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実際有り得ないような展開があります。作者が未熟ですので御了承ください。また、誤字脱字等もありましたら、感想の悪い点などに書いて頂けると幸いです。

『この学校の生徒が行方不明になった』

6月2日、学校内はこの噂で持ち切りだった。

『誘拐されたんだよ』

『拉致だ、拉致』

根も葉もない噂が独り歩きし、みんなが浮き足立った表情だった。

 この吉田町は、小さい町だ。そんな小さな事件だって、この町じゃ、かなり珍しい。

 小学生が盛り上がるのも、仕方のないことなのだろう。

 でも、春川(はるかわ)橙子(とうこ)達は別格だった。ゴシップ好きの6年2組のなかで、少し違う色味のある4人組だ。

「いなくなったのは2年2組の(あずま)海花(うみか)ちゃんと、その両親。一家揃って行方不明だって。身の回りの物が一緒になくなってるから、夜逃げだろうってさ」

橙子は冷静に、さらりと言ってのけた。

「へぇ~!おもしろーい♪」

更井(さらい)翠夏(すいか)は手を叩いて橙子をはやし立てた。

すると三堀(みほり)紅也(こうや)が呆れ声で言った。

「バッカじゃねーの?サライ。トーコはただ、親父さんから聞いたことそのまま言ってるだけだよ」

「そうそう、お前トーコと何年友達やってるんだよ。いい加減分かれっての」

塩見(しおみ)碧次(へきじ)も相槌を打った。

 橙子の父は警察官だ。腕利きの刑事ということだが、平和な田舎の警察。仕事なんて無いに等しいくらいだろう。

 橙子も、そこは理解しているので、暇つぶしの相手にと、放課後はよく署に寄り道している。

「トーコ、昨日も吉田署に寄ってったから、そこできいてきたんだろ?」

 碧次はズバリ指摘しつつ、翠夏の髪を数本掴んで極細の三つ編みにしていく。その手つきがあまりに丁寧で、かつ素早いので、思わず見とれてしまいそうだ。

 ただ橙子は、せっかく持ってきた情報を、『それが何?』と流されてしまったので、面白くなさそうだ。

「それよりさ、俺、ユウからそのウミカちゃんの情報きいてきた」

 碧次は2年の谷村(たにむら)(ゆう)と仲がいい。

優の母親はシングルマザーで、優のことを溺愛している。そのため同学年の悪童と遊ばせてもらえなく、一見真面目そうな碧次が数少ない友のひとりというわけだ。昼休みにはよく、6-2に遊びに来るのだが、今日は来ていない。身体が弱く、学校もよく休むので、今日も休んでいるのかも知れない。

 碧次は手先を高速で動かしつつ、唇も自慢げにまわし始めた。

「そのウミカちゃん、ユウの大親友なんだってよ。ユウの奴、親に秘密でその子と遊んだりしてるらい。家が貧乏だし、最近父親が失業したらしいから、夜逃げってのは十分有り得る。ユウも、相当心配してた」

 翠夏は、橙子と碧次がいつも張り合っているのを知っているので、話題を変えようと試みた。碧次の三つ編みも、されている本人は見えなくて暇だから。

「ヘキは相変わらず髪いじるの好きだね」

「話、変えんなっての」

あっさり言われてしまって、翠夏はむくれた。その間にも、三つ編みの束はどんどん増えていく。

「ほかには?その海花ちゃんって子の情報、ほかにある?」

紅也が、翠夏よりも数段うまく話を切り返した。

 かと思われたが・・・

「俺はもうない。興味深々って感じ悪いだろうし」

「あとは知らない。あんまりその話に喰いつくと変に思われそうだったから」

「だよなー。トーコ、隠し事がすぐに顔に出るからな」

「は?ウザー。四六時中ヒト騙してるヘキに言われたくないし」

・・・逆に空気悪くしただけだった。

橙子はくせっ毛の先を眺め、碧次は三つ編みを編み続け、紅也は居心地悪そうに窓の外を見た。

 何この空気・・・。翠夏は思わず、教室の窓を開け、換気をしたくなった。でも、いくら風を室内に入れても、四人の空気は流れそうに無い。

 なんで、こんなに仲の悪い4人が、いつも一緒にいるんだろう。

 そのうちの1人でありながら、翠夏は疑問に思ってしまった。

 まぁ、分からなくも無い部分はある。翠夏は、橙子がいるから自分もいる。紅也も、碧次がいるから一緒にいる。

 ただ、それだと最大の疑問が残る。なんで、橙子と碧次は一緒にいるわけ??不思議でならない・・・。

 



 結局、どんよりした空気のまま、昼休みは終わり、5・6限も淡々と進んでいった。

 放課後、碧次は急に言い出した。

「トーコ、サライ、今日二人で吉田署行って情報もらってきて」

「は?何言ってんの?」

橙子は唖然とした。昼休みのあの空気はどうしたの?ゴメンの一言もなく、まるでなかったことみたいに。

「だって、色々気になるし」

碧次はケロリと言ってのけた。なんつう図々しさ・・・!

