に対する不信感が芽生え始めたのだった。


彼女の母親に色々質問された。勿論あくまで母親を通してであって、父親などの質問も含まれてはいたのだろう。


俺は過去を嘘を言わずに全て語った。

親とほとんど絶縁し1人で生きてきた過去や、またその理由、現在に至るまでの流れ等。


それに対し質問された内容に俺は愕然とし、深く深く傷付いた。


実父が酒乱だったので俺もそうなのではないか?

正社員で仕事しないと生活は出来ないのではないか?

前妻との離婚の理由は何か?

その時の子供に将来財産を取られるのではないか?


俺には前妻がいた。

確かにその破局の原因は話すのが俺にとっての誠意だし、聞かれるのはわかるし納得もした。

前妻とは向こう側の親依存とお金遣いの荒らさだと答えた。

唯一言わなかったのが、愛情がなかったのに子供が出来たから流れで結婚してしまったという事。

それを言ってしまったら、彼女も、沙織とも同じ理由だと思われてしまう。

勿論それは絶対にない。沙織の事は永遠に愛すると決めて、自分自身に誓ったのだから。


ここまでは良しとしよう。

けれど他の質問はそうはいかない。

当たり前だが文句などは言っていないし、あくまで俺の心の中では深く傷付いた。


実父が酒乱だから息子の俺も酒乱だと疑わないで欲しかった。

父親は反面教師。

俺は父親などと思ってはいないし、その父親が大嫌いだからお酒は飲まない。

忘年会や飲み会などで付き合いで飲む事はあるが、いくら酔っても乱暴にはならないし、ましてや暴力なんて絶対にしない。


仕事も確かに安定した正社員を求めるのはわかる。けれど正社員じゃなくても、ここまで俺が仕事をして生きてきたのは事実だし、贅沢な生活はさせてやれないだろうが自分が出来る収入は頑張って稼ぐつもりだった。

しかしこの質問が心に引っ掛かり、出来るだけ彼女の親に認めてもらえるようにしようと方向性を変えたのが、後に深い深い傷跡になる事となった。


さらに前妻との子供は確かに俺が亡くなった場合、遺産相続の権利は法的にはあるのだろうし、彼女の親からしてみたらまったくの無関係な子供なのだから気になるのは当たり前なのだろう。

だが、それをあえて聞くのは人としてどうなのだろうか?

無関係な子供でも、そこは気を遣う所だと俺は思う。少なくとも俺なら聞かないだろう。

あちらはあちらで再婚相手も見つかり、もう俺とは関わる事もない。



その他にも散々聞かれたのだが、いくら結婚するとはいえ聞いてはいけない事、聞かない方がいい事も人としてあるのではないだろうか。

ましてや酒乱などと疑われる事は俺には辛すぎた。


一度出来た溝はそう簡単には埋まらない。

その溝の一番最初のヒビがこの時に入ってしまったのだろう…。


「私、結婚する人とは家族や親戚と仲良くして欲しいの。」

彼女がそう言っていたのを覚えている。

それも何度か言っていた。



俺だって仲良くしたいよ…。

だけどさ沙織…。

そうするには俺だけじゃなくて…。

相手側の気持ちや態度も必要だよ…。


聞いてはいけない、言ってはいけない禁句も…

世の中にはあるんだよ…


特に俺には…。

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