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神具を作る者達  作者: aqri
人形の国
14/65

1 動く人形

 自分たちが住んでいた村は周りに大きな都市などもなく、旅人が立ち寄るので宿屋や食べ物を売って生計を立てている者が多かった。少し人里から離れているという事は、相手を傷つけてでも金を奪っていく奴らも多く立ち寄るということだ。美しい女はよく連れて行かれそうになったし、実際にいなくなってしまった女の子も何人かいる。抵抗すると殺されることもあった。

 だからこそ女子供は自衛手段を学ぶ。体術が使えるような屈強な男はいない、ほとんどが出稼ぎに出ているからだ。女子供は残って農業をするだけだ。だから無理に戦おうとせず地の利を生かして、隠れる、逃げるが基本だ。

 母が死に、父親が死んでからは特に危機感を抱くことも多くなってきた。体つきが女っぽくなってきてから村に住んでいる中高年の男からも何とも言えない気味の悪い目で見られることも増えてきた。

 それはサージも感じ取っていたらしく、腕を上げるという意味でも身を守るという意味でも、ラカッツィアに行くのもいいかもねと話していたのだ。


「時間が空いたらナイフの使い方を教える、自分の身は自分で守れ」

「……そうだね、綺麗事言ってられないし」

「木材で殴りつけるの禁止な」

「え、なんで!?」


 さも意外、と言わんばかりに大げさに驚くサカネの眉間に軽くチョップを入れる。


「なんで? じゃねえよ! かさばって邪魔だろうが」

「木で殴らないと戦ってる気がしない! 木じゃなきゃヤダ!!」

「わぁったよ! 木で殴ってもいいが、もうちょっと小さく加工しろ!」

「まかせて!」


 木を加工しろと言われて急にやる気を出したサカネは目をキラキラとさせて早速作業に取り掛かろうとするが、ルオが止めた。


「それやり始めると長いだろう。出かけるのが先だ」

「あ、そうだった。じゃ、しばらくはこれで」


 サカネは鞄の中に入っていた腕位の大きさの木を取り出した。長さも太さもほぼサカネの腕位だ。きちんと形を整えれば長剣より短めの武器にはなる。彼女が振り回すにはぴったりだ。


「投げつけるのも近寄ってきたやつ殴るのもこれぐらいの重さと大きさがちょうどいい」

「へいへい」


 ルオは手早く身支度を整え直すと行くぞと言って外に出る。今のところ不要な荷物は工房に置かせてもらってルオの後についていった。


「これから会う人ってどんな人?」

「お前、ラカッツィアがどうしてここまで巨大な商業国家になったか知ってるか」

「確かバルテルって国と戦争して勝って、人形作りが産業になったんじゃなかったっけ」

「そうだ。バルテルは生きた人間じゃなく人形に戦わせる技術を作り出した。ただ人形に関することは戦争で全て焼けちまったからバルテルと同じ人形が作り出せない。だからこの国独自の人形作りが盛んになったんだ」


 サカネが生まれる前の話だがこの話は有名だ。この二つの国はかなり長い間戦いをしていた。最終的にバルテルは敗北して衰退したと聞いている。ラカッツィアでは人形作りの産業が盛んとなり、単純作業など人がやらなくても良いものは全て人形が行っているらしい。店では客の相手を人形がしていると聞いたことがあるが本当なんだろうかと思っていた。


「この国はほぼ円形だ。お前が入ってきたのが南門、正門って言われてるところだ。俺たちが住んでるのは南西部にあたる、これから行くのは南東部の方だ。職人が住む西側以外は全て人形がうろうろしてるからびびんなよ」

「なんでこっち側には人形がいないの」

「職人は人形が嫌いだからな。技術を盗まれちまったら食っていけねえ」

「そういうもん? 脳みそないんでしょ、自分で創作の絵柄とか構造考えて作るの無理じゃない?」

「今はまだ無理だが、いずれそうなるだろうよ。だから今職人たちは生き残りをかけて必死だ。話はそれたが会いに行くのは人形師の男だ。こいつはいろいろ経験豊富でかなり頭がいい、今回の件知恵を借りたい」

「それはいいけど、また変なのが襲ってきたらその人巻き込まれちゃうんじゃないの」

「巻き込まれたら徹底的に叩きのめすようなやつだから大丈夫だ」


 果たしてそれは大丈夫なのだろうかと思ったが、とりあえず会ってみなければわからない。今は何でもいいから手がかりが欲しい。それにこんな時だが人形の産業やそれに携わる職人というのも少し興味がある。




 南東部に位置する町。職人たちが住んでいたところとはまるで別の国なのではないかというくらい大都会となった。もちろん商店街など並んでいるが、職人の町のそれとはレベルが違う。木よりも高い建物が建っていて人形がまるで人間と同じようにそこら中を歩いている。中には建物の一部となって扉を開閉していたり、飲食店では料理を延々作り続ける人形もいる。


「感想は?」

「死なない奴隷が働いてるみたいでちょっと気持ち悪い」

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