オリオ王国に転移 実はもう何度も転移していたのよ
翌日、タイジはトロイア王国国王以下が彼らの見送りに勢ぞろいしたところで、遠くからは多数の民衆が見守っている中、歓迎の礼を言った後、
「これよりオリオ王国に転移いたします。裸で残したいく者達の処分はお任せします。」
と告げた。まずは国王達の周辺でざわめきが沸き起こり、それが次第に感染するように広がっていった。それが全体に広がるのか見届けることもなく、こともなげにと言う風に、
「転真敬会奥義、転定活真互生妙用」
と声を上げると、輝く魔法陣が現れ、瞬く間にタイジ達一行姿を消し、暫くすると魔法陣も光りも消えてしまった。その後には、国王以下トロイア王国の多数の人間達が唖然としたまま残されているだけだった。
実は、王都まで全員をまとめて一気に転移することは可能だった、魔王城からでも。ただ、彼らの姿を少しでも見せつけ、動かしがたい事実を、既成事実を残すことが重要ということで、最初に通るトロイア王国までは、陸上での行程をとったのである。
「トロイア王国では、うまくいったのだろうか?」
国王は、イライラするように言った。
「あの女の変身魔法で、引き付けられない男は今までおりませんでしたから、そちらは大丈夫かと思います。それで、王妃様達と引き離せば普通の人間以下になる奴を倒すことは容易でしょう。念のために魔法改造した刺客達を用意いたしましたから・・・多分吉報がくるのはもうすぐかと思います。」
「勇者は自分の悪行により殺された、ということで全てが終わる・・・。」
国王は、夢見るように、呟くように、言った。その後すぐに生気を取り戻し、
「召喚者達を監禁しておいた方がいいだろう。いつでも使えるように確保してしまった方がいいのではないか?」
この時点では、人質か彼らにタイジを抹殺させるかも方針は固まっていなかった。
集められるだけの勇者、SS級冒険者も確保しつつある。各国に打診はしているが、協力を全ての国が了承しているわけではない。というか大部分は様子見、両方に天秤をかけ、両方に手を差し伸べている。王妃達を奪われたオリオ王国に対しては多少の同情はするものの、同様に愉快にさえ思う気持ちもあった。寝取られ男は、常に嘲笑の対象だからだ。後は自分達の心配、流石に自分の妻や愛妾を奪われる可能性に不安を感じるとともに、異世界の勇者、あの魔王を簡単に、あっけなく倒してしまう、という存在への恐怖というものがあった。なにをしでかすか分からない、とにかく脅威だ、だから、オリオ王国に協力しよう。しかし、下手に協力して、自分達に勇者の怒りが向けられたらどうしようという不安とそれだけの勇者なら、自分達の側に取り込めば、逆に勇者に取り入れば、発言権は強くなる、覇権をにぎることができるという野心も出て来る。
それを考えると、そのようなことは情報が伝わってくるものである、オリオ国王は苛立ちを感じてならなかった。まだ、勇者がここに来るまでには時間がある。だが、トロイア王国での作戦の成功の是非が判明するのを待たず計画を進めておいた方がいいと考えるようになった。今、それを決断しよう、国王が思った時、何かがざわめくのを感じた。
「た、大変です。あ、あの勇者がが、が、凱旋しました。」
「?」
飛び込んで来た若い行政官の言葉に、会議室の国王以下全員が目を点にした。
「あの勇者が、それと王妃様達が既に王都に到着し、民の歓呼の声の中王宮に向っております。」
「は?」
あらためて説明し直した彼の言葉にも、皆はやはり理解が追い付かなかった。
「勇者様が凱旋したぞ。」
「勇者様、万歳。」
「人妻S万歳。」
といつの間にか広がった、ヘル達には迷惑でしかない愛称も連呼されてしまった。王都の広場の一つが大きな光に包まれたかと思うと数十人の人間達が現れた。同時に、
「魔王を倒した勇者様が凱旋されたぞ。」
という声が至る所から上がった。そのまま、それは広がっていった。その最初の声は、クロノスが仕組んでいたものだった。彼もまた、事前にタイジとともに王都に来ていたのである。それで彼は色々と工作をし、手をまわしていたのである。勇者の凱旋を周知のものにするため。そして、魔王を倒した勇者一行に、数か月前、魔王軍との戦で重傷を負った召喚者勇者チームの面々もいた。事前に彼らも、やってきたタイジ達とタイミングを合わせ、タイジが彼らのところに転移すると飛び出して彼の周囲に集結、そのまま連続した転移で王都の広場の一つに彼らとともにあらわれたのである。人質だろうが、元の世界への帰還をちらつかせての刺客に仕立てられることも阻止するためである。
彼らは王宮に向った。王宮の前に着くと、門が開いた。迎え入れないわけにはいかないからである。




