何とかしてあげますよ
全てが失敗したことに気が付いた面々は、どうすることもできなかった。1つの勇者パーティーが惨殺された、それだけの結果が残っただけだった。10ちょっとの勇者パーティーも召喚勇者パーティーも、最強無双勇者タイジとその人妻Sに従っていた。彼らを支持する国々とともにオリオ王国も従うしかなかった。そのままでいけば、彼を召喚した功績からの発言権、威信を得ることができるのであるから当然だつた。魔族諸部族をも含めた連合帝国が成立することになった。
魔王を倒した勇者としてタイジに与えられる恩賞、報酬の7割は、タイジの意志により今まで魔族との戦で奮戦してきた召喚勇者パーティー、この世界の勇者パーティーに与えられることになった。タイジには数々の特権が与えられ、国王に準じる待遇が与えられたが、大したものではなく、名誉的なものも多かった。異世界から召喚された者達を元の世界に戻す方法も、真剣に研究されることになった。
「私は、ここに留まるしかないですよ。スキルの責任を取らないとね。」
とはタイジ。他の召喚された者達は、色々だったし、決められない者達も多かった。
クロノスは、それがなかなか見つけられるものではない、と思っていた。だが、その方法を見つけたという者が現れた。
「?」
がクロノスの最初の思いだった。
「胡散臭い。何か裏がある。」
とは2番目。
「いやいや、私が見つけられなくても、見つけられる人間がいてもおかしくはない。うぬぼれてはならない。偏見のない目で確かめることが必要だ。」
と思い直した。とはいえ、
「気をつけなければならないな。」
とも同時に思った。なにせ、オリオ王国からの情報である。
「帝国臨時魔導士長兼宰相としても、慎重に取り扱わないとな。」
とわざわざ現在の役職を口に出して呟いた。自分の役職を、自分の口からでも聞こえるのが、何となく面白く感じたからである。
帝国は、これから皇帝を選出することになっている。それまで間、最強無双勇者ことタイジとその下に宰相を兼ねるウラヌスと各宗教・宗派の長達が枢密院を構成して運営をしているのである。だから、帝国とは言っても大した権限も力もない。タイジは皇帝が選出されれば静かに暮らしたいとしているし、宗教関係者は帝国の役職にはつけないから中立的な立場だからと理由からである。ちなみに枢密院議員は、本来は各宗教・宗派の長ではあるが、出席しているのはその代理である。
そして、人妻Sはタイジを補助し、枢密院との連絡や請願とかの受付などに動いていたし、ヘレナは近衛騎士団長をしている。
「オリオ国王の愛妃からの連絡だと、かなり怪しい連中のようだが。」
とタイジはウラヌスに言った。彼としては、同志とも言える、同じ日本人である集団勇者召喚の面々の中には元の日本に帰りたいという願望を持っている者達がいる以上、僅かな可能性でもそれに賭けたいという気持ちもあった。他方、彼が、というよりフレイアは、国王の寵愛を受けていて、ヘルやリリスに戻ってきてほしくない妃達と密かに手を結び連絡のルートを作っていた。彼女達にとっては、タイジとヘル達の関係がなくなる、タイジが殺されてヘル達が解放されるのは絶対あってはならないことであるから、それを阻止したいのである。
「まったく元夫ったら、怖い女を二人も侍らせちゃって大丈夫なのかしらね?私には関係ないけど。」
と言いながら、その2人としっかり連絡を取り合っている。怖いのはフレイア様のほうですよ、とクロノスは思っていたが。
「しっかりとその2人と夫談義で盛り上がっていたがな。」
とは彼女とともに転移して、その2人との秘密会談?をセッティングしたタイジが苦笑しながら言っていたが。クロノスは、まるで大魔女の集会だな、と想像してしまった。
女達からの情報を総合すると、竜神国からの使者があり、そいつが召喚した者の元の世界に戻す魔法を知っているし、使えると言ったということだった。彼らと国王達の会談の内容はわからないが、竜神国が聖人或いは神に近い存在であり、人々のために禍々しい存在であるタイジを排除することに協力したいと申し入れて来て、国王達はそれに乗ったらしい。
「まあ、俺を元の世界に強制送還すれば、自動的に排除できるわけだけど、そう言う事なのだろうか?」
とタイジがそれに首を捻れば、クロノスもそれに同意した。そんなに単純ではない・・・はずだと考えたからだ。それに竜神国とやらの意図が問題だった。




