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神具を作る者達  作者: aqri
家族の絆
33/65

11 自称王子

 しばし沈黙が降りた。サカネは涙を拭うとゆっくりとサージの上から退く。そして手を差し出した。サージは一瞬迷ったようだが、しっかりとその手を握り返す。サカネは微笑むと引っ張ってサージを起こしてやった。

 周りの大人たちが近寄ってきて二人の応急処置を始める。持っていた布で血を拭いたり、派手な姉弟喧嘩だねと苦笑したり。そんな光景をルオは見つめながら、逃げ出そうとしていた男に踵落としをする。


「ぎゃあ!」

「やかましい。今すっげえ感動的なところなんだよ、静かにしてろ」

「足をどけろ! 俺を誰だと思ってるんだ!」

「はあ? 本当に誰だよ。誰でもいいしどうなろうが知ったこっちゃねえ」

「貴様あ!」

「もう一回言うぜ、どうなろうが知ったこっちゃねえって言ったんだよ。自分の身の安全を先に考えた方がよくないか?」


 サカネに襲いかかってきた男は見るからに高価なものを身に付けている。この辺の人間ではないし、ただの金持ちでない事など一目でわかる。女性たちがサカネたちを介抱しているが、殺気立った職人たちはこの男を取り囲み始めていた。


「あまりにも小間使いが無能で自分から出てきたってところか。そういうのが一番無能なんだよな。酒臭えし突発的な行動なんだろうが、出てきてくれてありがとよ馬鹿野郎。おーい!」


 大声で周囲の男たちに声をかける。男たちは手に自分の使っている道具などを持っているので、見た目はチンピラ以上だ。はっきりってものすごく怖い。


「こいつ俺らの仲間を攫ってるクソ野郎だ。しかも女の子を後ろから襲う変態ときた。話しを聞き出してやろうぜ」


 そう言うと男の胸ぐらを掴んでポイっと職人仲間たちの方へブン投げる。ギャーギャーと騒ぎ始めるが職人たちに腕をねじ上げられては抵抗することができない。


「俺は王子だぞ! お前ら全員処刑にするからな!」

「はいはい、酔っ払いの常套句だな。俺は貴族だ、王家だ、他国の豪族だ。大体この辺は使い古されているからもうちょっと面白い内容で頼む」

「ふざけるな、嘘じゃない! 私兵だってたくさんいるんだ!」

「じゃあなんで助けに来ないんだよ。お前嫌われてるんじゃないのか?」


 鼻で笑うとそのまま他の者たちに任せて改めてサカネ達の方に向かった。二人共傷だらけだが大きな怪我は無いようだ。せっかくきれいになったのに、と女性たちはサカネの身なりを整える。ルオはまずサージに話しかけた。


「お前の姉貴に力を貸しているモンだが。いろいろ言いたい」

「え、聞きたいじゃなくて?」

「棺桶で殴るな」

「なんで!?」

「なんで!?」

「お前まで驚くんじゃねえよ!」


 二人同時に信じられないというような表情で驚くのですかずツッコミを入れた。なんなんだこの姉弟はと呆れて次の言葉が出てこない。とりあえず道の真ん中なので落ち着ける場所で話をしようと、すぐ近くの広場にやってきた。そこで今まで何をしていたのかを聞いてみる。

 姿を消したときの状況は大方話し合っていた推測通りだった。サカネが人質にとられたと勘違いをして慌てて飛び出したところ、腹を殴られて気を失ってしまった。気がついたら知らない場所にいて言われた通りのものを作れと命令されていたらしい。


「自分が何を作っているのかわからなかった。途中何度も目隠しをされて場所を移動してきたから、いきなりこの国に来たわけでもない。帰り道がわからなくて様子を伺ってたんだ」


 そもそもここがラカッツィアであるとわかったのも逃げ出してしばらく探りを入れていた時だったという。ずっと一人でいたのだ、心細さやいろいろなことが頭をよぎり少々人間不信になっていたらしい。


「じゃあ他の職人たちとは会ってないのか」

「はい、同じように誘拐されている人がいるのは推測でしか」

「一人じゃ見張りも厳しかっただろ。よく逃げ出せたな?」

「あ、うん、えっと」


 急に歯切れが悪くなった。その顔は双子だから当たり前なのだがろくなことを言わない時のサカネそっくりだ。


「自分が何を作っているのかわからないと不良品しかできないって言ったんです。全体像がわかればもっとろくでもないものに作り替えられるかなと思って」

「良い案だな、んで?」

「見せてもらったらすごいでかい虫に見えて」

「おう」

「悲鳴あげて鉄格子突き破って飛び出してまして」

「なんでだよ」

「虫大っ嫌いだから……正確にはある一つの種族だけなんだけど」

「あー、ゴ」

「その名を口にしたらダメですよ!」

「言っちゃだめ! 名前呼んだら出てくるから!」


 サカネからも同時に叫ばれてルオは両耳を塞ぐ。要するにこの二人同じものが嫌いなのだ。


「それで飛び出して見張りからも追いつかれなかったってすげえな」

「何か後ろから意味のわからない言葉が聞こえた気がしたんだけど、全力で走ったら何とかなりました」

「おいおい」

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