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『単刀直入に言うよ。俺じゃダメ?』
そう…少し遠回しの告白。女性に告白したのは初めての事だった。その告白をしてからまだ数年しか経っていないが、随分と長い年月が過ぎたような感覚だ。
自分の中ではすごく酷い人生を歩んできたつもりだし、恋や恋愛などとはかけ離れ、自分の人生には無縁なもの…そう思っていた。彼女と出逢うまでは…。
恋を抱く事に憧れはあったが、どうしても人を好きになれない自分。その自分の存在すら意味のないものだし、生きている理由すら考えて探してしまうほどだった。全てを諦めて、ただただ意味もなく生きている自分。桜満開の春が訪れて、暑い夏が過ぎ、紅葉が色づく秋が終わり、厳しい寒さがやって来たと思えば、気付けばまた春になっている。毎日毎日同じような日々をただ消化し、年齢だけが増えていく自分。つまらない人生…。まるで作業でもしているような感覚…。
そんな俺に初恋が突然訪れたのは、今から数年前の出来事だった。
普通はみんな子供の頃に初恋を経験するらしいけど、俺の初恋は27歳。他の人に比べれば遅すぎるくらいだろう。
彼女と出逢った時から現在に至るまでの出来事や言葉、何気ない会話の一辺まで鮮明に覚えている。
愛だの友情だのと言う言葉をまったく受け入れないで生きてきた俺に初めて愛を教えてくれた女性。
沙織…。彼女の名前である。名前を知った時、初めて出逢った時、初めて会話した時、その全ての仕草や行動に何かを感じていた…。
もし運命ってものが存在するのなら、これがそれなのではないだろうか。
初めはただの恋愛相談にのっていただけ。ただ気付いた時には興味はあったのかも知れない。
『じゃあさ、もし君が5年後…フリーだったら俺が貰ってやるよ。』
ある日、そんなメールをしてみた。
彼女から返ってきた返信は、、、
「なんか上から目線ね。その気がないのにそんな事言っちゃダメだよ。」
(いや…本当に真面目に言ってるんだけどなぁ…)
『いや…こっちにその気があっても、君はその気なんてないだろうから、逆でしょ。』
「はいはい(笑)私はその気がないなんて言ってないじゃない。その気がないのはあなたなんだから冗談は言わないの」
『あぁーー。もう単刀直入に言うよ。俺じゃダメ?』
「本気で言ってるの?…ダメじゃないよ……。ただあなたの事をまだよくわかってないし…。」
『じゃ二人でデートしようよ?ご飯でも行こう』
こんな感じの流れが俺の初告白だった。いつもはグループで遊びに行く事しかなかったから、確かに俺の事をまだ完全にわかるわけがないし、彼女の言う事も一理あった。
俺もこの時は愛してるなんて感情はなかったし、それなのに遠回しに告白なんてしたのはまずかったのかも知れない。直感?ってやつなのだろうか。愛情どころか恋すらした事がなかった俺は、自分の感情さえわかっていなかったが、彼女に興味があった。ただそれだけで軽はずみな発言だった気もする
が、彼女が特別な存在になりかけていたのは間違いなかったのだ…。
彼女はどういう感情だったのだろう…。
「私にその気があっても」
この発言から考えると、彼女も俺を少しは意識していたという事なのだろうか。
まだこの時はこれから先、まさか俺の中で永遠の愛というものが芽生えるとは思ってもみなかった。




