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最強勇者スキルだけど口に出すのも恥ずかしい・・・  作者: 安藤昌益
魔法討伐の旅

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私達を愛してくれているのですよね

「勇者様。ここから先は本格的に魔族の領域、魔界ですから、当分は湯上りのきれいな、石鹼の匂い、香料の香りの立ち昇る私達は賞味できませんから、しっかり味わってくださいね。」

「まあ、汗と体液の臭いをみんなで擦り付けあっちゃいますけどね。」

「みんなの臭いが、一緒になるわけですね。」

「5人でいつも一体ということですね。今夜もゆっくりと愛し合いましょう。でも、勇者様は私達を愛して下さっていますか?」

 湯から上がって食堂に入ってきた、ヘル、リリス、イシュタル、フレイアはまずはタイジに体に擦りつけたが、フレイアの最後の言葉に、4人は彼の周囲を囲み、不安と期待の目でうるうると少女のような姿で見つめていた。

 タイジは、莞爾として微笑み、

「お前達が私を愛してくれている限り、お前達を何よりも愛しているよ。だから、今は愛しているよ。いかに美しく、可愛くても愛してくれない者を愛せないんだ、俺は我がままだから。だから、俺が愛せるように愛していてくれ、いつまでも。」

と言って彼女らをまとめて抱きしめた。窮屈な状態ではあったが、嬉しそうな表情をしていた。


「ウ、ウラヌス様。これは、魅惑の魔法なのではありませんか?」

 女騎士のヘレネが隣に座ったウラヌスに小声で尋ねた。

「魅惑の魔法か・・・。あれはあるにはあるが・・・正確にはそのような名だが、君が思っているようなものではないけれども、効果時間も距離も程度もかなり限定されているんだよ。彼の恥ずかしいスキルは、その発動対象が『好みの』とあるように彼の好きなタイプのということなのだが、そこには好みの顔、容姿ということ以外の意味も含まれているんだ。あらゆる意味での相性のよさということもあるんだ。だから、勇者様と王妃様達は互いに惹かれ合うものを持っているということなんだ。『イチャイチャラブラブ』というのも、勇者様が一方的にするということではなく、相手もそういう状態になるという事なんだよ。だから、もう、彼らは離れられない関係だということだ。」

と長々と説明したウラヌスは大きなため息をついた。なんか馬鹿らしい、というような目のヘレネは、

「それが分かっていながら、どうして王妃様方をお会わせしたのですか?」

 完全に抗議だった。彼女は、自分がとにかく、この状態になった理不尽を頭の中だけでも振り払いたい思いだった。何となくわかったウラヌスだが、

「王妃様達が対象になるなどは、分からなかったんだよ。とはいえ、私の言った注意を守らなかったせいではあるがな。」

 その時には、まだ、そこの所がステータス全体が、まだわからなかったのだ。そう言って注意しておいたのに、誰だ?あのブス、ばあさんSを並べて大丈夫だと考えたのは?


「そ、そうですか・・・。」

 別にがっかりすべきことではないはずだが、魅惑の魔法とやらだったらどうしていたんだ?と言いたいところだったが、そのとは触れないことにした。

 ほどなく食事が運ばれてきたので、タイジと人妻Sも席について、食べ始めることになった。


「勇者様の作ってくれた味噌汁とかシチューの方が美味しいわ。あ、カツも天ぷらも・・・。」

とフレイアの文句に、

「文句は言わないように。勇者様の作ってくれたものと比較するのは、可哀想ですよ。まあ、田舎の洗練されていない食事ですけどね、確かに。」

 ヘルがフレイアを諭した言葉に、タイジは苦笑しかできなかった。

 その時周囲を見ましたタイジは、ウラヌスに、

「不可知の結界を作ったぞ。いつでも秘密の話は可だ。」

とタイジが言った。


「以上が私の配置している密偵や情報提供者です。」

 食事が終わるころには、ウラヌスの説明が終わった。それから、彼はヘレネの方を向いて、

「ここまで聞いた以上、君も一蓮托生だからね。分かっているだろう?」

「はい。分かりました。」

 彼女は完全に諦めたという感じだった。

「でも、それでは対して秘密事項には近づけないのではない?」

とフレイアがウラヌスの密偵達についての報告を聞いて、顔をしかめて問いただした。

「それはあまり期待していません。流れ出て来る情報を知ることができれば十分です。国王陛下の密談等を探れるほどの能力を持って部下や協力者を、初めから持ってはいませんからね。そっちの方は、使い魔や聖具を使います。」

と彼は微笑みながら答えた。

「しかし、密偵達が既に把握されている可能性もあるし、摘発される心配もある。逆に、今の情勢なら裏切る、内通する可能性も高いんじゃないか?それに、使い魔とか聖具とかも、相手は用心しているんじゃないか?」

とタイジは心配そうな顔で尋ねた。こいつは捕まって拷問されたり、最悪の場合殺されたら可哀想だ、と思っているんだろうな、とウラヌスはタイジの本心を見透かしていたが、そのことは触れず、

「ああ、その点は一応考えてはいるよ。密偵達は3つのグループに分けている。こちらに情報を送る2つには、他のグループのことは告げていない。最後の一つは、彼らの監視のためで、いつもは動かない、連絡しない。摘発、内通についてだけ監視し、報告する。だから、見つかる可能性は小さい。使い魔等は見つかりやすいのを捨て駒として置いてある。本当に高性能で見つかりにくいものと探る能力は小さいが見つかりにくいものを置いてある。そこから集まる情報を分析すれば・・・。どれも万全ではないけれどね。」

と自嘲気味な表情で彼は説明した。信頼できる部下なんか育成していなかったからな、ひたすら魔法の研究にいそしんだ、それでより高い地位につけると考えていたからな、と心の中でも自嘲していた。

「まあ、それ以上は無理だな。とにかく魔王を倒すことが先決だな。その後のことは、情報を見て考えるしかないな。それから一つ考えがあるが・・・これは後で改めて相談させてもらうよ。」

 タイジの言葉に、

「何それ?今言えば?もったいぶって?」

という顔の4人。

「取り合えず、寝室に行くか?」

とタイジが告げると、

「はい。」

と嬉しそうな顔で4人はハーモニーした。5人が消えると自室に行こうしようとしたウラヌスだったが、

「?」

 顔を真っ赤にして、そっぽを向いたヘレネが、彼の服のすそを掴んでいた。


 翌日、タイジは目を真っ赤にしたウラヌスとヘレネを見た。彼と人妻Sは、元気いっぱいだった。




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