女達は揃えてあります
「女達は、これとはと思う者達を揃えております。全て処女の者達です。勇者様には、必ずや満足いただけるかと。ですから、市内で女達を・・・はなさらないように、勇者様にはお伝えいただければ・・・と。」
「は?」
クロノスは、出迎えた市長の言葉に唖然として、しばし思考が停止した。魔王討伐の旅に出てから、まだ半月だが、思考停止は何度あったろうか、というところだった。
思考停止は二種類あった。昨日のようなことが、まずはその一である。
三日月型の光が、かなりデカイのが魔王軍の方に向っていくのが見えた。頭上に金属?と思われる十字剣のようなものが、さらに巨大な岩が現れ、それが落ちていくのが見えた。魔王軍は、それを見ていただろうに、避けるために陣を散開させることもなく、馬鹿正直なほどまともに喰らった。実は体が重くなり、動きが極端に鈍くなったのだ。防御結界を張っていたが、上空からの物的攻撃で砕け散り、それら押しつぶされ、三日月型の光の剣?に切り刻まれ、焼け焦げて半壊してしまった。
放った勇者、最強無双勇者であるタイジは同時の魔法攻撃で流石に息が荒くなって・・・ということはなく平然と立っていた。
「残った雑魚は、私達に任せて下さい。」
とヘル、リリス、イシュタル、フレイア、人妻Sが飛び出した。いくら「戦う」がついても大聖女様まで、戦いの先頭に立つというのはないだろうに・・・もう戦闘狂化しているんじゃないのか、あの女達?とウラノスは思わざるを得なかった。しかし、彼女達に万一でも危険がせまったらとタイジの方に視線を向けると、
「まあ、彼女達にも戦わせないと経験ができないし、レベルアップも遅くなるからな。」
と耳元でタイジの声が聞えて来た。返事をしようとしたが、その時には彼の姿はなかった。
「触るな、糞ブタ。あら、糞ライオンさんだった?ごめんなさい。」
火球と電撃を放ちまくっていたフレイアに、魔導士は懐に飛び込んで、とライオン頭の魔族は彼女飛び掛かろうとしたのだが、地面に頭を叩きつけられた。何時の間に彼女がその魔族の後ろにまわり、後頭部を掴んだのか、クロノスには見えなかった。脇のヘレネを見ると、彼女はその視線と考えを読んで、自分も見えなかったというジェスチャーをした。
4人は、鎧袖一触の状態で魔王軍を蹴散らしまくった。が、それが止った。指揮官の魔族が親衛隊とともに参陣したのだ。その魔族、蟻頭と胸に偽頭つきの外骨格的な巨体、と側近達を同時に相手をすることになり流石にヘルも防戦一方に転じる。他の3人は、残りの親衛隊その他の相手で助太刀ができない状態になった。
「このブス女。これで終わりよ。」
「あら、女だった?」
と渾身の一撃を何とか凌いだヘルは、連携した彼女の側近達の剣、槍、魔法攻撃を凌ぎながら、少し距離をとって態勢を立て直そうとし、同時に囲まれないように動き回った。それでも、攻撃は止まらず、何とかしのぐのでやっとだった。このままでは、思った時、蟻頭でか物女魔族が倒れた。同時に、周囲の魔族騎士達の動きが急に鈍くなった。まるで、何か重荷をつけられたように。それは、リリス、イシュタル、フレイアの周囲でも同様だった。倒れた魔族幹部、後で魔王4天王の一人だと分かった、の傍らにタイジがたっているのがわかった。彼女達は、この機を逃すことなく一気にに反撃に出て、周囲の魔族達を殲滅した。
魔王軍壊滅までの時間は、後方で見ていたウラノス達にとっては、あっという間の出来事だった。ウラノス以下全員言葉を失い、唖然とした。
「ヘル。もう少し、戦いは駆け引きを考えてくれよ。それは、みんなもだけど。万一のことがあってほしくないからな。」
「心配してくれるのね。」
「あー、私達はー。」
と能天気にはしゃぐようにように、タイジにまとわりつく人妻Sに、
「性格が変わったんじゃないか?」
と思うのはウラノスだけでなく、タイジも同様だった。
彼ら5人の戦いぶり、万一の時のために待機した自分達が何もすることなく、あっという間に終わらせてしまった彼らに、ウラノスの思考は度々停止した。
そして、休息し、物資を補給するために近くの都市、魔王軍から守ったのは、まずこの都市であったが、にそのことでの宿、物資の提供の要請と人妻は勇者一行の前にでないようにということを周知するために、まずはクロノスとヘレネ率いる騎士隊が赴き、彼は市長との協議に臨んだ。その冒頭の市長、腹が既に出ている男だが、心持震えていた。
彼の口に出せないような恥ずかしいスキルのことは事前に周知するようにしている。みだりに発動するスキルでも、彼の欲望で発動するものではないと分かってはいるが、これ以上発動させては不味いからだ。それがどうして、こんな風に伝わっているのか?逆効果だろう?今までも、どう言うわけか事実が
微妙に誤解されていた場合があり、唖然とさせられ、思考停止したが、これほどではなかった。
「えー。」
慌てて説明するウラノスに対して、市長は驚きの声を上げて、
「少しの間、席を上げさせていただきます。」
と言って席を立って、部屋の外に飛び出した。
どうも肝心の人妻は、外出禁止令など出されてもいなかったのかもしれないな。
しばらくして、汗だくで、半分は冷や汗?戻ってきた市長に、人妻の外出禁止令、即時帰宅の命令を触れ回れという指示をしまくったのである、ウラノスは、
「誤解があったようですな。まあ、みだりに発動したりするスキルではないですし、人妻狩りするような方ではないですから、あまり心配なさらなくても大丈夫ですよ。」
というウラノスを不安そうに見つめる市長だった。
「兎に角、この数日水浴も王妃様方はしておられませんから、早く体を洗いたいとおっしゃっているのですから、そのことについてお願いします。」
準備を進めないとな、のウラノスだった。




