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最強勇者スキルだけど口に出すのも恥ずかしい・・・  作者: 安藤昌益
魔法討伐の旅

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おぼれても、力はいいと思う私達

 最初に人間界に入ったのは、魔界との最前線の国、トロイアの王都シュリマ。最初の、魔王を倒した勇者とそのパーティーの凱旋だった。人妻は凱旋式に参加禁止、のはずだったが、その条項が周知されるのが忘れられていた。沿道の人人の歓声の中を通り、そのまま王宮に勇者とそのパーティーとその一行が入ってから、何故か忘れられていた条項の触れが民衆の前でなされた。それに対する反応は最初は半信半疑、次第にパニックになり、いつの間にか勇者のために美しい若い女が捧げられるという話になっていった。一部には、ひどく期待して待つ者がいたとも言う。

 そして、一行をまず迎えたのは、妖艶としか言いようのない美女だった。

「美しい女ね。」

「私達より若いわね。」

「派手な女ね。」

「魅力的ね、女から見ても。」

「人間の出迎い方なのか?」

「いい香りがするわね。」

というのが人妻Sの感想だった。もちろん、最強無双勇者を睨んでの上だった。

 露出ばっちりのいで立ちで、それらも上等の材質だったが、高価な装身具を嫌みにならない程度に、きらびやかに、華やかに、魅力的に見える程度の数身に着けていた。その彼女がそばに歩み寄ろうとすると、感じんの勇者は、6人の人妻Sを寄り添わせて、

「案内よろしくお願いします。」

とだけ言った。

「なんか臭い。好みではないな。」

と呟いた。

「そういうものか?」

と返してしまったウラヌスは、しっかりとヘレネにつねられた。


「私は彼女達、5人とは違う。彼女達は、子供の頃に婚約が決まっていて、その婚約者の妻になっただけ。私は違う。子供の頃から、あの人の側にいて、あの人と思い出を紡いで、恋し、そして愛し合った・・・はず・・・。」

 リリスは、ぐったりとなって動けない体で思っていた。彼女の耳には、フレイアがタイジの上に跨り、激しく腰を動かして喘いでいる声が入ってきていた。今晩は、彼女が最後だった。

「この力、失いたくはないわよ。」

とも何度も言っていた。彼女は、あの口に出せないスキルに呑み込まれてから得た強大な力に酔っている、そして溺れていた。それを非難するつもりは、リリスにもなかった。自分も、かつて人間達を救った勇者達をはるかに凌ぐ力を持っていることは、何か嬉しいものを感じていたからだ。

 それでも、自分は今国王である男には、彼女らと違い強い思い、絆があると思っていた。ハイエルフのネルティスも魔族のスカディも、夫に捨てられたような女達とは、さらに違うと思っている。

 自分達を最悪、タイジから引き離すことができなかったら殺せと国王達が命じていたことを知って、何かが大きく壊れたものの、自分に対してだけは異なるのではないか、とどうしても思ってしまっていた。


「あなた、自分は違うと思っている?」

 ヘルの声だった。リリスは答えなかった。

「彼女達はあなたと同じなのよ。あなたは特別ではないのよ。彼女達のライバルでしかない。陛下にとってもね。そして、ただ古いだけよ。」

 彼女達とは、ヘルやリリスより若い妃達である。ああ、私はあの人の特別な存在ではないんだ?と何となく、その言葉で思った。ヘルに対して、正式な王妃に対して対抗心を抱き、半ば取って替わろう、そこまではいかなくとも、王宮での実質的な地位で上になろう、国王の寵愛を自分だけのものにしよう、自分は彼の特別だから、と思っていたことに気が付いた。そして、彼女らと今や同様な戦い?を挑まれている。もう同じような存在でしかない、とも思った。そして、体も心もスキルのためか、タイジのものになってしまっていること、国王への想いが遠いように感じている自分がわかった。


「あー。」

とフレイアが叫ぶように喘いで、タイジの上に覆いかぶさって、体を激しく痙攣させた。

 静かになった7人から少し離れたところに、裸で縛られた男女達が放り出されていた。一人を除いて、静かだった。タイジを誘惑して、人妻Sから離してスキルを奪って、単なる人に戻すため送られてきた美女、彼女は彼を誘惑しに来て人妻Sに抑え込まれ、裸にされ、恥ずかしい格好で縛られ床に転がされた。それでも、仕事の依頼を完遂しようと、あきらめることなく、縛られながらも自分の恥ずかしい格好を何とかみせ、猿轡をされながらも艶めかしい声を出して、気を引こうとしていた。半ば屈辱の中諦めてはいたものの、この種の仕事のプロとしての誇りが彼女を動かしていた。それは、魔力が尽き、彼女の本体が分かるまで続けられた。

 他の3人は、突然王宮の中でタイジ達の前に、凌辱されたあげく自殺した妻の復讐だ、と現れた大柄で逞しい男達だった。女が1人、自分が凌辱されたことに抗議にいって惨殺された夫の復讐だと現れた。大柄で逞しいというより、熊のような女だった。何故、彼らでタイジを倒せると考えたのか、首を捻るほどだった。だから、鎧袖一触以下だった。

 

 

 


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