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最強勇者スキルだけど口に出すのも恥ずかしい・・・  作者: 安藤昌益
魔法討伐の旅

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魔王は魔王城を攻める

 魔王が、魔王城が既に陥落したということを知ったのは、魔王城まであと2日弱というところだった。先を進んでいた先発隊が、その一部がだが、逃げ戻ってきたのと合流して、彼らの報告から魔王城が、既に勇者によって落城しているということを知った。


「ば、馬鹿な。」

としか言葉が出てこなかった。

 魔王城は、高い、そして堅固な城壁で囲まれており、多数の魔具によりいくつもの防御結界が張り巡らされており、周囲も内部も魔法トリップが至る所に設置されていた。主力、精兵が出払っているとはいえ、それなりの兵力、精鋭も一部いる、を残していた。それに、自分の妃、妻達もいた。彼女達の実力は、上級魔族出の妃達だけに、かなりなものを持っていた。それが、こんなに簡単に落ちているはずはないと思ったし、思いたかった。

「勇者は一角を占拠しているだけではないか?我が妃達を中心に激しい抵抗をしているのではないか?」

と敢えて質問したが、誰もが首を横に振った。

「と、とにかく。一旦停止だ。まずは状況を確認した上で、魔王城の攻略に入る。偵察隊を出せ。」

と命令した。


「妻達が全員虐殺されたと?」

 送り出した偵察隊は、誰一人帰ってこなかったが、勇者に捕虜になっていたという面面が逃げてくるのと合流することになった。そして、半ば怯える彼らからの話を聞くことになったのである。


 その日は、突然の攻撃から始まった。もちろん、油断なく周囲の警戒は怠っていなかったし、防御結界も張られ、何時でも戦える体制が取られていた。

 だが、誰にとっても、突然に城全体が立て続けに何度も大きく揺れ、何かが壊れる、崩れる音がいたるところから来た。

「何が起こったの?」

 魔王の正妃が左右の者達に質問した。彼女は万一のために、常に戦えるいで立ちをしていた。おろおろするばかりで、説明のできない側近を見て、

「留守部隊の魔将軍に状況を確認に行きなさい。あ、お前は外の様子を見に行きなさい。」

と指示した。慌てて、何人かが部屋の外にでた。魔王の間に向おうとしたが、自分が今動いては混乱するばかりだと、取り合えずその場にとどまった。

「た、大変です。ゆ、勇者の攻撃です。既に城内に。」

 正妃が痺れを切らして部屋を出ようとした時、妃の一人、日頃対抗し合い、あわよくば正妃の座をと虎視眈々としている女だった、が駆け込んで来た。

「何を戯言を。」

と思わず口にしたが、

「この揺れに驚いて外に出て見ると、我が将兵をなぎ倒してくる勇者をも見たのです。魔将軍も瞬殺されて・・・。妃の一人が大剣を持って、魔法を解いた体で立ち向かったものの無造作に八つ裂きにされました。」

 そう言いながら彼女も魔法を解きかけていた。が、その途中で体に大穴があいて血を吹き出して倒れた。ほとんど即死のようだった。倒れた彼女は、半ば狂暴なハムスターのような姿になっていたが、それだけで動かなかった。。

「あ~ら。殺しちゃったかしら?生きてさらし者にしようと思っていたのに・・・。」

「奥にいる女でいいのでは?」

「あら調度いいのがいたわけね。何か正妻っぽいわね。何か、半殺しにして見せしめにさらし者にするのって・・・なんか気持ちいいわね。あんた、半殺しにされなさい。」

「悪趣味ですよ。」

 リリスとイシュタルが、掛け合い漫才のような会話をした。

「貴様が勇者か?」

「勇者の・・・まあ妻よね?」

「そうですよね?」

「ば、馬鹿にしているの?勇者の女なら、貴様らから八つ裂きにして、勇者の前にさらし者にしてやる。」

 彼女の体は、巨大な毛虫のような姿になった。なって、

「死ぬが。」

と言いかけたところで、既に張った防御結界が破られて、光が、火が、雷が剣の形となって、彼女の体を刺し貫いていた。

「う~が・・・。」

 ぐったりと、言ってよいのかどうか2人にはわからなかったが、全身の毛が力を失ってしなだれ、体も重力により平べったくなっているように見えた。

「このままでも死なないわね。当分ここに置いておいて、魔王が来たら城壁に吊り下げてやりましょう。」

「う~ん。もうちょっと・・・、再生できないように。」

「じゃあ、もうちょっと痛めつけて・・・切り刻んでおこうかしら?もう少し黒焦げにしておこうか?」

「黒焦げがいいのでは?」

「そう?そうしたら一緒に火で焼いてと雷を落としましょう。」

 その言葉が微かに聞こえて来た魔王の正妃は、動かない体ながら身震いした。


 彼女達は、得手不得手があるものの、大部分はかなりの戦闘力がある。簡単に殺される者たちではない。そのことを、魔王はよく知っていた。

「勇者に次々に無情に惨殺されているのを、目撃いたしました。」

と言ったところで、

「お前達、それを目撃して何もしなかったというのか?見捨てたの?」

と怒号を上げた。一瞬で、その者達は灰になっていた。

「直ぐに総攻撃だ。」

とは言わなかった。守備隊はそれなりの数だったし、部隊長をはじめ幹部には精鋭を置いていた。それが、妻達とともに全滅している。勇者パーティーは、大兵力を伴っているわけではないはずである。情報では少数である。それが、ヴァルハラ城が落ちてしまったのだ。状況を調べて、事前に偵察する必要があると判断することができた。

「ヴァルハラ城を遠巻きに囲み、偵察隊をだせ。」


 しかし、大半の偵察隊は帰ってこなかった。結局、遠目でしか見ることができない状態で、包囲網を次第に狭めながら3日後には、総攻撃には総攻撃を開始することになった。包囲して、兵糧攻めという手段も当然考えたが、食糧が消え去ってしまったのだ。勇者達の仕業だと、当然考えたものの、見張りの者達は皆殺しになっていたので確証はつかめなかった。

 しかし、早く決着をつけなければならなくなったのだ。

「わしが陣頭指揮で、総攻撃を実施するぞ。」

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