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姫将軍と世界の楔  作者: 朔夜
本編
41/59

第三十七話 ずれた伝承

遅くなりました!!

投稿したら寝ます。

相変わらず、タイトルが決まらない……(TwT)


今日は仲間内の忘年会に出てました。

作者は酒の匂いだけで気持ち悪くなる下戸なので、呑んでません。



「フィアセレス様。質問があるのですが、今よろしいですか?」


 イーシャとラムザアースが遺跡の外まで転移して、待つ事数十分。

 遺跡の出入り口から姿を現したカタストロフ、フィアセレスとも無事合流した。


 さすがに、数十分も延々と階段を上ってくるのに疲れたのだろう。

 いささか生彩を欠いた様子のフィアセレスは、閉じられた切り株型出入り口に腰を下ろした。


「質問? 私にですか?」


 イーシャは大きく頷いて見せた。


「はい。重要な事なのです」


 イーシャの言う『重要』な事に思い至らなかったのか。

 フィアセレスは訝しげな眼差しを彼女に向けたものの、ややあって頷き返した。


「それはなんでしょう?」

「ルビエラの事です」


 ルビエラが火の王だとイーシャが知ったのは、フィアセレスが教えてくれたからだ。

 『紅の刃』には火の王が宿っている――そう、彼女は口にした。

 伝承からだと言っていたが、誰に聞いたのか。

 イーシャは、それが気にかかった。


 ディアマス王家からではない。

 それは確かだ。


 前の所持者である炎滅王ヴィルリドは、『紅の刃』に火の高位精霊が宿っている事しか周囲に教えていない。 

 公私の記録媒体のどちらにも残っていない点から、彼女の名前すら他者に話していなかった事が分かる。

 イーシャが封印を解いた当時のルビエラの様子からして、彼女自身が契約者以外に名前を呼ばれる事を忌避していた節があり、この点は何とか理解可能だ。


 しかし、当時の情勢を考えると、火の王との契約は隠す必要がない。

 むしろ、大々的に広めた方が良い状況下である。


 炎滅王は火力こそ滅法めっぽう強いが、虚弱体質であったために体力が無かった。それもあって短期決戦に持ち込むべく、敵に容赦のない戦略を多用。

 より早く相手を降伏に持ち込むため、敵を脅すのに良い手立てがあったなら、躊躇なく利用するような性格だったようだ。

 隠す理由など、何処にも無い。

 この事から、ヴィルリド自身、ルビエラが火の王だとは知らなかった可能性が非常に高かった。


 そして『紅の刃』は、火山の噴火で岩肌が崩れ落ち、マグマ層と洞窟が繋がる事で発見されるに至った。

 古くから地元に伝えられ、民間伝承になっていたような秘宝の類ではない。

 まして、発見地から遠いバテユイ樹海に住まう森の民に伝えられているにしては、繋がりが無さ過ぎる。


「貴女は以前私に、『紅の刃』に火の王が宿っていると聞いていた――とおっしゃいましたね。誰からお聞きになったのですか?」


 フィアセレスは怪訝そうな様子を崩さなかった。


「以前も伝えた気がしますが、伝承です。代々エルフの長に口伝で教えられるものですよ」


 しばし、エルフ族長を観察してみたものの、イーシャの眼には偽っているように見えなかった。


「……そうですか」


 イーシャは、眉間に皺を寄せた。

 

 お膳立てした者がいる。


 考えれば考えるほど、わざわざ森の民達に、伝承として情報を残した者が居るとしか考えられない。

 カタストロフの時のように、エーリスかもしれないし、他の光の民かもしれないが、手のひらで踊らされている感じがして軽い苛立ちが湧く。


「それでは、他に何かへ精霊王が封じられたという話は聞いた事がありますか?」

「いいえ。それはありません。ですが、どの属性の精霊王も久しく世界に現れていないと、言うような事柄は耳にした覚えがあります」


 実際、アクエリオスは『蒼の閃』に封じられていたのだ。

 封じられているのは火と水だけであるとは、決して言い切れない。


 イーシャはフィアセレスに礼を言うと、遺跡の隠し部屋で遭った状況をその場で説明した。


 フィアセレスとカタストロフ二人ともが、精霊王がアルウェスの再封印に利用される可能性が高い事を聞いて、不愉快そうな様子へと変わる。


 ルビエラが、意図的に記憶を忘却されているような節があると告げると、フィアセレスは殺気だった。


「奴等ならやりかねないな」


 カタストロフは、そう嫌な保証をしてくれた。


邪竜王ティアマトアルウェスを相手にしていた影響で、精霊王への敬意なんて麻痺しててもおかしくない。あいつらは過剰な魔素に精神を侵されなくても、この世界を守っているのは光の民アルヴじぶんたちだという強烈な自負があった。だから、自らを神などと名乗るほど傲慢ごうまんになれたんだろう。

