プロローグ
すみません。再開するのに随分間が開いてしまいました……
後日談なので、オチはまだ決まっていません。
「――と、いう事なんだ。是非とも君の許可が欲しいんだけど」
「そう……」
その申請に。
彼女は顎に軽く握った右手を当て、しばらくの間考え込んだ。
理由は、きちんと順序立てて彼は説明してくれた。
若干――特に政治面を考えた場合、もしもの際、彼女の許可がある事を彼から明言されてしまうと、非常にマズイ事になる。
しかし、彼は無断で実行する事なく、彼女の許可を取りに来ているのだ。
あっさりと却下しにくい。
「……許すとしたら条件付きになるけど、それでも構わない?」
「君に迷惑はかけないと誓うよ。可能性はかなり低いと思うけど、もしも仮に露見しても、君や一族には無断で実行したと証言する」
彼女が安易に許可出来ないと、事前に理解していたらしく、彼は神妙な顔できっぱりと言い切った。
「そう……先に言っておくけど、貴方のしようとしている事は犯罪。理由や行動はどうあれ、犯罪は犯罪。捕まれば確実に殺されるでしょう。それは、ちゃんと分かっているわね?」
「ああ。でも、俺は……実際に体験した。自分は無事に逃れられたからと言って、忘れたふりをするのは、見過ごす事は出来そうにない」
感情を押し殺したような低い声でそう呟き、目を伏せて、ゆるゆると彼は首を振る。
再び、彼女に向けられた眼差しは酷く静かに凪いでいて。
彼の覚悟の強さを、まざまざと見せつけていた。
反対しても無駄だろう。
彼女はそう判断し、大きく溜め息をついた。
「…………覚悟出来ているのなら、私から忠告しても無駄ね。分かったわ。申請を認めてあげる」
認められなかったら、彼は他で何とかしようとを模索するだろう。
その手段は、この申請が許可された場合よりも格段に危ない橋を渡る事になる。
そして、彼はその事を理解していた。
そうでなかったら――申請しなくても何とかなるなら、計画も今後の展望も含めて彼女に語らない。
ほっと安堵の表情を見せる彼を、彼女はじっと見据えた。
「許可の条件は2つ。1つは貴方も理解しているように、これは私の黙認であって正式な許可ではないという事。露見した場合、私や貴方の一族以外にも迷惑をかける事になるから。もう1つは――」
もう1つを聞いて、彼は顔を引き攣らせた。
2つ目の条件は、事前に予想もしていなかったらしい。
彼女が理由を続けると、彼は生ぬるい眼差しで彼女を見返した。
しばし、無言で考え込んでいたものの、彼は許可が降りる事を優先したようで。
困ったような顔をしていたものの、結局は首を縦に振った。
「……分かったよ。その条件を呑む。じゃあ、機会があればまた……」
「ええ。またね」
展開はある程度決めましたが、更新はのんびり行おうと思います。
読んで下さった方、ありがとうございます