15
「離婚してください。」
そう言って頭を下げる彼女。
『嫌です。』
そう答える俺。
(こいつ…何を考えてるんだよ。俺がもし自分の親だったら絶対止めてる。黙って、何も言えなくて、自分も、自分の親や兄弟も明らかに正しいと思ってるのか…少しは自分の非も認めたらどうなんだよ)
『お前の兄貴は言う権利がない事まで俺に言ったよ。おかしいと思わないの?少しも?』
「……。」
『お前が俺の兄弟に子育てまで口を出されたらどう思うよ?それにお前の兄貴は他にもおかしい事を言った。』
「……。」
そう彼女の兄は他にもブツブツと言っていた。
結婚してから2年半もたったのだから信頼関係を築けなかったのは俺が悪いと。
それが2年半もあれば信頼関係を築くのには十分だと。
『確かに2年半たった。付き合い始めた時からならもっと。でもおかしくないか?夫婦なんて何十年もかけて信頼をやっと築くものじゃないのか?逆に考えれば、まだたった2年半だぞ。』
(2年半で信頼を築けるなら誰も苦労したりしないわ。それが出来るのなら世の中幸せ者だらけになってるわ。怒)
「……。」
「あなたは一体何をしたいの?どうしたいの?」
(そんな事を聞くのかよ…。)
『俺はお前も子供も愛してるから別れるつもりはない。』
(何を言ってるの俺は。もうこんな最低な女の事なんて忘れろよ。敵なんだよ敵。)
そう悪魔が心の中で囁いた。
『でもお前の考えも、気持ちもわかったよ。俺を救いたいなんてよく言えたな?俺が自分なりに一生懸命選んでプレゼントしたネックレス。引きちぎれよ。』
彼女は一瞬だけ躊躇したように見えたが、すぐにネックレスを引きちぎった。
まぁ、この人なら絶対にやると思っていた。
『写真、あの写真も破れ。2枚とも。』
ずっと写真が嫌いだった俺が唯一好きになれた写真がある。
俺が始めて幸せに写れた写真…。
しかし彼女は写真を破らなかった。
(憎い俺が一番幸せの笑顔で写れた写真など破けばいいのに。子供も一緒に写ってるからか?)
「もういくね…。待たせちゃ悪いし。」
『あぁ。好きにすれば。』
彼女を玄関まで一応見送った。
(とっとと捨てろよこんな女。)
あの悪魔がずっと囁いている。
『俺は愛してるから。ずっと愛してると言った。それだけは絶対に否定出来ない。自分自身でも否定するのは無理だ。』
彼女は少しだけ涙していた。
俺が素直に従わないのが余程嫌だったのだろう。
俺の方は自然に涙していた。
(二度と感情は表に出さないようにしていた…哀しみの感情だけは。あの悪魔が、あいつが行動したらもう止められないから…。それに…泣いていたらここまで生きてこれなかった…)
そう思いながらも涙だけがどんどん溢れてくる。
こんな風になりたくて彼女と付き合い、結婚したわけじゃない…。
現在の状況…。
彼女の豹変…。
俺なりに頑張ってきた努力…。
大好きな子供…。
そして…未だに愛してる彼女…。
全ての感情が崩壊していくのがわかった。涙を堪えきれなかった。
そうして彼女は出ていった。