 効率だけ考えて、世界の一部である精霊王達を利用しようとしても、なんら不思議はないな」


「そう……さっきも言ったけど、現状では打てる手立てはないから、王城に帰還しようと思うのよ」


 イーシャの言葉に、カタストロフは黙したままのラムザアースの方へ顔を向けた。


「ラズ。お前も、イーシャと同じ考えか?」

「ええ、私も同意見です。カタストロフ殿。

 現時点では、『何か』足り無い様子でした。『紅の刃』に反応を起こしても、新たな術式は作動する気配はカケラも在りませんでしたし、水の王に意見を求めるにしろ一旦帰還すべきだと考えます」

「……分かった。お前達の意見通り、帰ろう」


 カタストロフは、気の進まない様子であったものの、ようやく頷いた。


 自分で現場を確認していないのだから、気にかかるのも無理はない。

 そもそも、何故イーシャに同調しなかったのか、謎だ。

 封印の何らかの影響で同調出来ないのなら、ルビエラだってその対象だったはずである。

 彼女が来れて、カタストロフが来れないわけがない。

 

 他になにか理由があるのだろうか。


 重要ならば、彼の方から言ってくる。

 そう判断を下し、イーシャは首を捻るのを止めた。

 まだ憤慨している様子のフィアセレスに協力の礼を言う。

 そして、イーシャ自身は魔力の消耗が激しかったので、ラムザアースに王城までの転移を頼んだ。





 ディアマス王城に帰還するとオーウェンが、単身レスクに謁見をしていた。


 命じられて、帰還を待っていたのだろう。

 儀式室にいたシウスに、すぐさまレスクからの伝言を伝えられ、謁見の間に呼び出されたラムザアースとはそこで別れた。


 王立図書館とは正反対の区域には、各民族長の宿泊施設がある。


 元々は他国向けの迎賓館だったその白い石造りの建物は、四階建てで、下に行くほど間取りが広く、上に行くほど狭い。

 正面から見ると、三角形を思わす建物だ。

 一階は火の民と大地の民、二階は水の民と獣の民、三階は森の民と闇の民、四階全てが風の民の私用となっている。

 この間取りはディアマス側は一切関与せず、七つの民の族長達の話し合いの元に決定した。

 現在まで、この間取りについて誰からも文句は上がっていない。


 全職員は、ヒト嫌いの気がある水の民と闇の民を考慮し、獣の民で構成されている。

 

「お久しぶりです。氷魔王カタストロフ様。貴方様が御望みになられたように、しもべたる我等闇の民サレはディアマス王国と再度の盟約を結びました」


 職員の兎耳のバーン男性に案内され、使用中の室内に入るや否や、オーウェンはそう言って、カタストロフの足下にひざまずいた。

 イーシャと職員の事は視界どころか意識にも入っていないようで、真っ直ぐカタストロフだけを見ている。


 イーシャは下がるように動作だけで命じ、職員を退室させた。


 うかつに声に出して、オーウェンを刺激したらマズイ。

 そう感じるほど、イーシャから見て闇の民族長の眼差しは外野の存在を無視し、熱を帯びてカタストロフを見つめていたのである。


「……重度の魔素中毒を起こしている者を連れて来いと言ったはずだが、まあいい」


 カタストロフは溜め息を吐くと、一番近いカウチまで歩いて行き、腰を下ろした。


「オーウェン。立て。俺は今も昔も、お前達サレを支配する気などない。今回は、俺の利害とお前達の主張が反した。命ずるのではなく、注意するつもりであの手紙を出しただけだ」


 面倒事が嫌いなカタストロフらしい主張に、オーウェンはシュンと肩を落とし、残念そうな表情を浮かべた。

 命ずるつもりはないと言っているし、本人も実際そのつもりではなさそうであるが、彼の態度は明らかに上から目線だ。


 一度、ハッキリ教えてやった方がカタストロフのためなのかもしれない。

 余計な誤解を招かないためにも。


 でも、すで偉そうじゃないクーって、気持ち悪いかも。

 イーシャは口に出せば、室内の男性二人両方から怒られそうな事を考えていた。


 そっと、オーウェンの視界に入らないように移動する。

 カタストロフからほど近い、猫足の一人掛けソファーに腰かけ、イーシャは状況を見守る事にした。


「ディアマスの国王から、俺が封じられていた本当の理由を聞いたか?」

「いいえ」


 ゆっくり立ち上がると、オーウェンはカタストロフの傍にある椅子に腰を下ろした。

 当初傍まで行って、立ったままでいるか迷ったようだったが、目の前の麗人から手振りで座るよう指示が出ていたせいか、実に居心地悪そうな様子で座っている。


「私は、貴方様の手紙で決まった闇の民の総意をレスクに伝えた後、一刻も早く報告を申し上げるべく自去いたしました」


 つまり、カタストロフに会う事を優先するあまり、ディアマス側とは必要以上の話を全くしていないと言う事であるらしい。


 カタストロフは片手で髪で隠れた額の部分を抑えると、溜め息混じりにアルウェスについての説明を始めた。




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