王妃達を引き離したか・・・てここに来る?それは困る
翌日、クロノスは国王の下にはせ参じた。王妃達を、屑勇者から引き離したということだった。
国王は、時間をおいて、
「でかした。」
とか細い声で言った。実は、ウラヌスにその役目を言いつけると直ぐに、
「クロノスは、かの屑勇者とつながっております。彼の首尾を待つことなく、勇者パーティーやS級冒険者を集められるだけ集めて、屑勇者にぶつけましょう。そして、召喚した異世界人達に命じて加わらせましょう。」
「流石に、あの屑勇者でも力がだせないでしょう。」
「強引に王妃様達を奪回すれば、屑勇者の力を失うはずですから、異世界人にやらせればいいのではないでしょうか?」
と動き出していたのである。ウラヌスの前で散々言ったことを、秘密裡に行おうというのである。
クロノスが王妃達を解放?したということで、動き出したことをどうしたものか、まず思ったからである。しかし、それがそれを混乱させることをクロノスが言いだした。
「王妃様方が間もなくここにやってまいります。」
「?・・・ここに来る?今?」
「恋しく思っていた陛下がお呼びになっていると、お喜びになって、それはもう早く閨を共にされたいということで。」
「そ、それは。」
と口ごもったのは、国王だけではなかった。
「それは困る。」
との言葉をなんとな呑み込んだ国王達だった。
それでも、
「今がチャンスだ。王宮にいるだけ全ての勇者パーティーと騎士達を屑勇者討伐を指示しろ。」
と命じることは忘れていなかった。
「陛下~。この日が待ち遠しかったですよ~。さあ、いきましょう。」
「リリス殿。私を差し置いてそのようなこと許しませんよ。まあ、状況が状況ですから、同行を許しますが。」
「わっかりました~、王妃様。」
とはいって来る早々に、ヘルとリリスは玉座の国王のもとに歩み寄り、止めに入ろうとした側近達を軽く投げ飛ばして、国王の両脇に立って言い合った。
「では行きましょうか?陛下?」
とハーモニーして2人は、左右から国王の腕を取った。
「ま、待て。行くとはどこにだ?」
「決まっているではありませんか、寝室にですわよ。」
「待ち焦がれて、もう我慢ができないんでょう?」
「可愛がっていただけるのでしょう、いっぱい?」
「私達もいっぱいご奉仕いたしますから。」
と妖しい笑みを浮かべて覗き込む2人の顔を見て、ドキンと欲情も感じたが、さーっと拒否するものも感じた。さらに背中に、後方から痛い視線が来ているわけではないが視線を感じてしまった、怒りの、抗議の。
「どうしました?」
「お嫌ですの?」
と訝しそうに視線を向ける2人。慌てるように駆け付けた女性側近が、
「王妃様、リリス妃様。陛下は、新たなお住まいをご用意されておられます。どうか、まずはそちらへ。」
と言って2人を引き離そうとした。
「まさか、立派な修道院を私達のために用意したということ?」
「はい・・・あ・・・いいえ・・・ではなく・・・。」
「これから修道院に連れて行って閉じ込めるということ?」
「・・・立派な修道院ですから、ずっとそちらに・・・。」
「もう、私達はここには居場所がないというわけですね。追い出して、修道院にということなのですね。」
「王妃様。陛下は私達のように汚れた女は抱く気にならないということなんですよ。ひどいと思いませんか?」
とリリスは泣く素振りをした。
「い・・・いいや、そうではなく・・・余生を幸せにと・・・。」
「陛下は王妃様方に幸せな余生をと・・・。」
「その修道院であれば、幸せな余生を・・・。
と慌ててしまってその意味することが分からなくなっていた。そもそも分からなかったのだ。出来るだけ快適に今後の余生を過ごせるために、修道院を厳選した、王妃達のために、という気持ちだったからだ。それが、もう抱かない、抱きたくないから修道院に入ってずっとそこでいろ、という意味になることが理解できなかった。
「分かりましたわ。もう私達のことは愛せないということですね。後は、若い妃達に任せましょう。もう、私達のことは死んだと思っておられるのですね。リリス殿、行きましょうか?」
「そうですね。私達は、もう勇者様のものになっているのですから、やっぱり勇者様のところに戻るしかありませんね。」
と言って、2人は国王の腕を離した。国王は玉座の上に力なく、落ちるように座り込んだ。
「ヘル様、リリス様。早く行きましょう。私達も用なしだそうです。」
「修道院おくりですって。」
フレイアもイシュタルも、その夫達との話が終わっていた。
「ま、待て。誤解・・・だ。」
「お待ちください。」
駆け寄る側近達を軽く4人は蹴散らしていった。ウラヌスはヘレナを後ろに、
「説明をさせてください。短慮されてはなりません。」
と言いながら、4人の後を追った。
「三文芝居は終わったか。」
とクロノスが呟いた。




