3話
私たちの後ろから凛とした声が投げかけられました。
振り返ってみると声の主はアレクシス様でした。……ついてきていたんですねこの方。
「ここは正しい学術や理論ばかりが集まってくるわけではないの。間違いの含まれているものやそもそもが破綻しているものも関係なく集めて検証しおよそ間違いのないと思われるものを積み上げていくそういう場所よ。あなた達の話を聞いていれば正しい事の分かり切っている研究より、可能性のあるローラさんの研究の方が優遇されたってことでないかしら」
「はて、あっしはあんた様まで誘ったつもりはないのですがね。一体全体どういった理由で付きまとっているでやんす? というかその話だと前例のない理由にならないでやんすし、何より真偽の定かでない話をでっち上げてくる輩も出てきそうなものでやんすが」
「う…いやそれは……、いやそんなことよりも昼食!お昼でしょう、食堂どこかしらね。あ、あの人に聞いてみましょう。すみませーん!」
コロコロとご様子の変わるその姿に貴族であるためにと施された教育と根の性格の素直を感じれらてかわいらしい方だなと思いました。
それを感じたのはアユ様も同じようで、食堂の場所を聞くべく人に声をかけているアレクシス様の後ろでくっくっと笑いをこぼしています。
「…あぁ?お前らなんだ新入りか」
……率直に申し上げますと、とても怖い方のように見受けられました、はい。
アレクシス様もアユ様の追及から逃れるために咄嗟に声を掛けたようで、そのお相手がどのような人かまでは気が回らなかったみたいです。
ギギギと首を回しこちらに助けを求められているくらいですから間違いないでしょう。
その男性は長身痩躯、いえ鉱夫や農夫に比べれば足りないですが学者にすれば筋肉質すぎる身体、無造作に伸ばされたぼさぼさの長髪、浅黒い肌、そしてあまり寝ておられないのでしょうか赤くなった目はそれでいてギラギラと意志の強さを感じられました。
「如何にも、今日入学したてのピカピカの新入りでありやす。あっしはマユリア商会のアユ・マユリアと申します、以後お見知りおきを」
「マユリア商会……知らんな」