家の敷地を跨ぐ事
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
喚かないのが~。の二人。
彼と彼女の個人的に好きなシーン。
母と弟が此処を後にした時、パタンと扉の閉まる虚しい音がした。これでこの家に本当に二人きり。取り敢えず、此処で立ち往生しているのも何なので、私の部屋に案内しなくては。
「じゃあ、私の部屋行こうか」
そう振り向かずに歩き出そうとした時の事だった。ぐっと上半身を引き寄せられる感触がした。尻餅を着きそうになるのを防いだのは、彼の体躯。まだ成人していないせいか、柔に感じる。
「二人きりにさせたの、お前の采配?」
「あ……いや……母の……」
弟の嬉しそうな顔曇らせたくなくて、『出来れば出て行って欲しい』とは言えなかったよ……。
その返答に彼は僅かに沈黙した。言葉は交わさない代わりに肩口に顔を埋めに掛かる。少し固めの髪が露出した肌に触れ合って擽ったい。
「……借りを作ったな。あの人に」
「『仮』なんて言葉使わないでよ。付き合った事言ったとき、ちょっと嬉しそうだったし」
母は冷徹。自分が認めた人以外には、歯牙にもかけない。けれどもその母が、幼馴染とはいえ身内になるかも知れない人間に対し、少しだけ空気を柔らかくした。剰え、二人きりになる様に手配もしてくれた。だからそんなに心配する事もないと思う。
でもそれよりも。
「ちょっと、離して」
やりたい事があるだ。
しかし彼は離す所か自らの腕に閉じ込める様に、私の体を引き寄せる。
「あ、『離たれい』とかそういうじゃなくて、私も君の事抱き締めたい。これ、一方的だから」
バックハグはときめきを呼ぶとは言われている。けれども私的にはちゃんと向かい合いたい。彼の思いを体ごと受け止めたい。
すると漸く腕の拘束が解かれた。距離感ゼロの状態で振り返ると、彼の顏が近くにあった。
僅かに頬が朱色に染まっている。不安げな瞳が僅かに揺れている。焦燥、独占、好意、それらがぐちゃぐちゃになって、今の彼を構成していた。
「改めて、いらっしゃい」
「お邪魔します」
うちの敷居を『恋人』として跨ぐのは、それなりに意味が変わってくるよ。
彼と彼女の母の関係性。
勇者とラスボス魔王という関係です。
勿論、勇者は彼。ラスボス魔王は彼女の母です。
だから『敵から塩を贈られた。果たしてこれは喜んで良いのか。馬鹿デカいツケが回って来るのではないか』と。
ほら、『娘さんを僕に下さい』という相手が、ダンジョンにおけるラスボスの魔王ではないですか。
其れに準えて。
ツンデレとか、ヤンデレとか、メンヘラとか、ざまぁとか、『幼馴染』とか、タグ貼るだけでPVは爆上がりします。
ただ其れに頼ると本当に人気なのか分からないので、出来うる限り使いたくない。
最近聞いたのは、
『恋愛って分野なのに、ざまぁ系じゃん!! 全く恋愛してない!! 見下すのがメインじゃん!!』
というお言葉。
そう言った側面とはやっぱり逆行きたい。
捻くれているので、常に茨の道を歩きます。常に逆張りします。