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「今日、実家に泊まるね」
そんなメールがきた。とある日の出来事である。
(はぁ?先々週4泊、先週3泊、今週は2泊目だぞ。お前それはもはや実家って表現は間違いだろ。ほとんど自宅と一緒じゃないか。ここと実家。すでにどちらが自宅かわからないだろ。怒)
本気でプッツンときてしまった俺は彼女に電話をした。
「もしもし。」
『お前さぁ。いったい月に何日実家に行って、月に何日泊まるわけ?ありえないだろ。』
「あなたが一緒に今日出掛ける予定だったのに身体起こす気配がないからでしょ。」
と逆ギレされた。
確かに俺は約束通りの行動は取らなかった。それは俺にも非があるだろう。それはわかる。
でもここ最近の悪夢や身体の調子もあり、睡眠が不規則になっていた俺はどうしても身体を起こせなかったのだ。
それにそれが理由で実家に泊まるというのはおかしいのではないだろうか。
『あぁ、もうわかったわ。そんなに実家が好きなら今すぐ実家に戻れ。ここにある家電から何から何まで全部持って大好きな実家にいけよ。今すぐ全部取りに来い。怒』
「今すぐなんて無理だよ。」
(あぁ、否定するのはそこですか。じゃ今すぐじゃなければそれでいいんだ?)
さらにプッツンキレてしまった。
『もうお前じゃ話にならない。親に代われ。早くしろ。』
そう言って彼女の父親に電話を代わらせた。
「もしもし?」
『あ、お父さんですか。あのですね、沙織さん実家が大好きでこの家は嫌みたいなので、とりあえず服だけでも取りに来て、出ていってもらえるように言ってもらえます?』
「え?ん?それはどういう事でしょう?」
『ですから、沙織さんはここに帰ってくるよりも、御実家が大好きらしいので。ハッキリ言いますが沙織さん実家依存症ですよ?ちょっと普通ではありえないです。』
「あぁ、そうなんですか?」
(そうなんですか?じゃないわ。普通の親なら気付くだろ。)
電話を終えた俺は彼女が服を取りに来るのを待っていた。しばらくしてから取りに来た彼女。
ここまでは良かったのだが、なんと父親も一緒に連れてきた。
(なんで二人でくるんだよ怒。俺は沙織さんに服だけでも今から取りに来いと説得しろと頼んだだけなんだが。)
無言で色々部屋の中を整理して、服以外の物もある程度二人で持っていき、この日は終えた。
さらに次の日、なんと兄まで連れて3人で家の物のほとんど全てを持っていった。
(持っていくのは構わないのだが、俺に言う事がお邪魔しますとお邪魔しましたの二言だけかよ。何考えてんだろこの親。普通なら色々聞いてきたりするんじゃね?それとも何も聞く必要すらないって事かよ。怒)
そう思った。
嫌われてはいるものの相手は娘の夫。こうなった原因や理由すら聞かないのはどうなのだろうか。
俺は彼女に離婚届けを書かせて、彼女を見送った。
「子供に会わなくていいの?」
『いいよ。いいから早くいけよ。』
本当は子供の顔を見たかった。
けれどこのような結果になったのは俺と彼女二人の責任。
俺自身があの大嫌いな実親からされた事を、俺自身がしようとしている。
申し訳なくて子供に会わせる顔がない。
永遠の愛…
ずっと、一生彼女を愛すると誓った。
俺がそれを決断するという事、人を愛するという事、『愛してるよ』と発言する事。
愛してるよと想う事。
それは彼女が考えているよりも遥かに重い。
俺が…そう決断した以上、それを否定する事は死ぬまでないだろう。
そう…永遠に。
それだけの気持ちがあるのだから子供にたいする想いも尋常ではなかった。
そんな子供の顔を見れるような状態ではなかったし、子供にごめんと謝る事しか出来ない…。
顔を見たくても、俺が見せれる状況ではなかった。
後日、離婚届けを役所に提出に向かったのだが、役所の周辺をうろうろするだけの俺がいた。
出したくても、後一歩のところで踏みとどまってしまう自分。
(あぁ…やっぱり無理なのかな…。別れてしまったら…離婚してしまったら…。沙織にたいする想いは出会った当時と今もまったく同じ…後悔してしまう自分になる事をわかってるんだよ…俺は。)
何日か通ったが結局…
出せなかった。
だって…
(沙織を愛してるんだから…。)
出せるはずもなかったのだ…。
この事が数日後…
あの悪魔を甦らせる事になる…。




