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神具を作る者達  作者: aqri
家族の絆
24/65

2 情報整理には作業没頭が一番

 攫われた時系列で言えばまず家具職人、時計職人や武器職人などが続いて最後に装飾品だ。試しに作り続けて次にこれが必要だとわかり順番に攫っていっているように思える。職人たちはたとえ作るものは違っても協力し合う間柄だ。大切な仲間を巻き込んでしまうとは考えにくい。ましてルオの師はそれなりの人数に慕われているし、年老いているので作業は難しいことも知られている。


「この辺はエルの調査待ちだ。ついでに追いかけた先にジジイどもがいればいいんだが」


 そこまで話した時、窓から鳥が入ってきた。机の上にとまると足に小さな紙がくくりつけられている。


「エルからだな」


 鳥から紙を取り外すと鳥はそのままどこかに飛び去っていった。紙を広げ二人で覗き込む。そこには本拠地ではなさそうだからもう少し探ってくると書かれていた。


「やっぱりアジトがいくつかあって転々としているっぽいな。ジジイどもがいなかったから気を遣ってくれたんだろう」


 そうなると自分たちにできる事はなく打ち止め状態だ。闇雲に探し回っても時間の無駄だろう。そこまで考えたときずっと気にかかっていたことが一つ頭に浮かんだ。


「一つわからないのはお前の弟は今一体どこで何してるかってことだな。相手も探し回ってるって事はどこかに隠れているってことだろ」

「全く、どこで何してるんだろう」

「そんなのお前、自分の身になって考えてみればわかるんじゃないのか。弟は何考えてるか、じゃなくて自分がその出来事に巻き込まれたらどうする」

「俺?」


 言われてみれば確かに。たとえ双子であってもサージの考えていることや本当の気持ちなんてわかりはしない。だがもしも自分が誘拐されて運良く逃げ出すことができていたら?


「敵うわけないから絶対に隠れる。周りは誰が味方で誰が敵かなんてわからないからちょっと疑心暗鬼になるかも。金もないから身動き取れないし、そもそも自分の村に自力で帰れる自信もない。隠れ続けるよ、それで凌ぐことができたら……」

「できたら?」

「作業に没頭するかな。なんやかんや、気分を落ち着かせる時ってそれが一番なんだよ」

「なるほど一理ある……と言いたいところだが。お前の弟棺桶作るんだろう、この状況で棺桶作れるか?」

「材料と道具あれば作るよ、なかったら自分で調達するけどな」


 言っている事は無茶苦茶だがルオにはわからなくもない。自分も気分がごちゃごちゃした時はまず深呼吸をして、空を見て、手が動くままに作品を作る。どんなものを作りたいかなど考えず本当に手が動くままにだ。結局一つのことに集中して頭を空っぽにしたいだけなのかもしれないが。


「道具は捕まってる時かっぱらってるとして。助けを求めないなら他の職人さんとは別の場所で一人で働かされてたのかも。さすがに他につかまっている人がいるのに助けを求めないって事はないと思う」


 そこまで話すとサカネは大きくため息をついて、自分の道具から絵の具等を取り出す。どうやら自分も気持ちを落ち着かせるために作業に没頭したいようだ。ルオはそれを止めない、今彼女にはそれが必要なのだ。

 見れば日が暮れてきている。今日はこのままエルの家に泊めてもらった方がよさそうだ。エルとは気兼ねなく家の出入りをする間柄なので問題ない、たまにやっている。

 黙々と作業を始めるサカネはそっとしておくとして自分も考えなければいけないことがたくさんある。


(権力者たちのゴタゴタに巻き込まれる分にはぶっとばせば済む話だが。どうにもきな臭いものを感じるんだよな)


 それだけでは無いような気がしてならない。そもそも権力争いならばなぜこんな面倒な手段を取るのか。職人を集めて新しい武器を作るなど時間がかかるし、それをやるなら一気にたたみかける時だ。危機感がないというか、何か大切な部分がごっそり抜けてしまっている。

 今回のゴタゴタをどうにかする気も解決する気もない。自分たちに二度と関わらないようにと釘がさせればそれで良いのだが、ここまで執拗に狙ってくる相手にそれが通じるかどうか。職人にこだわる意味がわからない。


(もしかしたら作りたいのは新しい武器や人形じゃないのかもな)


 ルオはエルの使っている文具から紙とペンを拝借し、今まで起きたことを時系列から思いついた事まで全て書き出そうとしたが。


(俺もちょっとやってみるか)

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