オリオ王国王宮では
「魔王が倒されたのは、嬉しい限りであるが、あの屑鬼畜勇者をどうしたものか?」
オリオ王国国王は、玉座から意見を求めた。
国王が秘密を要する会合の時に使われる、比較的小さな会議室、王弟、宰相、皇帝魔導士長、将軍達、大貴族達が国王の前のテーブルに座っていた。
「陛下、クロノス殿と報告を待つべきではありませんか?きっと暗殺成功の知らせをしようとされているところかもしれませんよ?」
側近の誰かが、慰めるように言ったが、それに国王は、
「今だに、クロノスからは連絡があってしかるべきではないか、既に。失敗したのではないか?次の策を考えるべきではないか?何かあの勇者に効く毒薬はないのか?いったん王妃達を引き離せば、力を失うのか?それとも、同じ召喚者達、奴とは同郷の者達だというではないか?彼らを人質にして・・・あるいは元の世界に返すことと引き換えに彼を殺させるというのはどうだ?」
国王の視線は、王室魔導士長の方に向けられた。内心びくっとしものの、そういう素振りは全く見せず、老境に達している王宮魔導士長は、
「仲間達を人質にとった場合、あ奴めの怒りに油を注ぐ可能性がありますし、また、彼らの実力ではあ奴めに鎧袖一触ではないかと。あ奴に有効な毒というのは、残念ながら聞いてはおりません。古文書などを調べているところではありますが。ただ、陛下のおっしゃったことが真実ではないかと思いますが、奴めは王妃様方を側から離さないようです。」
「しかし、どうして妻達は奴から離れぬのだ?」
「兄上。それは、魅惑の魔法を奴めが使っているからではありませんか?」
王弟が、話に割り込んだ。2人の顔をを見て、嫉妬と怒り、その他が複雑に絡み合う表情を見て、発言を躊躇した。皆の視線が自分に集まったことを感じて、魔導士長は口を開いた。
「陛下。王妃様方の体は支配できても、お心は支配できはしないかと思います。まして、貞節であり、深く陛下方をお愛しなられている王妃様方ですから、心は奴に向いてはいないかと。」
国王と王弟が満足そうにうなずくのを見て、彼はホッと胸をなでおろした。彼女らを最悪の場合殺してもよい、帰ってきたら修道院に送るつもりでいたものの、自分の方が愛されているという言葉には弱かった。もちろん、方針が変わることはないのだが。
「しかしながら、魔王を倒し、下位魔族との恒久的な和平をまとめた功績がある者を、それ相応の待遇、恩賞を与えないで、まだ罪がないのに、一方的に処罰する、暗殺すると言うのは道義上問題ではないでしょうか?各国も納得しないのではないでしょうか?」
と将軍の一人が発言した。
「既に、王妃様以下高貴な女性達に乱暴を加えているではないか?」
「それは、彼が得たスキルの問題であり、魔法を倒すのに必要であったからではないでしょうか?」
「もうよい。お前の言い分はよく分かった。」
穏やかな調子ではあったが、そのようなことは言うな、というオーラの衝撃に彼はそれ以上発言は使用としなかった。
「帰りの道々、色々と罠を仕掛けることにしていますが、上手く行くかどうか・・・。」
と宰相、初老という年齢の、が口をあけた。
「とにかく各国にも協力を依頼することとしております。既に、話し合いの時と場所の調整も進んでおります。」
と宰相は続けた。さらに、
「王妃様方は、心は陛下方にあるということは確実かとは思います。それであれば、何とか一時的に引き離し、説得すればご理解いただけるでしょう。そのままお連れすることが可能でしょう。あの勇者の力は失われるのであれば、それが一番かとは思いますが。ただ、もしそうであれば、王妃様方には、元の立場にもどってもらうことになるということになりましょうか?勇者は、王妃様方を辱めたという罪で処罰いたしますか?力を失うならば、この世界の勇者達に捕まえさせればいいかとは思いますが、魔王を討伐した功績はどういたしますか?無視しては、民の信頼を失うことになりましょう。」
国王以下口を開く者はいなかった。
「全ての方法について、進めていくことといたします。」
それに国王は大きく頷いた。