「自分で行きなよ」

「命令すんな」

「そっちがな」

 ああもう!またかよ・・・。紅也は碧次のランドセルを引っ張った。

「ごめん、サライ。今日はトーコと二人で帰って。ホラ、行くぞ、ヘキ」

紅也は碧次を連れて、足早に去って行った。

「バイバイ、コーヤ!」

翠夏はその後ろ姿に手を振った。紅也、大変そうだな、と思った。

「じゃ、帰ろっか。吉田署行く?」

「いや。行かない!」

橙子は、碧次の態度に憤然として言った。

 自分も、もしかしたら紅也と同じくらい疲れた顔をしてるのかもしれない。今日は早く帰ってゆっくり休もうかな。翠夏はそう考えた。

 翠夏達は結局、吉田署には行かずにまっすぐ帰宅した。

 夕方、翠夏が風呂に入っている間にケータイに着信があった。碧次からだった。用件はなんとなく察しがついたので、かけ直さなかった。すると22時頃にはメールが来た。

『吉田署、行ったか?』

翠夏はそれにも返信しないで、早めに眠りについた。

 夢の中で紅也が自分から離れていく光景を観て、なぜか悲しくなった。

 へんなの。別に紅也のことが好きなワケでもないのに・・・。好きなのは、卒業した沢村先輩なのに・・・。

見た目重視の翠夏にとって、丸坊主のチビの紅也なんて論外だった。



 



 6月3日、翠夏は寝坊したので、親に車で学校まで送ってもらった。教室に駆け込むと、なんと橙子が来ていなかった。あの橙子が。

 翠夏は不思議そうに席に着くと、紅也と碧次が近寄って来た。

 紅也が震えを抑えるように低い声で言った。

「昨日、吉田署行かなかったんだな。・・・?」

「え、っと・・・うん」

「じゃ、お前、新しい噂も知らねぇんだな?」

「新しい噂???」

そういえばクラスの皆は教室のあちこちに輪をつくり、昨日にも増して深刻そうな、それでいて半分面白そうな表情で噂話っぽいのをしている。

「何?噂って・・・」

翠夏がそうきくと、紅也は少し躊躇する素振りを見せた。

 すると碧次が、昨日の橙子のように、さらっと言ってしまった。

「死んだんだよ。夜逃げしてた、東海花ちゃんが」

そして感情の無い声で、さらに言葉を次ぐ。

「ユウと一緒にな・・・」








 橙子は、3時間目でやっと来た。大遅刻だ。

「トーコ!お前何やってんだよ!!ユウとウミカちゃんが・・・」

紅也はハッと口をつぐんだ。

 橙子は、分かってる、という顔をした。そして、手に持っていたコンビニの袋を碧次に突きつけた。

「見て」

昨日のことにはまだ怒ってるみたいだ。碧次も無言のまま受け取って、中身をとりだした。

 中に入ってたのは、コピー用紙の束だった。

「これ・・・」

碧次は唖然とした。

「これ、捜査内容のコピー?」

「そう。父さんの手帳盗んでコンビニでコピーしてきた」

橙子はそう言ってピースサインをした。碧次も今日初めて、ほんの少しだけ笑った。

「・・・ただこれ、手帳全部コピッたから、関係ない情報とかいっぱいあるの。次の4限、国語でしょ?あの先生ならバレなそうだから、国語の授業中に大事な情報だけまとめよ」

橙子はそう言って、紙の束を4つに均等に分けた。

「ちょ、どういう意味?」

翠夏は混乱してきた。何で?何でこんな、一生懸命なの?警察の捜査情報盗んだり、授業中に調べたり。

「トーコ、急にどうしたの?」

 すると橙子は思い詰めた表情になった。

「トーコ・・・?」

橙子は、紙の束を握りしめながらいった。

「警察は、ただの事故として、処理するつもりなの・・・。そんなはずないのに。父さんだって気付いてるはずなのに・・・。」

いつもの高い声じゃなくて、本当にブチ切れたときの低い声だった。

「お前・・・」

碧次は下唇をかみ締めた。まだ、親父さんを許せないんだな。

「とにかく!」

橙子はパッと顔を上げて、いつもの調子で言った。

「ただの事故なワケないんだから、警察が事故として処理しちゃう前に証拠出して、きちんと捜査させる!絶対にこのまま終わらせたりなんかしない」

 橙子は、一度決めると絶対に諦めない質だ。

 チャイムが鳴った。

「じゃ、これよろしく」

 3人は、橙子から紙束を押し付けられ、同時にため息をつく。

 橙子は本当に、人使いが荒い質だ・・・。

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