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神具を作る者達  作者: aqri
地下へ
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10 二手に分かれて救助開始

 果たしてどこまで立ち回れるか。生きるために戦うのではなく、戦うために生きるという考え方を持つ独特な一族。日ごろから鍛錬を欠かしていないのなら正直勝てる気がしない。それでもエルが提案してきたのなら、勝機があるということだ。それに自分が何かしくじればサージとサカネが全面的に出てきてしまう。


(ピカラ。神と太陽は同じものだと考えているあの一族。その妻であるピカラは確か献身的に夫を支える女として描かれていたはずだ。だが、俺も一回しか見た事ないがそんなに似てたか? そもそも髪の色や肌の色だって違うのに)


 サージたちはやや白寄りの薄茶色い肌をしていて髪はこげ茶だ。ピカラは肌がかなり濃い茶色、髪は黒い。全体像を見て勘違いしたにしては不可解な点もある。そうなるとあの男がピカラと言ってしまった要因はサージの顔ではない。


「出立ち、装飾品と布か」


 自分が作った耳飾りや首飾りの模様は自分が母親から教わったものだ。フラフラあちこち旅をしていろいろな部族や遊牧民などと話をしてきたが、似たような絵柄を多く見てきた。首に巻いていた布も実はルオが女性たちに教えたものだった。売り上げが悪い、と悩む女性たちに絵柄を教えるからここの布の折り方の技法を教えてくれと交換条件を出したのだ。


(信じる神は違っても考え方は同じだった。先祖は一緒かもな、ってのは俺ら放浪の民や遊牧民たちの中じゃ常識なんだが。あの部族は自分達こそ神に仕える特別な一族って考えが強かったんだよな)


 森の中を走っていたがルオは足を止めた。一見すると普通の森だが、不自然な部分が目に入ったのだ。やけに整った草の生え方をしている場所を思いっきり引っ張る。すると木の板に草を粘着剤でくっつけたらしいものが外れて重厚な蓋が現れた。それを外すと地下への入り口となっている。

 他の草に馴染むようにはできているが、自然と多く接してきたルオには違和感でしかなかった。中を覗き込めば梯子がかけてあり地面もすぐに見えた。それほど深い場所では無いようだ。梯子を使わず飛び降りるとそのまま奥へ走り出す。



 エル達は打ち合わせ通り別の出入り口から近い場所から侵入した。はじめは緊張していた二人だが、入ってしまうと物音一つなく人の気配さえないことに不思議そうな顔をしている。


「もうちょっと見張りがいるとか、入った途端になんだお前たちはみたいなのがあるかと思ったんだけど」

「僕も。戦わなきゃいけないかと思ってたけど、誰もいない」

「もともと王子についていた部下はかなり数が少ないはずです。あの性格では心から慕う従う者なんていないでしょうからね。王子が本当に権力を持ったら都合がいいと思った側近だけです。金で雇った者を大切な地下に案内はしないでしょうから」


 こうして三人で話していても話し声を聞きつけて駆けつける者もいない。エルはそれがわかっているようで気にした様子もなく奥へと進んでいく。

 しかしある場所で足を止めて壁を見た。二人もつられてそちらを見ると壁には何か描かれている。だいぶ劣化していてあちこち剥げ落ちてしまっているが、三人の人物が何か大きな化け物と戦っている様子に見える。一人が剣を持ち、一人が盾を持ち、一人は何か道具を持っている。


「この国の経典の内容と一致します。神の三人の子供たちは力を合わせて地上に住む悪しき者を倒したと言われています。一人は戦う力、一人は守る力、一人は薬の調合などの考える力、つまり知恵授かったと言われています」

「神様の子供なのに、不思議な力とか持ってないんだ?」

「地上を収めるのは神ではなく神の子供に託されたという話です。もしも三人に不思議な力があったら、三人が争いを始めてしまう。神はあえて三人に神の力を与えなかったのだそうでよ。そうすることでお互いの弱点を補い協力し合う。要は、人々は協力しあわなければだめだという教えなのですが。まあ、王家の先祖が不思議な力を持っていたら不思議な力を持った人間が産まれないと辻褄が合わなくなってしまいますからね」


 この国に暮らしていればこの話は絵本として親が子供に読み聞かせる。たとえ教会に属していなくても皆が常識として知っている内容だ。


「三人の中で王家の先祖って言われてるのは誰なんですか?」

「それがはっきりわかっていないんです」

「え?」

「は?」


 サージとサカネは同時に声をあげていた。自称王子があれだけ偉そうに言っていたのだから、はっきりわかっていると思ったのだが。エルも壁の絵を見ながら苦笑だ。

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