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落ちこぼれ王女とマイペース精霊姫  作者: 水無瀬蒼依
第一章 二人の出会い
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3. 精霊姫は尋問される

 私が精霊界を出て、三日目。私は、契約者の人間……ラフィーニアと向き合っていた。


「なぜ儀式の場で眠るのですか!運ぶのが大変だったのですよ!」

「だって、眠かったんだもん……」


 どうやら、私が眠った後、眠った私を抱えて、寝室まで運んでくれたらしい。

 精霊は、契約者しか触れられないから、ラフィーニアが運ぶしかない。

 ラフィーニアの側は、日だまりみたいにぽかぽかしてて、とっても心地よくて、お昼寝にぴったりだから、眠気に抗えなかった。抗う気もなかったけど。


 そして、起きたところを見計らって、椅子に座らされて、お茶会のようなことをしている。

 こういうところは王女さまっぽいよね。


 でも、運ぶのが面倒なら、召喚解除すればいいだけなのに、わざわざ運ぶほうを選んでくれるなんて、優しいね。


「……精霊も、睡眠を取られるのですね。初めて知りました」

「絶対に必要ではないんだけどね。私は寝るのが好きだから」


 人間は睡眠が必要不可欠らしいけど、精霊は別に眠らなくても活動できる。

 精霊が眠るのは、失った力を回復するときくらいだけど、私は単純に眠るのが好きなので、よく眠っている。

 そのせいで、ただでさえ強い精霊王の力が、さらに強くなってるんだけど、それを差し引いても、私は眠ることを選ぶのだ。


 ああ~……こんなこと考えてたら、眠くなってきた。

 そのとき、私の視界に、先ほどまで寝転がっていたベッドが目に入る。

 王女さまのベッドだからか、ふかふかで気持ちいいんだよね~。


「話は終わり?なら、もう一回おやすみ~……」


 ふらふらと立ち上がって、ふかふかベッドに向かおうとしたところで、私は腕を掴まれる。


「ま、まだお聞きしたいことがございますので、お待ちください!」

「そう?じゃあ、早めに終わらせてね~……」


 ふわぁとあくびしながら、私は椅子に座り直す。


「レイノリアさまは、どうやってあの場に来たのですか?」

「呼ばれたから来たんだよ?」


 ラフィーニアの質問の意図がわからなくて、首をかしげる。

 私からすれば、そっちが呼んだんでしょ?って感じなんだけど。


「あの場は、弟のルクレツィオが契約する精霊を呼ぶ場だったのです。他人の精霊が現れることは、今までなかったのです」

「う~ん……そう言われても、私は呼ばれただけだからわかんないよ。そっちこそ、心当たりないの?」


 私が聞くと、ラフィーニアは首を振る。どうやら、心当たりはないらしい。

 精霊は、下界にさえ来れば、自分と契約するべき相手の存在は、本能でわかるようになっているらしい。正確な場所まではわからなくても、方角くらいはわかるとユディナは言っていた。


 私も、感じるままに歩いていたんだけど、ふと、目の前に精霊が使うゲートのようなものが現れた。


 あの先に、私の契約者がいる


 本能なんだろう。なぜかそう感じて、気づいたらゲートに飛び込んでいた。

 そして、ラフィーニアと会ったのだ。


 だから、なんで来たのと聞かれても、呼ばれたからとしか答えようがないんだよね。


「……理由がわからないなら、仕方ありません。この話はこれまでにして、もう一つお伺いしたいことがございます」

「なに?」

「どうやってルクレツィオの契約する精霊を呼び出したのですか?レイノリアさまに遠慮したと言っておりましたが、どういう意味なのでしょう」


 ラフィーニアの質問で、私は当時のことを思い返していると、そういえばと、名前以外は何も教えてなかったことに気づいた。


「私は、精霊王の娘だから、精霊の中で二番目に偉いの。だから、あの子は私に道を譲ったってわけ。呼び出しのほうは、もう私は通ったから、通っていいよって精霊の言葉で呼びかけただけで、精霊なら誰でもできるよ」


 私がそう言うと、ラフィーニアはえっ、と小さく呟いて固まってしまった。

 どうやら、予想外の答えで、理解が追いついていないみたい。これは待つしかないね。


 待つこと数分。ラフィーニアがようやく口を開く。


「せ、精霊王さまの娘ということは、レ、レイノリアさまは、精霊の……ひ、姫のような立ち位置なのですか?」

「うん。みんな、私のことを姫さまって呼ぶからね。ラフィーニアと同じ感じだよ」

「全然違います!」


 私の言葉を即否定されてしまった。

 ラフィーニアの言葉によると、自分は数多くいる王女のなかでも、今の年齢まで精霊と契約できなかった落ちこぼれであり、精霊王の娘としてふさわしい力を持っているであろう私とは同じではないらしい。


 でも、ごめんなさい。契約できなかったのは、私がだらけて精霊界に引きこもってたからです。

 精霊と契約できなくて責められるってわかってたら、さすがにちゃんと予定通り向かったけど、今となっちゃ言い訳にしかならないよね。


「せ、精霊と契約できても、魔法がちゃんと使えなければ意味ないじゃない。精霊術は、魔法を強めるだけだし」


 私がなんとかごまかすためにそう言ったんだけど、ラフィーニアはきょとんとしている。


「そう……なのですか?」

「うん。そりゃあ、姫だから?他の精霊よりは強くなるかもだけど……」

「い、いえ!そうではなく!」


 私の言葉をラフィーニアが全力で否定した。

 うん?そういうことじゃないなら、どういうこと?


「精霊は、魔力を強めるだけ……なんですか?」

「そうだよ?それがどうかした?」

「わ、わたくしは、精霊術とわたくしたちが使う魔法は、まったくの別物として教えられたのです。精霊に魔力を渡し、術を行使してもらうのだと」

「あぁ~……うん、間違ってはないよ」


 私は、歯切れの悪い返事をしてしまう。だって、間違ってないもん。


 私は、ラフィーニアに一つ一つ説明していく。


 精霊は、契約者から魔力を受け取り、契約者の代わりに魔法を使うことができる。

 そのとき、契約者から受け取った魔力を、一度、自分のなかに取り込んでから魔法として放出する。

 その取り込んだ魔力は、魔法として放出されるまでに、精霊の高純度な魔力と溶け合い、その力が強くなる。


 でも、あくまでも契約者の魔力が混ざっている状態なので、使える魔法は限られる。

 精霊だけでも、契約者だけでもダメ。両方が使えないといけない。

 だからこそ、契約者が使用可能な属性を持っている精霊と契約ができる。

 私と契約できたなら、ラフィーニアは多分、全属性に適性がある。


 だから、間違ってはいないんだけど、正しいとも言いきれないということを説明すると、ラフィーニアは信じられないというように固まっている。


「わたくしが学んだこととは、ずいぶんと違いますわ」

「精霊から直接聞いたわけじゃないからじゃないの?人間の言葉が話せる精霊って珍しいし」

「そ、そうですわね。人型の精霊なんてほとんどいませんし……」


 その言葉にうん?となった私は、思わず言ってしまった。

 まるで、人型じゃないと話せないようではないか。


「人型以外の精霊も、精霊の言葉なら話せるよ?人間の言葉は勉強してないから話せないだけで」

「えっ……?」


 そのまま、ラフィーニアが完全に固まってしまったことで、私はやっと、まずいことをしたと自覚した。

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