本当にお馬鹿さんですね
「本当にお馬鹿さんですね、皆さん。あまりにも簡単に策にかかってくれるとは、拍子抜けですよ。それとも、ご自分の力にうぬぼれていたからでしょうかな?オルド王国の皆さんも自称最強無双勇者様も?」
長身の美丈夫は、高らかに笑った。
「俺が言いだしたわけではないから、自称と言われてもな・・・。」
とタイジが頭をかいた。タイジ達一行は、広い王宮の中庭で周囲を囲まれていた、
ウラヌスとタイジは、人妻Sと召喚仲間達、勇者2パーティー、ヘレナ率いる騎士隊を引き連れて、オラド王国にやってきた。王国が、竜神国との仲介を取り、その王宮で双方の対面を行うということを提案し、それにクロノス達が同意したからだった。
竜神国宰相にして魔導士長コウメイ・ショカツとその一行と国王の前で、謁見室でウラヌス達は対峙することになった。もちろん、双方ともにこやかに儀礼的な挨拶を交換した。
「失礼ですございますが、あなた方のことは、私達は今まで知りませんでした。竜神国とはどこにあり、どのような国なのですか?」
とクロノスが質問した。
コウメイは、この地の東方にあると言い、続けて、
「竜神の子孫により建国された国です。現在の国王陛下は、聖人であり、仁義に厚く、国は豊、国民は幸福、周辺の国々は陛下を慕って次々にその統治に入ることを望み、自ら国を挙げて我が国の一部になる状態です。そして、この世界に召喚され、元の世界に戻ることを希望している方々がいると聞き、陛下は心を大変痛められ、帰還のための魔法を見付けるようにと仰せつけられ、それが完成すると我らに、遠い国の者でも助けなければならないという大きなお心から、我々をここに派遣されたのです。」
コウメイは、見事な金髪で、いかにも知的で、聡明で、誠実なマスク、かなりの美男、そして長身でまさに美丈夫というしかない印象だった。司祭級の服に似た上等だと分かる素材の衣服も、彼が着ているとさらに輝くようだった。彼と共に並ぶ男女の魔導士達も皆、服装は準じていたが、髪の毛も、身長も、肌の色もまちまちだったが、整った顔立ちで、知性を感じさせる面々だった。その後ろの護衛達は皆精鋭と感じさせるものを持っていた。そして、コウメイと護衛の2人には、圧倒されるオーラを感じた。さらに、コウメイの後ろに立つ小柄だが、顔をフードで覆って見えい者、魔導士達と同様な装いだが、は異様な気を感じた。
「それで、この方達の元の世界への帰還魔法ですが、詳しい魔法術式なりを教えていただけないでしょうか?」
クロノスが帰還希望者を目で指し示しながら言うと、
「再三申し上げているとおり、我が国の秘法というべきもの。その詳細はお教えすることはできません。我々を疑われるならば、陛下の御心を疑う非礼であり、我々にも考えがありますよ。」
とコウメイは睨みつけるように厳しい表情になった。それに気おされかけたが、
「あなた方の誠意を疑うわけではありませんが、ことは帰還を希望されている方々の安全にかかわることです。我々の都合で召喚し、私達のために戦ってくれた方々です。我々としても、恩義に報いるためにも、その無事な帰還に万全の措置をとるのが我々の義務ですから。」
と恭しく頭を下げて、クロノスは食い下がった。だが、コウメイはそれには答えず、
「自称最強無双勇者殿も、元の世界へのご帰還をお望みなのですか?」
と質問してきた。
「最強無双勇者様であるタイジ様は、こちらの世界と離れがたいものがあり、我々も必要としております。そのため、帰還の対象とはなっていません。ん?」
クロノスが言い終わる直前、コウメイの顔が一瞬歪んだことに彼は気が付いたが言葉を飲み込んだ。さらに、そのことは無視して、続けようとしたが、
「どうかな、帰還魔法を現実に見てみてはどうかな?クロノス、お前なら、その真偽を見抜けることができるであろう。どうだ?」
国王の乱入?仲介に?
「はあ・・・。」
とクロノスは躊躇し、打ち合わせでもしていたのだろうと疑ったが、拒否することはできなかった。
「まあ、予想の範囲内だが・・・。」
と従うことになった。
「それは、単に異世界に飛ばしてしまうだけの魔法術式ではないか?」
とクロノスが怒鳴った。
広い中庭で展開された魔法陣を見て、即座にクロノスは言い当てた。多少は違うが、事前に想定していた、彼がタイジ達を元の世界に帰還させようと考えたもののこれだけではだめだと判断した魔法術式、ものと基本的には同じだったからだ。多少の違いは、魔法展開に安全性が付与されず、異世界転移の過程で引き裂かれて死ぬ可能性があるものということでの差のように判断できた。
「あなたにはわからないようですね。黙って見ておいでで下さい。」
コウメイはにこやかな顔で言ったが、
「とにかく止めろ。内容を見るだけのはずだったぞ。」
とクロノスは引き下がらなかった。すると、コウメイは笑い出した。
「あなたは、まだわかっていない。それが私達の目的です。チート級能力をもった異世界人の脅威から、この世界を守ろうということですよ。」
と叫んで、冒頭の言葉とその後になったのである。




